朝日さんに二つ名はありません
四時間目が終わり昼休みの時間になった。
やはり学生にとって昼休みの時間は至福の時である。
今日の朝日の弁当はチャーハンだ。
弁当一杯に敷き詰められているのだが・・・。
(母さんチャーハンは箸ではたべられないよ)
弁当についていた箸を見ながらそう思う。
「はあ・・・」
「どうしたんですか。朝日さん」
目の前で無元がコンビニのおにぎりを食べながらそう言う。
「いや、なんでもないよ。それにしてもお前今日はコンビニのおにぎりなの」
「ええ、母が弁当作るの忘れちゃったので」
「なるほどな。でも全部シャケおにぎりにする必要はないだろ、飽きないのか」
「僕はシャケ好きですから」
そう言いながら黙々とシャケおにぎりを食べる。
朝日も箸でなんとかチャーハンを掴んで口に運ぶ。
そんな感じで喋っていると
「おいおい、調子に乗ってるんじゃねーよ!」
一人の男子生徒が叫んだ。
声の方を見ると何人かの男子生徒が機龍に絡んでいた。
「1カ月前に能力が発現しただ〜。要するについこの間まではそこらへんにいる能力も持たない無能な人間と同じだったてことだろ〜」
取り巻きたちとともに男子生徒は笑いながら機龍を囲んでいた。
「ちょっと待ちなさい!」
それを聞いていた立花明日香が鋭い目つきでそいつを睨む。
「風切、あなた自分が言ってることわかってるの!」
「おいおい立花、いい子ちゃんするのは辞めようぜ!!。実際に俺たち能力者と無能力者の間には天と地ほどの差があるんだ。」
確かに能力者と能力を持たない非能力者との間には格差がある。
しかし能力者の間では言わないご法度となっている。
「俺たちは選ばれた人間なんだぞ。そこら辺にいるクズどもと一緒にしないでほしいね」
ドス黒い笑みを浮かべて風切はそう言い切った。
「あなたそれ本気で!!」
明日香は拳を握りしめる。
今にも風切へ殴りかかると言わんばかりの雰囲気だ。
「いいよ、明日香!」
機龍が立花の言葉を遮った。
「なにか気に障ったなら謝るよ。」
機龍の言葉には力がこもっているような感じがした。
「なんだなんだ、ヒーロー気取りか?」
「ヒーローを気取るつもりなんて無い。でもその考え方は好きじゃない・・・」
機龍はさらに力を込めて言う。
「ほーう。分かった、いいだろう。お前、俺と決闘しろ。お前が勝てば今まで言ったことも取り消すし、今後一切こう言うことは言わないと約束しようじゃないか。だが、もしお前が負けたらこの学院から出て行ってもらう。お前みたいな半端もんがこの崇高な学院にいる必要ないんだよ」
不敵に笑いながら風切が言う。
「馬鹿じゃないの!幾ら何でも対価が合わないわ!決闘では双方同じ価値の対価を出すルールでしょ!」
「いいよ、明日香。その決闘うけてやる」
それを聞くや否や風切はクククと笑った。
どうやら機龍と決闘することが目的だったようだ。
「潔くいいじゃねーか。じゃあ、今日の放課後に第3闘技場で待ってるぜ」
風切はそう言うと取り巻きの人をつれて教室から出ていった。
「翼のバカ!何やってるの!風切は学院でもトップクラスの実力者なのよ!」
「ご、ごめん、明日香。ついカッとなって、やっちゃった」
「やっちゃったじゃないわよ!もう・・・。負けたら承知しないんだからね」
そんな感じの会話が繰り広げられていた。
「ほら、朝日さん。面白くなってきましたよ」
無元がニコニコしながら言う。
「まあ、確かに少し面白くなってきたな。それにしても風切の奴はいつにも増して仕上がってたな」
「風切さんは極度の能力主義者で有名ですからね。それに加えて学院順位8位とかなりの実力者ですから」
「ふーん。強いんだな」
「ええ、確か二つ名もありましたよ。ええと、確か・・・。血の風『ブラッティーウィンドウ』だったと思います。なんでも風のように素早く動いて止まった頃にはそこら中に血飛沫が付いていることからそう呼ばれているそうですよ」
「ふーん」
朝日は箸でチャーハンと格闘しながら無元の話しを聞いていた。
「そういえば、立花にも二つ名があるのか?」
「そりゃ、勿論。『剣花』と言う立派なのがあります」
「へーえ、またなんでそんな風に呼ばれてるんだ?」
「立花さんの能力が鋼を操る能力と言うのも由来の一つだと思いますけど一番は立花さんの剣技だと思いますよ。なんでも立花さんの必殺技『六花』は6本の剣を操る技なんですけどそれが花が咲いているように見えるとかなんとか」
「二つ名かーー。俺たちにはあまり関係無い話しだな」
「俺達って、僕にはちゃんと二つ名がありますよ!」
「そういえばお前、上位ランカーだったな」
「ええ、これでも21位なんですよ」
無元は自慢げに言う。
「朝日さんも諦めちゃダメですよ!頑張れば二つ名がつきます!」
「いや、いらないよ。だいたいこれだれが考えてるの・・・」
「二つ名制定委員会ってのがあります」
「マジか」
世の中は広い・・・。
俺はそう言いながらやっとこさっとこ食べ終わったチャーハンの弁当を片付けた。
チラリともう一度機龍の方を見ると何人かの女子に囲まれながらご飯を食べていた。そこに立花の様子は無い。
「無元、口も乾いたし自販機でも行こうぜ」
「いいですよ」
そう言って朝日たちは教室から出た。
しばらく歩くと柱の影で風切と立花が喋っていた。
見た感じ立花が絡まれているように見える。
その光景を見ていると立花と目があった。
一瞬、助けを求めるような顔をしたがすぐに目をそらしてしまった。
(何かあったのだろうか?)
そんなことを思いながら朝日はスタスタと自販機にむかった。
「朝日さんなにを買いますか」
「まあ、ここは無難にお茶だな」
「面白みがないですね〜〜。僕はこのスーパードリアンジュースにしますよ」
そう言って無元はドリアンジュースを買う。
「お前、大丈夫か」
「大丈夫ですよ。こう言うのほど案外美味しいものなんです」
「そ、そうか」
恐らく無元の感覚は壊れているのだろう。
そんな事を思いながら教室に戻る途中、風切と立花はまだ話している。
というか風切の方が立花に詰め寄っていた。
立花は明らかに嫌がっているように見える。
「立花、さっき寧々先生が呼んでたぞ。部活について早急に話したい事があるんだとさ」
あれを見過ごすのは流石にどうかと思った朝日は立花にそう話しかけた。
「そ、そう、ありがとう」
そう言うと立花は風切を振りほどいて職員室に走り去る。風切はチッと舌打ちすると何処かへ歩いて行ってしまった。
勿論、寧々先生が呼んでいるなんて嘘だ。あの場を凌ぐ嘘がそれくらいしか思いつかなかったのだ。
「朝日さん・・・」
無元に呼ばれたので振り返ると青い顔をした無元が立っていた。
「あ、朝日さん。すいませ、ちょっと気持ち悪いのでトイレに行ってきます」
「だから言っただろ」
どうやらドリアンジュースにやられたらしい。
と言うかあんなジュース学校に置くな。
朝日は無元を見送ると教室に戻った。
どうも、日の太郎です。この小説を読んでいただきありがとうごさいます。拙い文章だと思いますがこれからもよろしくお願いします。率直なアドバイスや感想などを貰えますとこれからの物語向上につながりますので書いてくれるとうれしいです。
(誤字、脱字などがありましたら申し訳ありません)