旅に出ないか?
リリィと教官に別れを告げ、訓練場を出てきた、聖堂にも名前があった事も確認したから、どうするかな?
「そんじゃ私は一度家に帰って、3日くらい休んでから旅に出るよ」
「僕はこの街で支度してから、色んな国を観光しながら困っている人を助けていくよ」
二人とも自由だな、まぁ、俺達も似たような物だが
「俺とアーリアは、しばらくこの国で稼いでから旅に出ようと思っているから、それぞれまた会えると良いな」
「だね、それじゃ、また」
カリアは荷物を背負い、門を出ていった
「それじゃあ、僕はまず鍛冶屋で武器を買いに行こうかな、あ、犬だ!可愛いなぁ、ねぇアーリアちゃん見て、大きい犬だよ」
「本当だ!可愛い!」
い、犬だ、俺、犬はちょっと無理なんだよな、フギンとムニンは大丈夫だが、ロキのフェンリルにパクッといかれて以来犬苦手なんだよな
「キルディア、犬だよ!あれ?何か遠くない?」
「そうか?俺は動いていないぞ?」
あ、あの犬、フェンリルに似てる、白銀のような白く輝くツンツンした毛が似てる、だが、奴とは違って目が愛らしいな
「お兄ちゃんはね、犬が苦手らしいの、特に白い犬」
「あぁ、じゃあ仕方ないね」
ニール、知っているのか?あの時はバルドルもヘズもいなかったはずだが
ヘルが何かしたのだろうか
「キルディア、何ボーッとしてるの?」
「いや、ちょっと考え事を・・・おわっ!ちょっ、バルドルやめろ!その犬を俺に近づけるな!」
バルドル、なぜ笑う、そしてなぜ犬を抱えたままこっちに歩み寄る?
「ふふっ、キルディア君、こんなに可愛いワンちゃんを嫌うなんて可哀想だよ?ね?」
「クゥ~ン」
「いやちょっと待て、確かにその犬は愛らしい目をしている、だが俺に近づけるな」
「お兄ちゃん、これを機に犬嫌い克服したら?」
アーリアまでも犬に取られたか、悔しいが手出しできん
「アーリア、ちょっとこっちに来い、ちょっと待て、犬は置いて来い」
「むぅ」
むぅじゃない、犬は本当にダメなんだよ
「で、何?」
「アーリア、犬の事とは別の用なんだけど、俺達も旅に出ないか?」
アーリアは不機嫌そうな顔からいつもの可愛い顔に戻り、少し考えているようだ
「そうだね、ネクストになりたての私達にすぐに仕事が来るかわからないし、来ても安い報酬の物ばかりだと思うし、旅に出る方がおもしろいかもね」
「じゃあ、旅に出るか?」
アーリアはゆっくりと頷く、俺はニールに近づこうとするが、途中で足を止める。どれだけ犬が好きなんだよ、4匹くらい抱えて、すげぇモフモフしてる
「ニール、俺達も旅に出る事にしたけど一緒に買いものするか?」
「あ、いくいく!ちょっと待ってね、今ワンちゃん達を返すから」
しばらく待っていると、ニールは犬の毛がたくさん付いていたからか、着替えて来たようだ
「ニールちゃん、バルドルってニールちゃんの名字だよね?」
「え、僕のはバルドだよ?」
ニール、こいつさっき俺が無意識に呼んだ名前のことを爪を刺す事で静かに罰を与えてきやがる、結構痛い
「じゃあ、どうしてさっきお兄ちゃんはニールちゃんの事をバルドルって呼んだの?」
「えっとね、バルドって呼んだつもりなんだけど、実際はバルドルって言ってたんだよ、たぶん、ね?」
「あ、あぁ、そうだな」
爪を使って俺の腹に犬の文字が、たぶん次にバルドルって呼んだら犬でモフモフされるんだろうな、気を付けよう
「まずは食料だな、アーリアはいっぱい食べるからたくさん買わないとな」
「別に旅に出るんだから我慢するよ」
「僕は剣と聖水が欲しいな、聖水どこだろ?」
聖水は聖堂でもらえるだろ、剣は鍛冶屋か武器屋に行けばあるし、そうだ、ギアの調整器具を買っておこう
「お兄ちゃん、私達って訓練場に頼りきりだったんだね」
アーリアが俺も思っている事を口に出していた
「そうだな、俺の使っていた物もほとんどが訓練場の物だったからな。でも、今からそんな事言ってたら旅なんてできないぞ?」
「やだ、旅に行くから、絶対にお兄ちゃんと一緒に旅に出るから!」
「ねぇねぇ、あっちにすごいのあったよ!」
ニール、お前いつの間にどっかに行ってたのか?
「え、なになに?」
「何かおっきい剣があって、昔使われていた文字が彫られてたの!ざんばとーって言うらしいよ、博物館の館長さんが言ってた」
ニール、斬馬刀くらいではしゃぎ過ぎだ、確かにかなり珍しい物だが
「斬馬刀か、確か今の技術的世界貢献区のジパングがまだひとつの国だった時に使われていた物だよな?珍しい物だが、そんなにはしゃぐほどの物ではないな・・・どうした?」
「お兄ちゃんって、人間が扱える武器とか詳しいよね、その、ざんばとーとか私全然知らないもん」
「キルディアってもしかして戦いとか好きなタイプ?」
ニール、お前は俺が昔オーディンだって知ってて俺に話させるつもりだろ、顔がにやけてるぞ
「いや、ただ武器を知ることは相手が何を使って来ても勝率をなるべく高くできるように調べているだけだよ」
「やっぱり戦いのためじゃん」
「お兄ちゃん、あのお菓子美味しそう」
アーリア、話が見えていたからって他の所に意識を移すのをやめろとは言わないが、せめて返事をしてから話を変えてくれ、悲しいから
「あ、あれすっっっっごく甘いお菓子だよ、僕一回食べた事あるんだけど、しばらく甘い物を食べられなくなったんだ」
「へぇ、じゃあやめとこ」
「ふたつ食べると糖尿病確定とかかいある、ふたつとか誰も食わないだろ」
その後、俺はこの二人の女の子ショッピングに頭を抱える事になる、旅に必要な物を買いに来たのに、なぜ見た目を重視するのか、女子と買い物に行く時は覚悟を決めないとな
◇
「はぁ、あれだけ買いものに時間を費やして、買った物が普通に旅に必要な物と多少の娯楽遊具とはな」
本当に何だったんだ、あの無駄な時間は、俺はもう旅に出る前に精神が削れたよ
「キルディアはもう少し男らしくならないと、女の子に振り回されるよ?」
ニール、それは俺が人を引っ張っていく力が無いって言いたいのか?
「お兄ちゃん、まずはどこに行く?」
「そうだな、近くのタタナリ村を通って鍛冶屋のあるサアラナ村で道具とかを補充して隣国のワダバニに行ってぶどう酒を飲もう」
突然後ろから尖った物で殴られた、いったい誰だ?
「コラコラ、だめだよ?子どもがお酒飲んじゃ、いくらキルディアがお酒飲める歳でもお父さんはキルディアが20歳になるまで許さないよ」
あぁ、こいつか、ウゼェ。手に持っている箱は何だ?
「クソ親父かよ、いきなり殴るなよな、それにまだいたのかよ」
顔面に一発くらわしてやろうと殴りにかかるが、簡単に手で防がれる
「いやいや、ここの風俗店なかなかいい店でね、また来ちゃったわけ、ワダバニは酒好きとしてはいい国だよ、女はハズレはないけど、上物もいないからねぇ、お酒が無かったらあの国の風俗にはあまり行かないかなぁ」
さっきから殴ったり蹴ったりして攻撃しているが、全て腕で払われて一発も当たらない、腕に防護魔法をかけているからダメージも与えられていない
「ん~、キルディアも腕を上げた見たいだけど、まだ隙があるねぇ、今は攻撃しないけど、俺が本気でやれば56回は殺せたよ、でも前は178回だったからだいぶ良くなっているね、後は攻撃のスピードだけど、遅すぎる、お前ならもっと早く動けるはずだ、もちろんギアチェン無しで。まぁ、褒める所は技術的な部分を補うその頭の回転だね、見事俺の防御のあまい腰を突いてきた、でもスピードが足りていなかったのは惜しい所だね」
珍しくまともに師匠らしい事を言ってやがるが、それでもウザイ事には変わりない
「あぁそうかよ、ったく、魔法使いなら魔法使いらしく遠くから魔法でも撃っとけよ。って言いたいが、本当に魔法を撃ってくるから簡単に言えないんだよな」
「よくわかってるじゃないかぁ。あ、そうだ、キルディアとアーリアがネクストになったって聞いたからさ、俺からのプレゼントを渡そうと思ってね。はい、二人のために防護魔法を込めた糸で作った戦闘服だよ。ペアルックだからアーリアも喜ぶと思うよ?」
はぁ、こいつのプレゼントっていつもスゴイ物ばかりだから、俺が幼い頃にこいつを殺せなかった原因のひとつなんだよな
「今まで俺達に作ったみたいに良いものを作れるならそれで稼いだらいいじゃねぇか、なんで魔法の研究なんかしてるんだ?」
「ふふふ、そっちの方がかっこいいじゃないか」
はぁ、こんな性格じゃなきゃ尊敬できる師匠なのにな、これじゃあスゴイけどそれ以上にウザイおっさんだ
「あ、パパだ、なになに?あ、プレゼントだぁ!」
「ネクストになった祝いにってさ」
アーリアがしゃがんだと思ったら、いつの間にか俺の手からプレゼントが消えていた
「そうそう、ちゃんとキルディアとペアルックだから、二人で仲良く使ってね」
親父の話を聞くこと無く、アーリアはすでにプレゼントの包みを開けていた
「これ、戦闘服?あ、お兄ちゃんとペアルックだ!やったぁ!」
「メイドインルークディスタニアって、こんな札いらないだろ」
「わぁ、キルディア達の師匠が作ったの?すごいね、正直ただのウザイおっさんだって思ってたけど、違うんだね」
「あらら、ニールちゃんヒドイ事言うね、これでもおじさんスゴイ人なんだよ?」
本当スゴイ人は自分で言わない物だけど、こいつは確かに色々とスゴイからな、反応に困る
「それじゃ、俺はこの辺で帰るわ」
「パパ、戦闘服ありがとぉ~!お兄ちゃんと一緒に使うね~」
「なんだ、結構仲良いんだね」
「まぁ、今回は祝いに来てくれたんだし、あまり邪険に扱うのも、な」
親父はすでに転移魔法で家に帰ったのだろう、もう姿は見えなかった。俺は心のどこかで、この素直な言葉を聞いて欲しいと思っていたのかもしれない
「それじゃ、気を取り直して旅に出るか」
「僕もしばらくはキルディアについていくよ、アーリアちゃんとも、もっと仲良くなりたいからさ」
「よろしくね、ニールちゃん」
俺達三人はタタナリに近い門へと足を進める、ネクストになって初めての旅に出るために
更新遅くなりました、ごめんなさい
やっとキルっち達の旅が始まりましたね
今回はライバル?のキャラクターを出そうとしてましたが、師匠の再登場で無くなっちゃいました
人の心って難しいですよね、作者がバカなので、まぁ自分の事ですがw、なんとなくで書いています。ですから、ここはおかしいんじゃね?と思う事もあると思われます。
次はどうなるか、作者にもわかりません。設計図みたいなものがないので
読んで下さっている方々、おりましたら感謝しておりますので、これからもよろしくお願いいたします
長文すみません