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☆第十八話 違う!

「そうじゃない、そうじゃない!」

 朝から小さな雑音が僕の子供部屋へ飛び込んできた。いったい何事だ、とばかりに窓を全開すると、父さんが庭の整枝作業をしている姿が見えた。そのかたわらにはじいちゃんがいて、ご意見番よろしく、手ぶり身ぶりで指導していた。

「はい!」

 素直な返事はいいのだが、所作はどことなく不格好な上に、おぼつかない。いったいどういうことでこの場面になったのか? まったく分からない僕だった。

「違う!」

 とうとうじいちゃんが怒りだし、父さんが手にした高枝鋏を取り上げた。こうだ、とばかりに、じいちゃんは格好よく整枝して、彦生えや胴吹きなどの不要枝を切り落としていった。師匠の場合は切るではなく斬るような格好よさで、どちらがお年寄りなのか…と疑わしくなった。

「分かったか?!」

「はい、分かりました…」

 父さんは言われた通りにふたたび手渡された高枝鋏で切ろうとした。

「違う、違う! 何も分かっとらんじゃないかっ!」

「… …」

 打つ手なし、とは、まさにこれだな…と僕は思ったが、少し父さんが哀れになった。しかし救いの神ならぬ救いの母さんの声が聞こえた。

「お義父さま~、お茶にして下さい! あなたもね!」

 つけ足しながら、父さんにも一応、お呼びがかかった。

「まあ、いい…。茶を飲んでからにしよう」

 僕も子供部屋を出て、お茶会に出席することにした。

 居間へ行くと、先ほどの騒ぎなどなかったように、じいちゃんと父さんは笑顔で茶を飲みながら話していた。愛奈まなは母さんに抱かれて機嫌よく茶ではない離乳食後の母乳を飲んでいた。

「いやあ~、難しいですね」

「ははは…馴れんことをするからだ。あとは、わしがやっておく」

「お願いします。私は不器用で…」

「違う! 馴れだ。頭と身体で覚える違いだ、ははは…」

 父さんは黙ってうなずいた。思うところがあったのだろう。

「今朝の正也は竹刀しないの振りがにぶかったぞ」

 じいちゃんの視線が僕に向いて朝稽古の注意に及んだ。僕も黙って頷いた。

                           第十八話  完

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