別れの旅立ち
ガイルは二人の家から近い避難所に向かって魔物を倒しつつ、突き進む
「クソッ!この炎さえ無ければいっきに切り殺せるのに。邪魔だぁ!」
魔物が死ぬ時にその身を燃やす青い炎、これに触れた生き物は、青い炎に命を奪われる。だが、命の無い物で炎を払えば、青い炎から自分を守ることができる
「炎が邪魔で進めねぇ、それなら・・・」
ガイルは刀を両手で持ち、刀を頭の上に構える
「風神の力、ここに在り!風技『旋風刃』(せんぷうじん)!」
ガイルの振り降ろした刀から二つの旋風が青い炎を絡めとり、道を拓く
「待ってろ、遥、スロイヴ!」
◇
京子はガイルに言われた通りに、領主の館にたどり着いていた
「はぁ、はぁ、やっと、着いた」
京子は扉を開けようとするが、扉の奥からの違和感が京子の動きを止める
「なんだろ、ここはもうだめな気がする」
扉の中からは領主様とたくさんの人のいつもと変わらない明るい声がする。でも、なぜか怖い
「そうだ、ガイルの所に行かないと」
京子が立ち去ろうと振り返ると、目の前にはスライム型の魔物が
「ひっ!・・・いや、来ないで!」
スライムは突進するように京子に襲いかかる
スライムに大きくなくぼみができ、京子を呑み込もうとしている。だが、一瞬にして、スライムの姿が消えた
「え?」
京子は目の前で起こった出来事を理解できなかった
「ふぅ、間に合ったぁ」
京子が声のした方を向くと、若い男性が瓦礫の上に座っていた
「あなたは、誰?」
「俺?俺はねぇ、ただの魔法使いだよん」
男は京子の背後に瞬間移動をした
「どこ見てんの?こっちだよ、お嬢さん」
「わぁっ!え、あれ!?」
男はニヤニヤと笑みを浮かべている
「いぃ反応だね、かわいいよぉ」
「やめてください!やぁ、頭ワシャワシャしないでぇ!」
男は京子の髪を散らすように激しく頭を撫でた
「かわいいから俺の子にならないか?楽しいぞぉ?」
「え!いきなり何言ってるんですか!?養子にしたいって事ですか!?」
男は頷き、京子は後ずさった
「いや、無理です。あなたの事はなぜか好きになれませんし信用できません。養子といって後でやらしい事を強要されるかもしれないし、それか体を売られるかもしれないですし。それ以前にあなたはどこか危険です」
「わぁ、酷い言われようだね。オジサンそんな人じゃないよ?ただの魔法使いだよ?」
京子は少しずつ男から距離をとり、魔物がいるかもしれない街の中へと走っていく
「酷いなぁ、どうして逃げるのさ。オジサン傷ついたよ」
「いや!来ないで下さい!」
京子は、後ろを影のようについてくる男に怯えながらも必死に走っていく
「おぉい、姫ちゃん?早くどこかに隠れた方がいいよ?絶望したくなかったら、ね」
「じゃあ追ってこないで下さい!」
男が静止すると、京子は立ち止まり近くの建物の隙間に隠れた
「やっぱり、君は透魔眼を持ってるんだね。普通こんな所に隠れようとする人いないよ?」
「ひゃっ!私、追ってこないでって言いましたよね?どうしてここにいるんですか!?」
男は語らず忘れていたという顔をしている
「はぁ、もういいです。あなたが私や街の人に危害を与えない間は私も小さい事で文句言いません」
「あぉ、ありがとう♪それじゃあ、俺が隠れてって言った理由を教えるね。もうすぐで君の恋人がここで魔物に襲われて喰われてしまうんだけど、俺の魔法でその魔物を倒したいんだ、けど君がいるとその恋人が頑張って一人で倒そうとして殺されてしまう。だから隠れてて欲しかったんだよ」
京子は話の途中で戸惑いはしたが、話に割って入る事なく最後まで聞いた
「あの、それって私が隠れなくても助けられないですか?ガイルがあなたを拒んでも助けられますよね?」
「そうだね、簡単に助けられるよ。でもさ、好きな女の子の前でドジ踏んで知らない男に助けられる、そんなのは男のプライドが許さないと思うんだ。だから君は何があってもここから出ないで欲しい。できればこの先の光景を見ないでやって欲しい、オジサンからのお願いだ。絶対に君と君の恋人を無事に生きて安全な場所に送り届けるからさ」
男は建物から出ていき、手から雷を放つ。男が歩き始めて少しすると、空から青い炎が無数に落ちてきた
◇
ガイルは負傷した腹部を押さえ、残った避難所に向かっている
「クッソォ、双頭犬、頭だけで噛みついて来やがった。どうやったら頭だけであんな動けんだよ」
ガイルは避難所に着き、堅く閉ざされた扉を叩く
「誰かいるか?俺だ、ガイルだ。いたら開けてくれ。頼む、開けてくれよ、誰か生きてんだろ、頼む」
ガイルは中に生きた人間がいない事を知った。手に持っている刀は魔物の気配を感じると微かに震える、その刀が今この避難所に近付いていくに連れて音をたてて震えていたのだ。つまり、この中に生きた人間はいない
「ギュギュ、グァ?・・・・ギャー!ギャー!ギャー!」
避難所の屋根で羽を休めていた魔物がガイルの存在に気付き仲間を呼んでいる
「グギャー!」
「オォォォ!」
小さな魔物や大きい魔物まで様々な魔物が寄ってくる
「お前らが、お前らさえいなけりゃみんなが死ぬことも無かったのに。絶対に許さねぇ、シオン、ディア、彩香、スロイヴ、遥、みんなごめん。今から俺が仇を取ってやるから、少しだけ待っていてくれ。そして京子、待っててくれ、すぐに迎えに行くから」
「グルルル」
「ギャ、ギャー!ピィッ!」
ガイルは遅い来る小型の魔物を切り伏せた
「さぁ、死にたいやつから掛かってこい、来ないならこっちから行くぞ」
ガイルは魔物の群れに飛び込んでいく、絶命した魔物の炎は刀から発せられる風が振り払い、ガイルの剣術で無数の魔物は切り伏せられた
「はぁ、はぁ、お前で、最後だ」
「アヒャヒャヒャッ!」
首の無い、筋肉質で五メートル程はある大きな肉体にはいくつもの人間らしき顔があり、両手にはバスターソードが握られている
「はっ、二刀流とはかっこいいなぁ。ちゃんと二本も扱えるのか?」
「パパ、ママ、タスケテ。アル、すまない、俺がヨワイセイデ。ヤダ、クル、シイヨ、タスケテ、お願イ、私を、コロシ、テ。モウヤダ、コロシテ、コロシテ、コロシ、テ」
魔物の体にある人の顔が口を動かして助けを求めている。老若男女様々な人が、魔物の肉体からの、この世からの解放を求めている
「アヒャヒャヒャッ!ア、アァァァァ!ヤだ、モウヤダ、私、もうこれ以上苦しみタクナイ!タスケテ、タスケテお兄ちゃん、ヤダアァァァァ!」プチ、プチ、プチ
魔物は体にある人の顔をひとつずつ潰して体に埋め込んでいる
「テッメェ、今すぐぶっ殺してやる!覚悟!」
「ア?アヒャヒャヒャッ!ヒャー」
魔物はガイルに向かってバスターソードを振り下ろすが、ガイルは刀一本、それも片手で受け止めている
「その程度か?見た目のわりに軽い攻撃だな」
「アヒィ、ヒャヒャッ!」
魔物はバスターソードを振り回し、ガイルは全て受け止める
「ふんっ、遅いな、その程度じゃ俺の剣は折れんぞ!」
「ヒャ、ヒャヒャ、ヒャヒャヒャ、ヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッ」
魔物の連続攻撃はどんどん速度を増していく
「クッ、それならこうだ!」
バキィン!
ガイルは魔物のバスターソードの一本を弾き飛ばした
「ヒャヒャヒャッ!」
「しまっ、ガァッ!」
ガイルは魔物に掴まれ、ガイルは身動きできなくなってしまった
「アタシ、モウタスカラナイ、アナタノセイ。アナタガモットハヤクキテクレタラ、アタシタチハ、クルシイオモイシナクテスンダノニ。アナタガ。オマエガ。キサマガ。モウオマエハトモダチジャナイ、ヒトゴロシ。ヒトゴロシ。オマエガ、ヒトゴロシ。ヒトゴロシ。ヒトゴロシ。ヒトゴロシ」
「やめろ、やめろ化け物!俺の友だち、家族達になりすますな!は、遥、スロイヴお前らもこいつに」
遥とスロイヴは隣り合わせでガイルを見ている
「えっと、誰?スロイヴ、この人知ってる?」
「あ?いや、知らん。どうして俺らの名前を知ってるんだ?見た目も怪しいな」
「え、マジかよ。おい!お前ら俺の事を忘れたのか!?ガイルだよ!小さい頃から一緒に遊んだじゃねえか!」
二人はガイルを無視して楽しそうに会話している。いつも五人で遊んでいた事を、スロイヴ、遥、彩香、シオン、ディア。ガイルの事は一切話の中に出なかった
「あらら、思ったより深刻そうだね」
「ヒャッ!アヒャー!」
魔物は足下に現れた男にバスターソードを突き刺した
「うん、遅いな。こんなのでも人間を喰えるのか、世の中は意外と甘いものだな」
「誰だ、お前は」
「ヒャッヒャッヒャッ、ヒャー!」
ガイルを握っている拳で肩に乗っている男を殴ろうとするが、なぜか魔物の体はぴくりとも動けなくなった
「軽くバインドかけるだけでここまで動けなくなる、か。どうやら魔法に対する耐性が薄いようだね。やぁ、君がガイルかい?」
「あ、あぁ、それがどうした」
男が前に出した握りこぶしを開くと、ガイルを握る魔物の手も開かれ、ガイルは地面に落ちていく
「おわっ!っと、危ねぇだろが!もう少しまともに下ろせよ!」
「ごめんごめん、お詫びとしてさ、独りで寂しそうな君にいい知らせを聞かせてあげるよ。向こうの建物の隙間に女の子が隠れていたよ。でも、ガイルってやつを待ってるみたいでさ、君の事だろ?助けに行ってあげなよ」
ガイルはすぐに立ち上がり、荒れ果てた街を走っていく
「京子!おいどこだ!京子!」
「ガイル!私はここだよ!」
ガイルは京子の姿を見つけると、真っ直ぐ京子の元へ走り、抱きしめる
「京子、よかった、無事だったんだな。そうだ、領主様は?」
「私も確認した訳じゃないけど、領主様やその近くにいた人達も、もうダメだと思う」
「そうだね、今この街の生き残りは君達だけだ。なんなら、この街全部を調べてもいいけど、俺はおすすめしないな」
ガイルは男の首に刀の刃を当てる
「お前、何者だ?」
「ガイル、その人は私を助けてくれたの、だから刀を下ろして」
「そそ、君の恋人を助けてあげたんだし、少しは感謝して欲しいなぁ」
ガイルは殺気を抑え、刀を鞘に収める
「それじゃあ俺は家に帰るけど、君達も来るかい?お茶くらい出すよ?」
「いえ、大丈夫です。あてはあるので」
「それに、俺はあてが無くてもこいつの家は絶対にねぇな」
ガイルは男に目を合わせる事なく、京子の手を引き、門へと歩いていく
「ガイル、待って」
「何だ?あいつに礼を言えってか?」
「違うよ。ただ、私はそっちに行きたくない、いやな感じがするの」
ガイルは京子の勘はよく当たる事を知っている、特に悪い事が起きる時に
「そうか、でも大丈夫だよ。今俺には刀があるし、京子も守ってみせる」
「ダメ!やめて、お願い、そっちは、いやなの。行くならガイル一人で行って、私はここに残るから」
ガイルは京子の異様な怯え方を見て、仕方なく道を変えることにした
「ここからだと、お前の親父さんの友人だっけ?その人の家に行けないんじゃないか?確か西の門が最短ルートだろ、ここ東の門だぞ?」
「でも、ここは嫌な感じしないもん」
「俺なら転移魔法で飛んでいけるけど、君達にも使ってあげようか?」
さっきの男がガイルの後ろで空中に浮きながらくつろいでいる
「何しについてきた?さっさと消えろ、斬るぞ?」
「ガイル、そんな事言わないの。あの、ガルネス・ディト・ルークディスタニアという私の父の友人の家に行きたいのですけど、ここからじゃ遠くて。お願いできますか?」
ガイルは京子を壁際までよせて両肩を強く掴む
「京子、あんなやつに頼る事はない!」
「もう!別にいいじゃん!そっちの方が楽なんだし!確かにあの人はすごく怪しいし私だって最初はかなり警戒したよ!でも、今は助けてくれるからあの人が私達に何か悪い事をしない限り信用するの!いつもガイルばっかり言うこと通してるんだからこう言う時くらい私の言うことも聞いてよ!いつも自分の良いように事を進めてばかりで、自分に嫌な事があったら誰の言うことも聞かない!ガイルは私達と出会ってから一度でも嫌な事を我慢して私達に合わせた事があったの!?」
ガイルは京子の言葉に圧され、一歩後ろに退く
「はぁ、もういい、ガイルが来ないなら私一人でこの人と先に行く。あなたとはもう二度と会わないから、さよなら」
「お、おい、京子。それ、マジで言ってるのか?」
男の隣に立った京子はガイルの顔も見ずに頷く
「どうする?今ならまだ間に合うよ?」
「・・・・行けよ、俺は一人で旅をする」
「っ!そ、そう、じゃあ、さよなら」
ガイルが振り向くと、二人の姿はなかったが、手紙とピアスが浮いていた
手紙の内容は『やぁ、俺だよ。君、本当にあれでよかったのか?目的地に着いてからずっと泣いちゃってるよ?彼女もついカッとなってあぁ言っちゃっただけで本当は一緒に来て欲かっただけみたいだね。お互いまだ若いんだし、そういう事で離ればなれになるのは良くないと思うよ?彼女は君が来るのを待ってるみたいだからさ、早く来てやりなよ。あと、手紙の隣に浮いてると思うけど、そのピアスは使い捨ての転移石で作った物でね。君の彼女にそれの転移先に指定したピアスを着けさせたからすぐに会えるし、転移魔法の使えない所でも転移できる優れもの。大丈夫、彼女の親父さんが作ったものらしいから安心してくれ♪』
「ふんっ、別に待たなくても俺はあいつに会う気はない」
ガイルは手紙を破り捨て、ピアスも刀で破壊する
「旅にでも出てみるか、ここから近い街にでも行けば何とかなるだろ」
ガイルは崩壊した故郷を捨て、旅に出る
ども、ひさしぶりの投稿です
長いこと他のものを書いていたのもありますが、一番の理由はゲームのし過ぎですねw
何度も書こうとは思ってたのですが、一度だけですけども書いた文が消えてしまってやる気がごっそりと削れてしまいまして。私メンタル超絶弱いんですよw
またいつ出すかわからないので、これを読んでる人は他のおもしろい小説を読んで待っててください
(^^)ノシ




