最終話:マジェスティック・アイドル-Majestic idol-
※小説家になろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っています。
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・5月23日午後6時41分付
前書き簡略化、行間調整
西暦2014年1月10日、千葉の舞浜上空に現れた無数の宇宙船が飛来する。
その宇宙船に乗っていたのは、ダークネスアイドルと名乗る宇宙で活動をしているアイドルだった。
日本政府は、さまざまな議論や検討等を行った結果、彼女達に『ダークネスアイドル特区』を認める事を決める。
その一方では、一連の流れに超有名アイドルの影があるのでは…と考える人物がいた。彼の名はイージス、またの名を黒騎士と言う。
彼が開発したマジェスティック・ウェポンは人知を超える力を持っているのだが、その真相は明らかではない。
ロケテストが行われていたARゲーム〈アイドル・バトル〉は、そのゲーム性やシステム等からジャンル隔離が行われる事となり、マジェスティック・バトルとして運営される事になった。
そして、マジェスティック・ウェポンを手に戦う5人のアイドルを〈マジェスティック・アイドル〉と呼んだ。
エクストリームARスポーツとも呼ばれるようになったマジェスティック・バトルは、超有名アイドル商法等に疲れた市民からは絶賛されるという予想外の展開を生むのである。
そんな中で活発な動きを見せたのは、BL勢だった。彼らは、超有名アイドルの残党がダークネスアイドルであるという情報を何処かから掴み、動画として公表するという策を取った。
BL勢の暴走はとどまる事を知らない。遂には、ダークネスアイドルハンター制度をでっち上げる等の強行手段を取るようになったのだ。
果たして、彼女達の暴走は何処まで日本を混乱させるのか? それを止める為にはBL勢を魔女狩りによって強制排除するしか方法はないのか?
その時、これ以上の暴走を招く事はコンテンツ業界の破滅を意味すると考えたイージスは、表舞台へ再び姿を見せる。
イージスが表舞台に姿を見せた理由、それは超有名アイドルとBL勢を両方とも消滅させ、新たなコンテンツを生み出すための土台を作る為だったのだ。
一方で、ダークネスアイドルのリーダーでもあるナイトシェイドが倒れ、BL勢もサーバー施設を警察に抑えられた事で衰退していく流れとなった。
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西暦2014年4月16日午後2時、草加駅近辺にある大手動画サイトのビル。そこに姿を見せたのは、何とディヴァインアークだった。
『何としても、アレを警察に見つけてもらわないと困る―』
動画サイトで扱っている動画などのデータが入っていると思われるサーバールームは、草加近辺の各所に太陽発電と共にあるのだが…。
「ここに来れば、見つかると思っていたら…案の定か」
受付前で待っていた人物、それは背広姿の西雲水希だった。
『西雲か。一体、何の用だ?』
「あなたの正体が知りたくて…というのは冗談だけど、超有名アイドルとBL作品を全て黒歴史にしようと考えているのは本当なの?」
『政府が、その答えをもうすぐ出してくれるだろう。それ以上の事は、現状では話せない』
「政府と言うと、情報操作禁止法の事? それとも別の水面下進行中の法案?」
西雲はディヴァインアークが言う〈答え〉に関して聞きたがっている。しかし、ディヴァインアークも事情があって答えが言えない状況でもあった。
《臨時ニュースをお伝えします。先ほど、日本政府は情報操作禁止法に関して野党の反対多数で否決し、廃案となった事を発表しました。繰り返します―》
ビル内にあるテレビの1台が、民放の情報番組を映していた。そして、そこで流れていたのは臨時ニュースである。
『政府が先走りをしたか…。このままでは超有名アイドル勢の暴走を繰り返すだけだ』
テレビの臨時ニュースを確認したディヴァインアークは、別の場所へと向かおうとしていた。
「ダークネスアイドルとは違う勢力の事? それとも、別のフーリガン勢力―」
西雲は少し含みを加えたかのような質問をした。これで彼が何も話さないようであれば、彼は何かを隠した状態で超有名アイドル側に協力していた事になる。
『マジェスティック・アイドルが誕生した理由を知っている君ならば、どの勢力かは理解しているはずだが…』
ディヴァインアークの発言を聞き、ある程度は理解した。周囲に敵勢力がいるかもしれない場所で、あっさりと話す事はあり得ない。
西雲が気付いた頃には、ディヴァインアークは何処かへと姿を消していた。あれだけのARアーマーを装備している人物が、誰にも気づかれる事なく姿を消すのはおかしい、と西雲は考える。
「確か政府のお抱えと言われていたアイドルグループがいたような―」
そして、彼女は気付いた。法案の否決があった理由に、もしも超有名アイドルグループの裏工作があったとすれば、法案否決のニュースにも納得がいく。
「全ては、BL勢の支配するディストピアと錯覚するように作られた世界、つまり、実質的な支配者は超有名アイドルだった。それも、ダークネスアイドルが姿を現す前から」
元々、動画サイトのビルに用があった西雲は受付で事情を話し、中へ入れてもらうようにお願いをしていた。余談だが、事前にアポは取ってあるらしい。
その後、BL勢がコンテンツ流通に関して妨害をしているという認識がされ、それらを全て排除する為の法案を国会に提出しようという動きがあった。
しかし、この動きは超有名アイドル勢にとっても、過去の規制法案等を踏まえて他人事ではないと判断された。そして、彼らは共闘して法案を廃案にする為に動き出す。
所が、このBL規制法案を出したのは与党の超有名アイドル勢の息のかかった議員によるものだった。それを知った超有名アイドル勢は、突如としてBL勢に牙を向けたのである。
そうした小競り合いが2週間も続き、やがては超有名アイドルもBL勢もコンテンツとしては欠陥を抱えている事が発覚、イージスの掲げていた〈新たなコンテンツツリーを作る〉という部分だけが独り歩きをする形で、超有名アイドルとBL勢を物理的に排除しようと考える勢力がいた。
彼らはマジェスティック・ウェポンを独学で作り出そうと考えていた。しかし、マジェスティック・ウェポンにはブラックボックスが存在している。それを解析しない限り、完全にはならない。だが、世の中には〈絶対〉という物はあり得ない。それが、ARウェポン・シャドウが生まれるきっかけとなった。
小競り合いの中には、流れに便乗して目立ちたい為だけに偽情報を流したりする等して、結果的にBL勢と超有名アイドル勢を窮地に追い詰めたような情報も存在する。
〈超有名アイドルがグッズの制作コストを抑える為、横流しされた偽グッズに公認したかのようなシールを張り、その結果として反社会的勢力に資金を流していた。〉
〈BL勢が原作ブレイカーのSSを1次創作オンリーのサイトで掲載し、それを超有名アイドル勢の仕業と責任転嫁する〉
それでも完全に黒歴史化しなかった理由は複数存在していたが、それを知りたいと思うような人物は数少なかった。
それを知ってしまったら、後には引けなくなると考えているネット住民が多かったのか、あるいは政府や警察が情報を隠していたのか…真相は謎のままである。
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西暦2014年5月1日午前9時、西新井大師付近の道路を占拠したステージでは、謎の第3勢力とも言える女性アイドルが現れ、マジェスティック・バトルに乱入したのである。乱入に関しては、歓声をあげる観客もいるのだが…。
【あのアイドル、国籍的には黒船か?】
【海外勢アイドルが、リスクの高いマジェスティック・ウェポンに興味を持ったとは思えない】
【海外勢は力技とも言えるような宣伝は仕掛けるのに、ARゲームを全体的にスルーしているのが気になる】
【国籍と言っても名称を見る限りは架空の名称だ。あるいはファンタジー世界から来たチートの使い手みたいな箇所を表現したいのかもしれない】
【実際、海外勢でもARゲームをプレイするプレイヤーは多い。しかし、ARゲームの技術は海外へ輸出される気配がないのは、色々な諸事情があるという話だが…】
(中略)
【ダークネスアイドルの例もある以上、実は日本人というオチもありえるだろう】
【しかし、周囲では実力とルックスが伴わないという話もある】
【超有名アイドルが洋画の吹き替えをやった結果、炎上するような位の認識だな―】
ネット上では、このような認識程度のレベルだった。この評価は、小競り合いが行われていた2週間前の評価である。
【それは、2週間前の評価だろう。今では、実力も一番高い勢力だ。黒船と言って油断は出来ない】
【彼女たちの武器もARウェポンのバージョンアップ版だ。実際の火力は10倍から100倍まで上昇したという話を聞く】
【そんな火力が上昇した物を使ってもいいのか?】
【忘れたのか? マジェスティック・バトルは、チート武装ではない限り使用が許可されているって…】
今の実力はボーイズアイドルの残党や他の超有名アイドルを凌駕していた。ARウェポンの火力もマジェスティック・ウェポンよりは下回るが、市販されている物より10倍以上と言われている。
【マジェスティック・ウェポンはコピー不可という事を聞いた事があるが?】
【コピー不可の認識は間違いないだろう。以前の違法パーツを使ったブーストとは違った方法で火力を上昇させ、マジェスティック・ウェポンに匹敵する火力を生み出したに違いない】
【しかし、今を考えてみると攻撃力のインフレはバトル漫画では良く見かける物だ。マジェスティック・ウェポンというリアルチートの大火力武器が現れた事で、他のARウェポンの技術革新が生まれたという話も聞いたが…】
【確かにARウェポンのセキュリティ関係、セーフティーシステム周りはマジェスティック・ウェポンが出てから進歩した技術だ】
【皮肉な事に、超有名アイドルやBL勢等にとっては敵対勢力であるマジェスティック・アイドルが、ARウェポンの技術革新を生み出したというのか】
マジェスティック・アイドルの出現は、ARゲームのルール改訂、チート武器の明確的な使用禁止を記載、超有名アイドルの宣伝を目的とした試合の禁止等の動きを生み出した。
「黒船来航と言いたい所だけど、実際は違うみたいね」
第3勢力アイドルが乱入したのは、黒翼リンのバトルだった。しかし、リンは対戦相手のボーイズアイドルを撃破している為、バトルが中断されることなく挑戦者が乱入という形となった。
〈我々としても、ボーイズアイドルは邪魔な存在。それを消してくれている事には感謝している。しかし、本当に邪魔なのはお前たちなのだ、マジェスティック・アイドル!〉
「ARバイザーに翻訳文? まさか、本当に黒船の勢力なの?」
リンは、革命・神話を火縄銃状態のままで構えようとしたが、それとは別に彼女が付けているARバイザーには翻訳文が現れたのである。これが意味する物、それは対戦相手が日本人以外に他ならない。話している言語も、日本語の〈それ〉とは全く異なる。
〈我々のいる国でもボーイズアイドルが輸出されて人気を得ている一方、本国で人気のあったアイドルは次々と支持を失い、遂には引退をしてしまう道に追い込まれた―〉
〈その一方で、国をあげたアイドルプロジェクトも立ち上げられたが、その結果は見るも無残な物となった。結局、アイドルという技術では超有名アイドル商法を生み出した日本に白旗をあげなければならないらしい〉
「確かにアイドルという分野では日本は特化しているわ。しかし、それは莫大な大金を投資して生み出され、ファンを株主か何かと勘違いしたような歪んだ存在だった―」
「本当の意味で夢と希望を与えるアイドルは、3次元では絶滅したと言っても過言ではない。超有名アイドルのやり方に失望したファンは、全て2次元の世界へ消えてしまった。そして、BL勢のような勢力を生み出すきっかけを作ってしまった」
〈それは違う。何故、日本はアイドルに特化した国であるのに、自分達のアイドルに自信を持てない? 彼女達は絶対的な支持を受けているのではないのか?〉
「超有名アイドルは日本にとって、黒歴史同然のアイドルよ。賢者の石は知っているでしょう? あれと同じ物を超有名アイドルは生み出そうとした! 過剰に利益を得ようとして〈全ての資産〉を強奪しようというような考えは、コンテンツ業界ではあってはならない事なのよ!」
〈賢者の石? それは魔法やファンタジーの世界のアイテムです。それが現代に存在するとは考えられない〉
謎のアイドルとリンの対話は続く。そして、リンは彼が〈超有名アイドルとキサラギの争い〉に利用された犠牲者なのでは…と次第に考え始めた。その次の瞬間には、革命・神話の引き金を引いていた。
「こいつの考えは―しまった!?」
アイドルのARメットが破損し、翻訳文と思われていた物を発信していた物の正体も明らかになった。その正体は、BL作品勢のネットユーザーで、リンは彼女の顔に見覚えがなかったのだが…。
「あいつは確か、某作品の原作ブレイカーSSを100作品以上も出している作家だ。あの人物の小説タグには〈続きを待機〉等のタグが並んでいたが、自作自演疑惑もあったから怪しいと思っていた! やっぱり、そう言う事か」
彼女の正体を堂々と公表しているのは、ARインナースーツにバイカーグローブをした暮羽茜だった。どうやら、彼女はリンの応援という事で駆けつけただけで、特に試合へ参戦していなかったらしい。
「それならば、手加減をする必要はないか」
リンは革命・神話の日本刀モードでARウェポン・シャドウを真っ二つにし、試合はリンの勝利で終わった。
「BL勢の親玉は逮捕されても、残党は未だに行動を続けている。今は、コンテンツ業界の正常化を行う為にも」
ふと空を眺めるリンは、このような小競り合いがあと何回位続くのだろうか…と考えていた。コンテンツ正常化を巡る戦いは、始まったばかりである。
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同日午前9時30分、草加市にいたのはマジェスティック・アーマーを装着した西雲だった。それに加え、ディヴァインアークの姿もある。
「あなたの正体、それはボーイズアイドルのリーダーで間違いない?」
『何を言い出すと思ったら…。それは違いますよ。仮にボーイズアイドルのリーダーだとしたら、あの場所とは別にサーバーを置くでしょう―』
西雲の発言を聞いたディヴァインアークは、突然腹を抱えて笑いだした。それから数秒の後、彼女の発言を完全否定する。
『それに、自分がボーイズアイドルのリーダーだったら、親機サーバーの場所を警察に横流ししたりはしませんよ』
「横流しって、どういう事なの?」
ディヴァインアークの一言は、西雲に衝撃を与えた。何と、彼は親機サーバーの場所を警察に情報提供していたのである。
『全ては超有名アイドルの手の中で踊っていたのですよ。我々も、マジェスティック・アイドルも…』
「つまり、衰退したと思われていた超有名アイドルは、影で権力を振りかざして都合のよい世界に作り変えようとしていた?」
『その答えでは50点ですね。確かに影で権力を振りかざし、自分達の意思に従わない勢力を排除していたのは事実です。しかし―』
西雲の回答に対し、ディヴァインアークは50点と答える。そして、彼はメットを脱いで西雲に素顔を見せる。
「アイドルファンの中には、超有名アイドル商法を賢者の石と考えたりすると考える人物もいるのですよ、ここに」
ディヴァインアークの素顔を見た西雲は想像を絶するような衝撃を受けた。両目が緑、黒髪のセミショートだが後ろ髪は若干長い…。その顔には西雲も見覚えがあったからだ。
「空野雪華、あなたは確か数ヶ月前から行方不明になっていたって…」
空野雪華、彼の職業はWeb小説家である。小説家という肩書はあるものの、その売り上げで生活をしている訳ではない。生活の糧は、ARウェポンの公式大会で得られる賞金がメインだった。その他にもあるような気配だが、お察し下さいという気配がする。
「自分の書いたアカシックレコードをベースにした小説が、予想外のヒットをした関係で姿を消しただけですよ。コレとは関係ない」
空野が言うコレとはマジェスティック・ウェポンの事である。つまり、彼が行方不明になった理由は小説のヒットで他勢力に狙われると考えていたからだ。
「姿を消すのに都合がよかったのが、ダークネスアイドルだったわけね?」
「その後の事は、あなたも大体把握できているでしょうから省略します。ダークネスアイドルという隠れ蓑を見つけたのも束の間、今度は別の問題が発生した」
「別の問題?」
西雲が別の問題と空野が言った事に対し、空野はスマートフォンを取り出し、あるニュース記事を西雲に見せる。
《超有名アイドルプロデューサー、総理大臣に1000兆円以上を政治資金として手渡す。日本を超有名アイドルだけの国にする為の地ならしか?》
このニュース記事自体は虚構サイトの物であり、真実ではない。しかし、これと同じような事は現実になりつつあった事は、ダークネスアイドルの一件で分かっていた。
「その記事なら見た事があるわ。でも、大勢のユーザーが記事に釣られて嘘のニュースを拡散する事になった」
「その通りだ―」
再び、空野はメットを被る。そして、ディヴァインアークはスマートフォンで何かのメッセージを何処かへ送信している。
『超有名アイドルが衰退する事になった真の理由、それは虚構のネタニュースを本物と信じ込んで大量に拡散させてしまった事による事件だった。それは、情報操作禁止法を可決させる事で防げた可能性も否定できない』
その一言だけを残し、ディヴァインアークは何処かへと向かってしまった。方角的には遠くへ向かうような流れではないと思うのだが…。
「過度な法律による規制は、超有名アイドルによるディストピアのような世界を生み出す火種になる。そして、それは新たな魔女狩りを生むきっかけになるかもしれない」
西雲は走り去ろうとしているディヴァインアークに伝えるのだが、そのメッセージが伝わったかは分からない。
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5月2日午前8時、舞浜にある超有名アイドル事務所及びダークネスアイドルの事務所があった場所では、警察の捜査が行われていた。
「ありました!」
調査員の一人がナイトシェイドの部屋に隠し扉があるのを発見し、そこからパソコン用のサーバーが10台も押収されたのである。
「中身の調査は警察へ持っていかなければいけないが、これはスパムメールを介したパソコンの遠隔操作事件や脅迫事件等の未解決事件も解決する可能性があるだろう」
別の調査員は、サーバーの親機が発見された事で未解決事件もいくつか解決するのでは…と考えていたが、このサーバーには〈一部の特定情報〉が抜かれた後だった事が、数日後の調査で判明する。
それでもサーバーを運用していたのが元超有名アイドルの芸能事務所で、原作ブレイカーであるBL勢力に押し負けた事で、何としてもBL勢力を規制しようと裏で工作をしていた事が警察の調査で判明し、一部週刊誌で報道されていた事が現実になった瞬間でもあった。
「これで、1勢力とは決着がついた事になるのか」
警察の同行を遠くから見ていたのはイージスだった。マジェスティック・アーマーを装着した状態で様子を見ていたのだが、これには超有名アイドル勢と遭遇したという事で警察の妨害を考えていた勢力を一掃していたのである。
「他にも同じような考えに到達する勢力は現れる。そして、賢者の石構想も撤廃された訳ではない」
イージスは、再び賢者の石構想に手を出して全ての資産を独占しようという人物が現れる可能性を懸念していた。
『全ては、ここから始まる』
イージスはメットのバイザーを閉じ、再び姿を見せた超有名アイドル勢の残党を警察に近づけないようにガードをしている。
『ここから先へ進めば、政府は必ず超有名アイドル規制法案を生み出すだろう! そうなれば、今度こそ日本はコンテンツ鎖国となる事は避けられない!』
イージスの訴えを受け入れ、退却する勢力もいるのだが、それでも受け入れずに強行突破しようという人物は数人いた。
『仕方がないか―』
イージスが、マジェスティック・エクスカリバーを構え、大型剣で突撃すると誰もが思っていたが、剣が複数に分離し、強行突破をしようと考える超有名アイドル勢のARウェポンに向かって集中的に剣が飛んできたのだ。
『マジェスティック・ウェポンには、こういう使い方もあるという事だ!』
その後、強行突破を考えた超有名アイドル残党は壊滅、彼らの計画も警察によって暴かれる事になり、そこで新たな動きが出てくるのだが…それは別のエピソードになる。
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同日午前10時、秋葉原のステージには神咲佐那の姿があった。別のアイドルグループとバトルを行った後で、こちらに関しては神咲が勝利している。
【これで、昨日の分を含めると10連勝か。途中で別のチートアイドルやBL勢に連勝をストップされる結果にはなったが…】
【違法パーツやシステムを使用せずに勝利したアイドルは、未だに0組というのも凄い気配がする】
【これが、マジェスティック・アイドルの中でも最強とも言われる神咲の実力なのか?】
ここ2週間の成績などを見ると、神咲がマジェスティック・アイドルの中ではトップクラスの強さを誇っているように見える。実際、ランキングトップという動かぬ証拠もあるのだが、それ以上に…。
【彼女は、ここ数週間を含めて成長したように見えるのかもしれない】
【以前の彼女だったら、〈BL勢は根絶する〉みたいな流れもあったからな】
【一体、彼女を変えたのは…】
神咲を変えたのがマジェスティック・バトルであるのは間違いのない一方で、もっと別の物が彼女を変えるきっかけになったのではないか、と考える人物もいた。
「私は負けない!」
一度脱いでいたメットを再び被り、エターナル・スラッシャーを構えなおした。対戦相手は5人組で、ARウェポンの形状からもボーイズアイドルと思われる。観客も、その認識で一致していた。
『我々はあきらめていない。超有名アイドルという日本をゴリ押しで支配しようとする勢力を滅ぼし、BL作品が日本で―』
ボーイズアイドルと思われた勢力、その正体はBL作品勢だったのだ。しかも、話を聞く限りでは原作ブレイカーに属するBL勢らしい。
『あなた達は何も分かっていない。マインドコントロール的な情報拡散では、作品の本当の良さは理解できない。それを一連の事件で学習したのではないのですか?』
神咲はエターナル・スラッシャーをインフィニティ・ソニックへとモードチェンジさせ、その一発で即座にBL勢を沈黙させた。かかった時間は、わずか1分弱。
同日午前10時30分、ある人物が神咲のいるフィールドへと乱入してきた。その人物は、何とディヴァインアークだった。
『1対1で決着を付けたい』
ディヴァインアークの方は、大型ハルバートのコール・オブ・カオスを構えているが、一部のARアーマーはパージされている。そして、そのアーマーから姿を見せたのは青色のクリスタルで構成されたマジェスティック・アーマーだったのだ。
『あなたの正体は、もしかして…』
神咲は彼の正体に関して、ある程度の予想が出来ていた。あのマジェスティック・アーマーは別のARゲームで見覚えがある。
『君の場合は、このスーツを見覚えがあるか』
ディヴァインアークはメットを脱ぎ、神咲に素顔を見せる。そして、神咲は「やっぱり」と言いたそうな顔で彼を睨みつけた。
「どちらにしても、超有名アイドルのディストピアを崩す為にも、この手段を使わざるを得なかった。君ならば分かるだろう。男性アイドルファンだった君なら―」
『でも、純粋なアイドルファンにとっては迷惑その物でした。何故、このような手段を取らないといけなかったのですか?』
「超有名アイドルファンは、タニマチやフーリガンのような存在が大半を占め、更にはスポットライトが当たるのも、そう言ったファンしかいなかった。それを踏まえれば、これが現実である事は分かるはずだが」
『アイドルファンの中には全ジャンル共存に対して理解を示してくれる人もいました。今こそ、全てのジャンルが理想のライバルとしても存在出来る世界を―』
「それこそ、理想論にすぎない。自分の理想ばかりを押し付け、最終的には他のファンを自分達に被害が及ばないようにする為の盾にしか思っていないBL勢は、根絶されて当然の報いを受けているのだ!」
『だからと言って、全ジャンル共存を最初から考えずに切り捨てるなんて!』
「全ジャンル共存を考えるならば、まずはフーリガンや狂信者に近いファンを全て根絶、法律で狂信者を二度と生み出さない土台を作る方が先だ」
『法律で縛りつけたとしても、必ず法の網を潜り抜ける勢力は必ず出てくる! だからこそ、過剰な法律は同じような悲しみと憎しみの連鎖と超有名アイドルによるディストピアを繰り返すだけです』
2人の対話は続く。そして、間もなくバトルが始まる事を現すラウンドコールが流れた。
『話は平行線か。ならば、このバトルで全ての考えが無駄である事を証明させる!』
そして、ディヴァインアークはメットを被り直す。その後に指定された楽曲が流れ出したのだが、スクリーンに表示された曲タイトルは…。
《『私は、非常に幸福である』 龍星》
この曲のジャンルは、何とハッピーハードコアだった。周囲からはどういう事なの…という雰囲気もあったのだが、ここはマジェスティック・バトルである。流行りの楽曲だけを流すような音楽番組とは全く違う。
【まさかの曲ジャンルすぎる。マジェスティック・バトルの場合は、トランスやスピードコアが主流と聞いたが】
【ハッピーハードコアの語源は、これか。〈URL省略〉】
【なるほど、そう言う事か】
【しかし、ARバトルでもハードコア系を選ぶようなプレイヤーは決して多いとは言えない。そんな中で、このジャンルとは…】
【考えてみれば、龍星と言えばハンズアップも作っている人物だ】
【そして、前のバトルではハンズアップを選曲していた。もしかすると、神咲は龍星のファンなのか?】
「まさか、この曲を選択する人物が出るとは!」
「おそらく、神咲だな。彼女は、この曲をお気に入りだという話だ」
「これは勝利フラグの予感がする」
「分からないぞ。ファーストを選んだか、セカンドを選んだかで戦略も変わる。あるいは相手が選曲した可能性も否定できない」
曲名を見た途端、周囲からは歓声が沸き上がったのだ。この反応に驚いていたのは神咲の方だった。彼ならば、超有名アイドル楽曲のゴリ押しも考えられたからだ。
『それは私が指定した曲―』
神咲が自分の指定曲と被った事に驚いていた。しかし、マジェスティック・バトルでは楽曲の被りも認められており、それによってどちらがファーストを取ったのかを隠すという役割もある。
『不服か?』
ディヴァインアークはコール・オブ・カオスをフィンユニットとハルバートに分離、攻撃態勢に入った。
『あなたなら、超有名アイドルの曲を流すと思っていた』
神咲もインフィニティ・ソニックを構え、お互いに戦闘態勢に入った所で曲が流れ出し、バトルが始まった。
Aパートを聞くと、ハードコア独特な音色やドラム音も聞こえる気配がする。それに加えて、サンプリングボイスを使用した声ネタとも言うべき部分も散見される。
『あなたは、どうしてこの曲を?』
『さぁ、どうしてだろうな?』
神咲が曲を選んだ理由を聞こうとしても、ディヴァインアークは答えるような気配はない。そして、それと同時にフィンユニットが神咲に襲いかかる。その動きを見切って銃弾で落とそうと神咲は試みるが、フィンユニットの強度が高い影響で撃墜は出来ない。
〈私は幸福である。この極限的な状況が特に―〉
サンプリングボイスは英語だが、日本語訳をしようとすると、このような感じだろうか?
『あなたは音楽業界をどう思っているの?』
『自分は音楽には明るくない。せいぜい、音楽ゲームの楽曲や同人シューティングゲームの曲を聴く程度だろう』
『そんな人物が、どうして超有名アイドルに…』
『どちらにしても、あの大量消費型に加えて賢者の石を連想させるようなやり方が許せなかった。それだけのことだ』
ディヴァインアークのコール・オブ・カオスが、フィンユニットを発動させる。そして、ブーストパワーを加えたハンマーで神咲に襲いかかるが、それを神咲は銃弾1発だけで受け止める。
「おいおい、銃弾だけであのハンマーを受け止めるのか?」
「厳密には銃弾でハンマーを弾き飛ばしたというのが正解かもしれない」
「あれだけのスキルを、この短期間で身につけたというのか?」
周囲の観客も驚きを隠せない。神咲の能力が異常なのか、それともディヴァインアークの能力が神咲に対応できていないのか?
そして、曲も終わるタイミングで動き出したのは神咲だった。既にマジェスティック・ウェポンはエターナル・スラッシャーに切り替わっている。
『私は時間がかかってでも、全ジャンル共存を実現させる! それがコンテンツ業界を正常化させる為の最良と言える選択だから!』
エターナル・スラッシャーを振り下ろし、その一閃でコール・オブ・カオスのハンマー部分を真っ二つにする。これを見たディヴァインアークは驚きを隠せないでいた。
『フーリガンや狂信者、にわかファン等も増える状況になっても、規制をせずに共存を訴えるのか!』
ディヴァインアークはハンマーが使用不可となった盈虚もあって、フィンユニットとハンマー部分を分離させたレーザースピアで神咲に対して応戦をする。
『それらも受け入れて、全ての勢力が理解してくれるような世界を作り出す!』
神咲の目つきは本物だった。そして、ディヴァインアークはエターナル・スラッシャーの一撃を受け、そのまま倒れたのである。
この一撃が、新たなジャンルを築く為の第一歩となるのか…それは定かではない。
しかし、一つだけ言える事は、コンテンツ業界で賢者の石のような存在が現れれば、それは既にコンテンツではなく資産を吸収する為だけの存在なのではないか、という事である。
果たして、マジェスティック・アイドルは超有名アイドルやBL勢のような賢者の石を求めようという勢力になってしまうのか?
それとも、彼女達は新たなコンテンツツリーを作る為に突き進んでいくのか?
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西暦2014年5月5日午前11時、秋葉原で巨大モニターを見ていたのは鷲宮奏だった。彼女はマジェスティック・アーマーを装着し、別のバトルに参加した後である。
「いよいよ始まるのね。新たなマジェスティックアイドルが」
巨大モニターには神咲、リン、茜、嶋村五月、西雲のARスーツとは違ったフリフリのアイドルと思うようなコスチュームで歌を歌っていたのである。
新たなマジェスティック・バトル、それはバトルで流す楽曲やバトルで使用可能なARウェポンを一般公募し、プレイヤー目線で新たなバトルを盛り上げようというイベントを加えたバトルだったのだ。
そして、気が付いてみればリアルチートと言われていたマジェスティック・ウェポンは封印こそされてはいないが、威力はARウェポン合わせで弱体化したのでは…というネットの声が浮上する。
これが一体何を意味しているのか、それは誰にも分からなかった。
「これが、私たちの新たなステージ!」
5人が声を合わせて叫ぶ。その後、会場からは大歓声が響いたのである。




