戦いの日々
先刻、俺達訓練兵の野外訓練の拠点に使われる寮が奇襲を受けキルディアは一人で襲撃者を撃退するために応戦していた
「はっ、訓練兵一人で何ができる。てめぇら、こいつに自分の実力を教えてやりな」
リーダーの様な男が指を鳴らすと同時に男の後ろにいた目測20人の人間が走って来る。だがこいつらは全員戦闘に関しては素人、俺の敵じゃない
「へぇ、こんなもんか?」
20人以上の人間を1分未満で倒したうえ息を少しも乱していない訓練兵に襲撃者のリーダーはおもしろいとでも言いたげな顔をして微笑む
「やるじゃん、あんた名前は?」
「俺はキルディア・マズナ。一応聞いておこう、お前の名は?」
男は腰に付けていた刀を抜き、俺に切っ先を向け
「俺はガイル、ガイル・ハートネットだ。キルディア、俺と戦え。お前が勝てば俺達はこっから退いてやるよ」
「あぁ、いいだろう。来い、返り討ちにしてやる」
俺は懐の拳銃を両手に持つ
「言っておくが俺の刀はそんな豆鉄砲の弾くらい簡単に斬れるぞ」
「安心しろ、この弾はなまくらじゃあ斬れねぇからな」
俺が一発撃ちガイルが刀で弾を斬ったと同時に俺は奴に向かって走り出す
ガイルは刀を突きの構えから高速の突きを繰り出す。俺は突きを繰り出す寸前に高く飛び、上からガイルの背中に2発撃つが、ガイルは身を翻し刀を振り、一発切り伏せ、もう一発は奴の服の袖を貫くだけだったが俺は着地と同時にガイルに残りの弾を全て放つが、奴は致命的な弾を刀で切り伏せ、それ以外は当たろうが無視して突き進んで来る
「もらった!」
ガイルは下からキルディアの腕を切り落とそうとして
「残念、それは俺の腕じゃないんだ」
バリィン!
ガイルの持っていた刀は音をたてて砕け散った
「なっ!」
「これで終わりだ」
折れた刀を眺め立ち尽くすガイルの腹に一発拳打を叩き込み気絶させた
「お前の刀がオリハルコンだったらもっと熱い戦いになってただろうな」
襲撃者達をロープで縛って教官を呼びに寮の中へ戻り、教官を連れて来た頃にはガイル達の姿はなかった
◇
あれから1年たった日に俺達の訓練場があるこの国の周辺に、魔王級の魔物が住み着いたという情報が入り、貿易路の制限、周辺の森の封鎖により国は不景気に陥っていた
「お兄ちゃん、最近お店の商品値段高くなってるね」
「しかたないよ、魔物のせいで貿易路が制限されているから」
キルディアとアーリアは街を散歩をしながら色々な店を見ていた
「あ、私の大好きなルビーウルフの燻製が高くなってる!」
「本当だ、これからはちゃんと味わって食べないとな」
アーリアは店の方に進んで行く
「おっちゃん、これちょうだい」
「はいまいど、熱いから気をつけてな」
「はぁ、結局買うのかよ」
値上がりしてもお構い無しにアーリアは燻製を購入した
「後でお兄ちゃんも食べる?」
「アーリアがいいならもらうよ」
昼の講義まで少し時間があるがそろそろ戻るか
キルディアはアーリアの手をとり、訓練場へと帰って行く
◇
訓練場に戻ると教官から呼び出され、キルディアとアーリアの二人は教官室の前に来ていた
「リオン教官はいらっしゃいますか?」
去年世話になった顔の怖い教官が振り向く
「ここでは同期の兵士達の耳に入る可能性がある。場所を変えよう」
教官は空いている作戦会議室に入り、中を確認した後、俺達を招き入れた
「教官、何の話ですか?」
「俺達にまた何か任務ですか?」
「まぁ落ち着け、ここの教官や訓練兵には知らされていない事だが」
教官は俺達に向き直り意を決したように語り始める
「最近国の周辺に強大な魔物が現れた、これはお前達も知っているだろう。そこでお前達にこの魔物を討伐または撃退して欲しいと国王からの頼みだ。それなりの報酬も出るらしいが、極めて危険な任務だ、もちろん拒否権はある。さぁどうする?」
キルディアは少し考える素振りを見せ、心配そうに見つめるアーリアの頭を撫でると
「わかった、やるよ。でも、俺一人でやる、他の奴がいたら邪魔なだけだ」
教官はふっ、と鼻で笑う
「そうか、なら明日の奴が寝静まる丑三つ時に行動を開始する。それまでは体を休めておけ」
◇
キルディアとアーリアは部屋に戻り明日に向け準備をしていた
「お兄ちゃん、ほんとに一人で行くの?」
「あぁ、そうだよ。大丈夫、絶対に帰ってくるから」
アーリアは俺の胸に飛びついてきた
「絶対、絶対に帰って来てね。お兄ちゃんが帰って来なかったら私、死ぬから。もう誰かが死んでしまうのも嫌なのに、お兄ちゃんが死んじゃったら私立ち直れないよ」
俺はアーリアの小さな体を抱きしめる
「大丈夫、俺はアーリアを残して死んだりしないよ。それに俺は勝てない戦いには参加するけど死んでしまうかもしれない戦いには参加しないよ、だから俺は絶対に帰ってくるから」
それから俺達二人は午後10時までの昼寝をして遅い晩飯を食べ、魔物との戦闘に備える
◇
午前1時、魔物の動きを見ていたネクストが魔王級の魔物が寝静まった事を報告してきたようだ
「訓練兵。お前に全て任せた俺が言えることじゃないが、頑張れよ、無理だと思ったらその時は引き返して来い、俺が門を開けてやる」
「ありがとうございます先輩。ですが俺は魔物に背を向ける気はありません。妹に情けない姿を見せたくないので」
ネクストの先輩は俺の頭を撫でまわす
「はっ、ただのけつの青いガキと思ったが、立派な小僧じゃねぇか。気に入った、訓練を卒業したら俺の所に来い、国家退魔騎士団長として正式にネクスト登録してやる」
「お気持ちはありがたいですけど、試験もうけ―」
「安心しろ、ちゃんと許可は取ってある。これがネクスト登録試験だ」
俺の言葉を遮る聞きなれた低い声
「おぉ、リオンさん久しぶりですね」
「おいロイド、もう俺はネクストを抜けたんだ、敬語を使う必要はない」
リオン教官が様子を見にきたようだ
「教官、これが試験ってどう言う事ですか?」
「あぁ、ネクストの試験は己の力を示す実技だ。つまり、あれほどの魔物と対等に戦えれば十分ネクストになれる」
「まぁ、あいつとまともに殺り合うにはネクスト登録試験よりもキツイ試験になることは確定しているからな」
どうやら目標の魔物までの道が用意できたようだ
「訓練兵、道が出来た早く来い」
「今行きます!教官、アーリアを頼みます」
そう言ってキルディアは門まで走って行く
「いいか訓練、お前は俺達に構わず目標の魔物の所まで行け!俺達はお前に魔物が行かない様に全力を尽くす。この国にいるネクストを総動員しているから少しはあまりが出るだろう、お前が危険な状態になったら援護に向かわせるがあまり期待しないでくれ」
「わかりました、先輩達にご武運を」
「もうすぐ門を開けるぞ、構えろ!」
門が開いたら先輩達を信じて突き進むしかない
ゴゴゴゴ、と音をたてて開く門
「今だ、行けっ!訓練兵!」
先輩が合図すると共に俺は門の外へ走って行く
「ほんとに最近は戦いばかりだな、」
連続でバトル系の話でスミマセン
話が中々進まないのでちょっと飛ばしてしまいました
キルディア達には後でたっぶりと休ませてあげる予定です
問題点や質問がもしあれば一言の所に書いていただけると幸いです
今回後書きが長くなってしまいスミマセンでした