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☆第六話 肩叩き

 じいちゃんが珍しく肩をさすっている。じっと見ていると、今度は首を右や左に振り始めた。縁台に座るじいちゃんと庭の風情が、実によくマッチしていて、哀愁を感じさせる。母さんに云われた打ち水を終えた僕は、じいちゃんへおもむろに近づいた。

「じいちゃん、肩を叩いてやろうか?」

「ん? ああ…正也か。ひとつ頼むとするかな。ハハハ…わしも歳だな」

 気丈なじいちゃんの声が幾らか小さかった。

 じいちゃんの後ろに回って僕が肩を叩き始めると、「ん…よく効く…効く」と、じいちゃんは気持よさそうに云った。しばらく叩いていると、「すまんが今度は軽く揉んでくれ」と注文が入った。僕はじいちゃんに云われるまま、揉みへと動作を移行した。

「ああ…、うぅ…。お前、上手いなぁ…」

 僕の下心を既に見抜いているなら、じいちゃんは大物に違いない。少し褒めておき、恐らく住んだ後に要求されるであろうコトを、最小限に食い止めようとしている。いや、勿論これは僕の推測であり、じいちゃんは素直な気持で褒めたのかも知れないのだが…。僕には本当のところ、ちょっぴり下心があった。最近、流行り始めた玩具を欲しかったので、じいちゃんに買って貰おうと思ったのだ。その潜在意識が、『じいちゃんの肩を…』と、命じたのかも知れない。

 ひと通り終えた頃、「え~正也、何か欲しい物でもあるのか?」と、じいちゃんの方から仕掛けてきた。これには参った。

「うん、まあ…」と、僕は防戦に回って暈したが、猛者もさは追及の手を緩めない。

「男らしくはっきり云え。買ってやるから」

 僕は遂に本心をあらわにして、玩具が欲しいと云った。すると、じいちゃんは、「明日でも一緒に店へ行ってみるか…」と至極、簡単に了解してくれた。

「ほんと?」

 念を押すと、「武士に二言はない!」と、なにやら古めかしい云い方をした。

「夕飯ですよ~、お義父さま」

 廊下のガラス戸を開け、母さんが呼んだ。

「正也も早く手を洗いなさい」

 そう云うと、すぐに母さんは引っ込んだ。

「さあ飯だ、飯だ」と、じいちゃんは縁台を勢いよく立った。その時、じいちゃんの頭に一匹の蚊が止まった。

「コイツ!」と、じいちゃんは自分の頭をピシャリと叩いた。僕は光る蛸の頭をじっと見ていた。蚊はスゥ~っと飛び去った。

「某メーカーの殺虫剤を撒かないと、このザマだ、ハハハ…」と、じいちゃんは声高に笑った。

 夕陽とじいちゃんの頭が、輝いてまぶしかった。

                           第六話  完

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