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☆第四話 花火大会

 僕の家では毎年、恒例の小さな花火大会が催される。とは云っても、これは飽くまでも僕がそう思っているだけの、どこの家でも出来る程度の小規模なものなのだが…。

「正也、今日は例の大会だなぁ、ハハハ…」

 じいちゃんは賑やかに笑って、自分で淹れた茶を一気に飲み干した。

「じいちゃん、花火は買ってくれたの?」と訊ねると、

「ん? いやぁ…未知子さんが買うと云ってたからな…」

 じいちゃんは急に温和おとなしくなった。

 花火を買ってくるのは、父さんの場合もあり、母さんになるときもあった。じいちゃんも買ってくれたことがあったとは思うが、僕の記憶では一度こっきりだった。僕も、なけなしの小遣いをはたいて、本のわずかばかり買い足し、毎年の花火大会を楽しむのが常だった。

 勤めに出る前の父さんに今日の大会の開催を告げると、「そうだったな…。じゃあ、早く帰る」と、無愛想にOKしてくれた。

 大会の夕暮れとなった。毎年、開始は夕飯後の八時頃だった。僕は昼間に近くの玩具屋でお気に入りの花火を少し買っておいた。そして何事もなく夕飯も済み、いよいよ八時近くになった。

「えっ! 今日だった? 明日だと思ってたから買ってないの」

 云ってたのに! と、一瞬だか僕は母さんを怨んだ。そして、グスンと少し涙した。運悪く、その僕をじいちゃんが見ていた。

「正也! 男が、これくらいのことでメソメソするんじゃない!」と、顔を赤くして、じいちゃんは僕を叱った。涙ぐんだ目を擦ると、僕の前には怒った茹で蛸が立っていた。しかし、その蛸はすぐにグデンと柔らかくなった。

「まあ、いいじゃないか、今日でなくても」と、じいちゃん蛸は僕をなだめにかかった。

 そこへ父さんが蕭々と現れた。

「フフフ…、正也も、まだ子供だな」と父さんは少しニヤリとした。云われなくたって僕は子供さ、と思った。

「お父さん、こういうこともあろうかと、ほら、今年は私が買っておきましたよ」

「おぉ…珍しく気が利くな、お前」と、じいちゃんが褒めると、父さんは調子に乗って、「ついでに、コレも買っときました」と、さも自慢げに、某メーカーの殺虫剤を袋から取り出して、じいちゃんに見せた。

「ああ…コレなぁ。切れたとこだったんだ」

 じいちゃんは顔中に歓びをあらわにした。

 しばらく経つと、暗闇の庭には綺麗な花火の乱舞が広がり、四人の心を癒していった。

 でも、じいちゃんは半分、ウトウトしていた。

                           第四話  完

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