プロローグ
「ねえ、朝日さん」
朝日の目の前にいる男、木枯無元が憂鬱そうに話しかけてきた。
「ん、どうした?」
読んでいたマンガから目を離して無元の方を見る。
「どうした、じゃないですよ! 今の状況わかってるんですか」
切羽詰まった感じで無元は言う。
「部員数二人ですよ! ミス研廃部の危機です。せっかく僕が入ったのにいきなり廃部の危機です!」
頭を抱えながら無元はうなだれる。
そういえば、この学校では部員数が三人以上で部活と認められるから確かにこのままでは廃部になる。
「そういえば、そうだったな」
我が部活ミステリー研究部の廃部の危機を今思い出した。
「あの、朝日さん! もっと危機感持って下さいよ!」
「そう言われてもな。今時こんな部活に入る人なんてほとんどいないよ。今のご時世だいたいの人が能力関係の部活に入りたがるんだから、こんな部活に入る人は余程の変わり者くらいだよ」
「ちょっと待って下さい、そうなると僕は余程の変わり者になるんですが」
「安心しろ、お前は十分変わり者だよ」
この言葉に怒る無元を朝日は完全に無視する。
世界人口の約四割の人が何かしらの能力を持つようになったこの時代。
そしてここ俺たちが通う東星学院は東京にある能力者育成を目的として作られた学校のうちの一つだ。
こうした学校は日本に十か所ほどあり北海道や大阪などの主要都市にある。
「それにだ無元。今時入る部活といったらアビリティアーツ部だろ。お前だってそこと兼部じゃないか」
アビリティアーツは能力を使った格闘技で大人気のスポーツだ。
年に一回開かれる星王祭は日本全国の能力学院代表者が集まり競い合う、それはもう大騒ぎのお祭りがあるほどだ。
「た、確かにそうですけど、それは今関係ありませんよ。今はこっちに力を入るてるんですから」
たじたじと無元が言う。
「力を入れるようなことは無いと思うけどな。それに誰かに頼めば部活に名前を置いてもらうくらい簡単にできると思うぞ。心配するようなことなんてないと思うぜ」
朝日はそう考えていたがどうやら無元は納得できないらしい。
「それじゃあまともに活動できないじゃないですか! 一応、僕はあなたに憧れて部活に入ったのに期待外れにもほどがありますよ」
「俺は憧れるような人間じゃないと思うけどな。それに俺はこの部室でゆっくり過ごせればそれでいいんだよ」
手に持っていたマンガにまた目を戻す。
今ちょうどいいところなのだ。
こんな感じの会話は無元が入部してから何度かやっているが一向に進まない。
「はあ~~」
いつもどうり無元が深いため息をつく。
これから起こる面倒を二人ともつゆ知らず。
いつも通りの時間が流れていくのであった。
初めての小説だったのでとても緊張しています。これからも少しずつ投稿していこうと思うので見苦しい文だと思いますがよろしくお願いします。