戦の絆のレシピ1
お互い2分ほど睨み合いが続いていた
カリアはここに来る前に鉄の籠手を着けてきている
「おいおい、来ないのか?なら、こっちから行かせて貰う!」
カリアが地を蹴り急接近してくる、そして俺に少し近くで急回転、顎を狙って裏拳を仕掛けてきた様だ、だが俺は上半身を後ろに退き拳を避ける
「なめんな!」
裏拳の遠心力を利用した右ストレートが眼前に迫る、俺はそれを両手で掴みカリアを投げ飛ばす
「かはっ!」
「一応手加減はしたんだが、お前の拳の勢いはあまり消せなかったすまない、立てるか?」
カリアは先ほどよりも強い闘志を宿した瞳で睨んでくる
「まだだ、まだ私は負けてない」
「まだやんのかよ」
でも確かに彼女の拳からはまだ怒りしか伝わってきていない
「はああぁ!」
彼女の拳と俺の腕がぶつかる、ガキンッと金属を打ち付け合う音にカリアは後ろに飛び退いた
「この感じ、お前もこれ着けてんのか」
「少し違うな、これは俺の腕じゃない」
「何!?」
カリアは訳がわからないと目を見開く
「まぁ見てな、はあぁっ!」
キルディアが気合いを入れる様に手足に力を入れると彼の衣類の袖、そして手足の皮膚までもが蒸気を上げ溶けて行く
◇
溶けていった袖や皮膚の下から金属特有の光沢が月の光に照され黒く光る
「な!?お前、まさかそれって、ギア!」
「あぁ、どのみち明日講義で見せる予定だったんだ、今見せても変わり無いだろ」
あいつ、ギア使いだったのか、クソッ!だがそんなこと関係ない、私の大切な友達を汚したこの男を倒す!
「ああぁ!」
◇
また正面からの突撃か、真っ直ぐな女は好きだがこうもしつこいとな、そろそろ終わらせるか
「くたばれぇ!我流格闘術奥義!刹那クラッシュ!」
「何!」
突然カリアのスピードが上がり一瞬にして背後に回り込まれる、クソッ!油断した、向こうの方が速い、受け止めるしかない!
「たあぁ!」
ガキンッ!
腕を交差させカリアの拳を受け止める、が、踏ん張りが遅く殴り飛ばされた
「クッ!」
「とどめだ!」
受身をとり相手を見る前に真横に跳ぶ、するとカリアは先ほど俺がいた場所に拳を打ち付け半径二メートル位のクレーターが出来上がる
◇
ハァハァ、クソッ、さっきから全然仕掛けてこねぇ、なめてんのか!
「やるな、俺も本気出して相手してやるよ!」
やっと来るか、私もまだやれる、あいつもそれなりに疲弊してるはず
「ふんっ!今のお前になにが―」
私は周囲の空気が変わった事に気がついた、何だ、この胸を締め付けられる様な感じ、あいつか、何だ?いや違うあいつはあんなに恐ろしい奴じゃなかったはず、なのにどうしてあいつが一歩また一歩と近づいて来る度に私は動けなくなるの?どうしよう、リリィを汚したこいつを許す訳にはいかないのに、やだ、怖いよ、やだこっち来ないで!、あれ、声が出ない、嫌、私このままじゃ殺される、あ、あぁ、やだ、やだやだやだ、嫌、来ないで、殺さないで、あぁ、許し、て
◇
あぁは言ったがもし本気を出してカリアが死んだらアーリアは決して俺を許さないだろう、そうなれば俺は今までの生きて行くための唯一の希望を失う事になる、だが言ったからには彼女の命に支障を出さない様に殺気だけは本気でこいつにぶつけてやる
ヨウシコレデイイ、アトハ技ヲ手加減シテヤレバ、ナンダ、コイツ怯エテ動ケナイノカ?ナラ好都合ダ、コレナラシクジッテ殺スコトモナイ
「イクゾ、死舞祭」
「あ、ああぁ!」
キルディアはカリアの体に縦横無尽の拳打と蹴りを死なない程度に喰らわせる
「ハァハァ、ヤッタノカ、ハァ、はぁ、死んではいないようだな、よっと」
ボロボロになったカリアを抱え、医務室へ連れて行く
◇
次の日の昼頃アーリアとキルディアとリリィがカリアの見舞いに来ていた、昨日のお互いの誤解は解けて、仲直りしたはいいが誤解を解くためのカリアの話の内容がアレなため当事者のリリィが顔を真っ赤にして話を聞いていた
「ふぅ~ん、で、お兄ちゃんに負けたと」
「あぁ、あの時は本当に殺されるって思ったよ、いまでも生きているのが不思議なくらい」
「そこまでかよ、俺も本気出すって言ったはいいが、殺してしまうとあれだから、殺気だけ本気出したんだ」
「キルディアさんって本当は怖い人なんですね」
リリィの言葉にアーリアが違和感を覚えたようで、リリィのおでこを指で弾いた
「ひゃっ!痛いよ~アーリア、どうしておでこをコツッてするの」
おでこを擦って涙目でアーリアに文句を言う、見た感じそこそこ痛かったのだろう
「だってリリィは昨日までお兄ちゃんの事、キルディアさんじゃなくてくんだったでしょ?どうしてさんに変えたの?」
「だって、キルディアさ、じゃなくてキルディアくんは怖い人なんでしょ?じゃあさんって付けて呼ばないと怒られちゃうよ」
「ん?じゃあ俺がさんって付けられて怒ったらどうするの?」
と簡単な質問をしてみた
「えっと、その、あと、はぅ~」
意外にも混乱している、恐らく彼女の中では怖い人にはさん付けしないと怒られる事が前提にあり、そこにさん付けしたら怒られると言う条件が入ってきたのだろう
「あ、ううぅ、ヒック、エグ、あうぅ」
え!?泣いちゃった!
「あ~あ、泣かせちゃった」
「キル、責任とれよ」
「え!?あ、その、大丈夫、じゃなくてえと、あぁ、と」
どうしていいのかわからず俺はリリィちゃんを抱きしめて頭を撫でるという行動に出た
「う、うぅ、あぅ」
「ごめんな、たださん付けじゃなくてくんのままでいいよって言いたかっただけなんだ、その、わかりにくくてごめんな、大丈夫、俺は基本的に優しいお兄さんだから」
それからしばらくして、泣き止んだのかと思いリリィちゃんの顔を見ると、そこには小さな女神が安らかに眠っていた
「やべ、スゲー可愛い」
「はあぁ、リリィ、可愛い」
「お兄ちゃん、手出したらだめだよ」
アーリアが不機嫌そうに睨み付けてくる
「出さねぇよ、ただ、こんな子供がいたらいいなって思っただけだよ」
「私もこんな子供産んでみたいよ」
アーリアが大きくため息をつく
「なんか、お兄ちゃんとカリアでリリィを抱いてるとこ見てると初めて子供ができた結婚してからあまり経ってない夫婦に見えてイライラする」
アーリアの言葉に俺とカリアは息を合わせて
「「夫婦じゃねぇ!!」」
とツッコんだが
「ほら、息ピッタリ、ヒューヒュー」
あからさまな棒読みでからかってくるので怒鳴ってやろうかと思ったがリリィちゃんが寝ているので後で部屋にもどったらたっぷりお仕置きしてやろうと考えたがアーリアにそんな事できないのでアイコンタクトでカリアに任せるとカリアは察しがいいのか頷いてくれた
「わかった、任せて、とびっきりのやつ準備しとくから」
「でも、ほどほどにな」
「え!?何の話の!?」
その後、アーリアはこの事をからかうことはなかった
今日は二つ出しました一気に出せた気もしますがまぁ、いいでしょう、これからこっちだけはポジティブになろうと思います(*´ω`*)