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マジェスティック・アイドル  作者: 桜崎あかり


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6/7

第6話:崩壊するディストピア-Collapsing dystopia-

※小説家になろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っています。 それに加え、今回は次回予告も少し変更されています。


※6月20日午後10時32分付:話数ナンバリングを修正。7話→6話


>更新履歴

・5月23日午後6時28分付

前書き簡略化、行間調整。性格になっていた1か所を正確に修正。

 西暦2014年1月10日、千葉の舞浜上空に現れた無数の宇宙船が飛来する。


 その宇宙船に乗っていたのは、ダークネスアイドルと名乗る宇宙で活動をしているアイドルだった。


 日本政府は、さまざまな議論や検討等を行った結果、彼女達に『ダークネスアイドル特区』を認める事を決める。


 その一方では、一連の流れに超有名アイドルの影があるのでは…と考える人物がいた。彼の名はイージス、またの名を黒騎士と言う。


 彼が開発したマジェスティック・ウェポンは人知を超える力を持っているのだが、その真相は明らかではない。


 ロケテストが行われていたARゲーム〈アイドル・バトル〉は、そのゲーム性やシステム等からジャンル隔離が行われる事となり、マジェスティック・バトルとして運営される事になった。


 そして、マジェスティック・ウェポンを手に戦う5人のアイドルを〈マジェスティック・アイドル〉と呼んだ。


 エクストリームARスポーツとも呼ばれるようになったマジェスティック・バトルは、超有名アイドル商法等に疲れた市民からは絶賛されるという予想外の展開を生むのである。


 そんな中で活発な動きを見せたのは、BL勢だった。彼らは、超有名アイドルの残党がダークネスアイドルであるという情報を何処かから掴み、動画として公表するという策を取った。


 BL勢の暴走はとどまる事を知らない。遂には、ダークネスアイドルハンター制度をでっち上げる等の強行手段を取るようになったのだ。


 果たして、彼女達の暴走は何処まで日本を混乱させるのか?


 これ以上の暴走を招く事はコンテンツ業界の破滅を意味すると考えたイージスは、表舞台へ再び姿を見せる。


 その手にあった武器は、何と7つ目のマジェスティックウェポンだったのだ。


 ネット上でも誰もが信じて疑わなかった「マジェスティック・ウェポン」が6つあるという事実。それが、一気にひっくり返されたのである。


 正確なソースがなければ情報を信じられないという人物まで現れ、ネット住民の誰もが疑心暗鬼となっていた。


 この混乱は、いつまで続くのだろうか…。


###


 西暦2014年4月16日午後1時30分、この時に報じられた多くのニュースがネット上を駆け巡り、新たな火種を生む流れとなった。


【RE:マジェスティック・ウェポンが6つという説は嘘!? 新たなマジェスティック・ウェポンを秋葉原で確認される】


【RE:7つ目のマジェスティック・ウェポンは〈マジェスティック・エクスカリバー〉と名称も判明】


【6つが事実だと思っていた。実際にも、マジェスティック・アイドルは5人しか確認されていない】


【6つ目は、鷲宮が使用していた物か。しかし、7つ目の持ち主は意外としか言えない】


(中略)


【予備で存在したとは考えにくい。やはり、何かを恐れて6つという嘘情報を流したのかもしれない】


【マジェスティック・ウェポンは適格者ではないと、威力が激減するという話を聞いた事がある。それを踏まえても嘘情報を流した理由が分からない】


【適格者以外でも使用できる改造をする、量産型やコピーを作る、転売すると考えれば色々と出来る可能性もあるが?】


【コピーに関してはプロテクト関係で不可、転売もネット上でハイパーコンピュータが24時間監視していて無理だろう。違法パーツを出品しようものなら、30分で牢獄行きだ】


 マジェスティック・ウェポンの話は広域的に話題となった。中でも、適格者以外でも使えるのかという疑問は他のユーザーも考えていたらしく、それに回答したつぶやきは1万以上も引用される事になった。


【RE:ダークネスアイドルハンター制度を主導していたのは、BL作品以外のカップリング勢力が生み出したでっち上げと判明か?】


【スパムメールでも《超有名アイドルと出会える》的なフィッシング詐欺もあったばかりだ。その類と思って、見向きもしなかったのだが…】


【まさか、この制度その物が詐欺グループの生み出した物をBL勢が利用していたというのも考えものか】


【BL勢が全ランキング制圧の為に資金を確保する為に、ハンター制度を悪用したのかもしれない】


【賞金首のアイドルに関しても、別の勢力が賞金をかけていたようなメンバーばかりだったのも怪しいと思っていた】


 ダークネスアイドルハンター制度に関しては、主にスパムメールや振り込め詐欺系のサイトで話題となり、新たな超有名アイドル詐欺として警察の方にも調査要請を出す動きにもなった。


【RE:政府がハンター制度を摘発しなかったのは、別の勢力を釣り上げて魔女狩りをする為か?】


【既にBL勢を釣り上げたな】


(中略)


【それは自分も思った。自分達が良ければ他人を平気で切り捨てるような存在、それが暴走したBL勢力の正体か】


 政府がハンター制度の摘発を恐れていた件に関しては、盛り上がりに欠ける流れだったのだが…BL勢が全ての元凶だった事を裏付ける結果になった。


【RE:アカシックレコード系の電子書籍版が100万ダウンロードを記録。マジェスティック・ウェポン重要か?】


【重要? 需要のミスでは?】


【おそらくはコピペミスの可能性もある。〈マジェスティック・ウェポンが重要なキーワードか?〉というのが正しいかもしれない】


(中略)


【正式なソースが見当たらない。もしかすると、釣り記事の可能性もある】


【釣りだったとしても、他の大手電子書籍サイトでは100万ダウンロードに関して触れている場所もある。完全な偽物とは考えにくい】


 電子書籍版アカシックレコードに関しては、ソースを巡って議論が展開されたが、後に公式サイトで告知されている場所が発見され、それが正式なソースになったのである。


 そして、この30分後に超有名アイドルとBL勢力の首謀者が警察にスピード逮捕される。この状況を予想出来た人物は、ごくわずかな人間に限られていた。


#####


 西暦2014年4月16日午後1時40分、南千住でバトルを展開していたのは、ボーイズアイドル勢と嶋村五月しまむら・さつきだった。


 バトルに関しては、意外な事にボーイズアイドル勢が有利という展開となっていた。当然だが談合試合の類という訳ではない。向こう側も対策を考えてきたという事だろう。


「マジェスティック・アイドルの弱点、それは一撃離脱ゆえに防御パラメーターが低いという事だ! 莫大な火力で一点集中すれば撃破も可能になる」


 ボーイズアイドル側は巨大な槍にチェーンソーを取り付けたような武器を用意し、武器の火力で押し込もうと考えた。その為に彼らが導入した物、それはマジェスティック・バトルでは禁忌とも言える存在…。


《システム上にエラー発生。マジェスティック・バトルを一時中断します―》


 ボーイズアイドルが例の武器を使用後に、謎の表示が各所に現れて試合が中断される。クラシックアレンジの曲は嶋村が指定した物だが、こちらは流れ続けている。一体、何が起こったというのだろうか?


『そう言う事ね―』


 強化されたマジェスティック・アーマーを装着していた嶋村には、何が起こったのか把握できていた。マジェスティック・ウェポンに匹敵する火力を受けると即座にダウンするという弱点が完全に克服された訳ではないが、別のシステムを装備して実質の強化がされている。


 その際に取り付けられたチートジャマーシステムによって、チートの類が無効化されるようになっている。しかし、このシステムでも無効化できないほどのダメージがマジェスティック・アーマーに加わる事は通常考えられない。それが意味する物とは、一つしか存在しない。


《ボーイズアイドルチームのARウェポンに違法改造が確認されました。ステージを中止いたします―》


 その予想は見事に的中した。ボーイズアイドルに実装されていた物とは、違法改造されたARウェポンだったのだ。チートパーツ自体の持ち込みが禁止されているマジェスティック・バトルだが、稀にプロテクトを外した違法パーツの存在もいくつか確認されている。


 それが、持ち込まれた事が意味するのは、ARゲームのガイドラインが機能していない事を意味している。運営が買収されたのか、それとも…?


「何故、マジェスティック・アイドルのような存在は認められるのに、我々は認めようとしない!」


 ステージの中止が指示されているのだが、それを無視してボーイズアイドルが例の武器を振り下ろす。しかし、その武器からはビーム刃が消え、やがてARウェポンの機能も停止した。


『あなた達が使用している力は、マジェスティック・ウェポンではない。それに似せて作られた偽物よ!』


「偽物であろうと、マジェスティック・アイドルを倒せれば、それでいい。この世界は結果こそ全てなのだ!」


 嶋村が振り下ろされたARウェポンを弾き飛ばし、その直後に目の前にいた相手を弾き飛ばす。


『結果が全て? 違法パーツに手を染めているような勢力が堂々と言えるような単語ではないのは、誰の目から見ても明らかよ』


「アイドルIDプレートは、ここにある! これを見ても違法に参加しているとでも思うのか?」


 吹き飛ばされた人物とは別のボーイズアイドルが見せた物、それはマジェスティック・バトルへ参加するのに必要とされているアイドルIDプレートというカードなのだが、それを見た嶋村は若干あきれ返っていた。


 そして、しばらくするとARアーマーを装着した謎の部隊が入場ゲートから姿を表す。カラーリングを見ると、警察のパトカーを思わせる感じがする。その後、彼らはボーイズアイドルの周囲を取り囲み始める。ボーイズアイドル側は何が起こっているのか把握できていないが、嶋村には把握できているようでもあった。


「偽造IDでのマジェスティック・バトルへの参戦は運営によって禁止されている! 抵抗をするようであれば、こちらも容赦はしない。繰り返す―」


「IDが偽造だと? 一体、これのどこが偽造なのだ? 我々は事務所から本物だと言われて渡されたのだ!」


 マジェスティック・ガーディアンと肩にペイントされたARスーツを装着していた人物がボーイズアイドルに向かって警告をする。しかし、ボーイズアイドル側は偽造IDに関して否定をした。これは事務所からもらった物であり、本物だと思っていた…と。


「マジェスティック・バトル専用のアイドルIDプレートは、運営が認めたアンテナショップ以外での入手を認めていない。それに、提示したIDが偽造だというのは既に判明している!」


「既に? まさか…」


 ここでボーイズアイドル側は、自分達の行為に致命的なミスがあった事に気づく。それは、IDを迂闊にも見せてしまった事である。


「偽装IDでのエントリーはARゲームそのものに対する信用を失墜させるだけではなく、他の同じジャンルに対しても不信感を招く事になる! よって、マジェスティック・バトルへの永久追放を申し渡す」


 マジェスティック・ガーディアンの口から出た言葉、それはボーイズアイドル側にとっては想像を絶するような展開だった。最終的に永久追放されたボーイズアイドルは、その後に不正ID入手等の罪で警察に逮捕される事になった。そして、これは速報でも報道される事になる。


『これが、BL勢のやり方。これではまるで、利益至上主義型のアイドルと全く同じ…』


 そして、嶋村はマジェスティック・アーマーのメットを脱ぎ、ある結論に至った。


「超有名アイドルだけではなく、カップリング勢や文化、それその物を駆逐するしか現状打破出来る方法はない」


 この結論に至った人物は嶋村のみであり、他のメンバーは何とかして和解の道をたどろうと考えていた。


###


 その中でも、同時刻に西新井でバトルをしていた神咲佐那かんざき・さな暮羽茜(くれは・あかね)は…。


「私はあきらめない! どんなジャンルでも和解できる道は存在している。最初から出来ないなんて思わない!」


 茜がゴッド・アームを振り下ろしている相手、それは緊急指令を受け取って西新井へやってきたディヴァインアークだった。


『まさか、緊急指令を受けた先でお前に遭遇するとは思わなかった!』


 ディヴァインアークは、何と素手でゴッド・アームを受け止めて茜を弾き飛ばしたのである。それを見た神咲も衝撃のあまりに無言になる。


「あなたの目的は何なの!? ダークネスアイドルを利用して、更にBL勢も利用して、全てのコンテンツを無法地帯のようにする気なの?」


『無法地帯だと…笑わせるな! 私の目的は2大勢力を消滅させた後に新たなコンテンツツリーを作る事だ。超有名アイドルでは世界の大物アーティストに太刀打ちする事は事実上の不可能に近い!』


「それこそ、和解の道を閉ざすような発言だという事に、まだ気付かないの? 日本のアイドルでも世界にファンが存在するアイドルもいる。それを考えないで、全てを消滅させるなんて!」


『ならば、BL勢力にも同じ事が言えるのか? 原作を無視して自分達の妄想だけを押しつけるような作品で日本のランキングを全て独占させる行為こそ、ディストピア以外の何物でもない!』


「そういった考えを改めない限り、何度でも同じようなアイドル戦争は起こる! その連鎖を何処かで止めなければいけないのよ」


『知ったような口を言うな! お前も同じようなBL勢で有名だった作家なのだろう?』

茜とディヴァインアークの会話の中に、まさかとも思えるような単語があった。茜の正体、それは過去にとあるBL作品のWeb小説で有名な作家だったのだ。


「確かに自分のやった事が許されるとは思えない。そして、他の人間がやっている事に対しても反論する事は出来なかった。だから、現状のBL勢に正義はないと考えて、マジェスティック・アイドル側に協力する事にしたの」


『だが、マジェスティック・アイドルも強大な力を振り回して日本を混乱させるだけの組織にすぎなかった。違うのか?』


「私はそうとは思わない。確かに、マジェスティック・アイドルはリアルチートとも言える力を持っているけど、プロデューサーの鶴の一声でチートとも言える力を振りかざす超有名アイドル勢とは違う!」


『どちらにしても、やっている事は我々と変わらない。ならば、ダークネスアイドルの計画を―』


 2人の激闘が展開される中、タイムアップを示す表示が周囲のスクリーンに表示される。結果として、この勝負は引き分けとなった。


『これだけは言っておく。永久不変という物は裏工作等によって永遠に頂点に君臨するような存在に対して使われる。この世界には、この世界に相応しいルールが必要なのだ』


 そして、ディヴァインアークは別の場所へ向かうべく、進路を草加方面へと進路を取る。茜の方も別の用事があるという事で、何処かへと姿を消してしまった。


「私は、あの場で何もできなかった」


 メットを脱ぎ、汗をタオルで拭き取った神咲は考えていた。ディヴァインアークの言う事にも間違った事はなかったからだ。新たなコンテンツツリーを作るという事、今のままでは海外に太刀打ちできるアイドルがいないという事…。


 一方で、茜が実はBL作品の作家だった事も初めて知った。BL勢は自分がスルーし続けていた勢力でもある。しかし、現状のマジェスティック・アイドルは超有名アイドルだけではなくBL勢力も敵に回している。敵の事を何も知らないで根絶を続行しても良いのだろうか?


 そんな悩みを抱えていると、神咲の目の前に一人の人物が姿を見せたのである。しかも、マジェスティック・アーマーを装着した状態で。


「マジェスティック・アイドルは、超有名アイドルを滅ぼす為の力でもなければ、BL勢力を根絶する力でもない。それは、過去のアイドル戦争を繰り返すだけになるわ」


 その人物は、何と鷲宮奏わしみや・かなでだった。予想もしない人物の出現に、会場の観客も衝撃を受けている。


「アイドル戦争?」


 神咲はアイドル戦争という物が何なのかまでは分からなかった。ネット上では〈超有名アイドルとキサラギの争い〉という別名称も存在するという話は聞いた事があるのだが…。


「そして、その連鎖は何処かで断ち切らなくてはならない。物語に、いつか終わりが来るように…」


 次の瞬間、鷲宮はナイトバード・フェザーを展開した。


「戦いは避けられない…。そう言う事ね」


 神咲は再びメットを装着し、エターナル・スラッシャーを構えた。


###


 同日午後1時45分、嶋村と同じようなマジェスティック・アイドルとボーイズアイドルの構図が数か所で展開されていた。それだけではなく、ダークネスアイドルとボーイズアイドル、ダークネスアイドルとマジェスティック・アイドルという構図も確認出来る。


 これが意味する物、それは過去に行われたアイドル戦争の繰り返しになるのでは…という懸念だった。しかし、これにかんして週刊誌やマスコミ等が報道する事は一切なかった。逆に『アイドル戦争はなかった。悪いのはBL勢の暴走であり、超有名アイドルは無罪である』という報道が多い。


【自分の行った事を棚上げにして、このような報道をするとは】


【結局、BL勢のディストピア展開が数日で崩壊して、日本が超有名アイドルの支配下に戻るだけという結果なのか?】


(中略)


【光ある所に必ず闇がある…。つまり、超有名アイドルにも光と闇が存在するように、BL勢にも光と闇があるという事か?】


【だからと言って、治安が悪化するような事を平然と行うBLカップリング勢の暴走を放置するのか?】


 ネット上では、この時間帯に放送されている情報番組を見たユーザーによるタイムラインが目立つ。その中でも、超有名アイドルは無罪であると断言している番組に対して何かを隠していると考えているユーザーの発言がその中でも目立っている形になっていた。


【あれだけの犯罪行為に近い事をしている以上、警察も黙って放置するわけにはいかないだろう。BL勢の暴走で治安が悪化というニュースが流れれば、スポーツイベントの招致も難しくなる】


【それは一理ある。しかし、彼らが対話に応じるかどうかも分からない。もしかすると、強行手段を使うかもしれないだろう】


【もしかして、強行手段にマジェスティック・ウェポンを使うのか?】


【7つ目のマジェスティック・ウェポンでもネット上で衝撃が高かったというのに、8つ目があるというのも考えにくい】


【あれだけの破壊力のあるARウェポンが8つもあること自体、おかしな話だと思う。やはり、7つまでと見るのが正解だろう】


 その一方で、警察がマジェスティック・ウェポンを利用して武力鎮圧するのでは…という意見に対しては、ほとんどのユーザーが否定的な意見である。中でも、あれだけの威力を持った武器が量産できるとは思えないという意見、7つ目のマジェスティック・ウェポンが存在しただけでも衝撃が大きいという意見が半数を占めていた。


###


 同日午後1時50分、西新井では神咲と鷲宮という1対1の対決が行われていたのである。周辺の観客はバトルに発展した経緯よりも、この対決が実現した事に歓喜していた。


「チートの力を振りかざして大金を得ようと考える超有名アイドルに正義は存在しない。彼女達は単純に悪と断定できる! しかし、中には彼女たちの行動を迷惑に思っているアイドルもいる。だからこそ、全ジャンル共存を選ぶ必要性が―」


 鷲宮はタクトを振るうような腕の動作でナイトバード・フェザーを操り、神咲を捕らえようとしているのだが、彼女のスピードが速くて上手くいかないのが現状だった。


『超有名アイドルだけを全て排除すれば良いだけの話なのに、何故、譲歩を選ぶ必要性があるのですか?』


 神咲が超有名アイドルを排除しようという動きには変わりがない。そして、彼女は自分に向かって飛んできたナイトバード・フェザーを弾き飛ばした。


「あなたが、元男性アイドルファンだという事は分かっている。そして、超有名アイドル商法を憎んでいる理由も―」


『なら、どうして止めようとする行動を取るのですか?』


「力でねじ伏せたとしても、アイドル戦争と同じ結末をたどるという事に気付いたのよ。マジェスティック・アイドルとダークネスアイドルの争いも、全ては―」


 鷲宮は神咲を説得しようと訴え続けるのだが、途中で小型戦闘機によく似た形状の飛行兵器が現れ、戦闘は中断する。


「ご苦労だった。鷲宮奏…」


 会場に姿を見せたのは、巨大な戦車型アーマーユニットに乗ったナイトシェイドだった。しかもARアーマーを装備しており、別の意味でも想像以上の火力を手に入れていた。


「ナイトシェイド、どういう風の吹きまわしなの?」


 鷲宮はナイトシェイドを知っているようだ。そして、向こうも鷲宮を知っている。これが意味している物、それは2人が過去に交戦していた事を意味していた。


「過去のアイドル戦争では、別勢力に後れを取ったが、これ以上はやらせはしない!」


 そして、ナイトシェイドが大型キャノン砲である〈ガイア・ブレイカー〉を構えた。しかも、その大きさはアーマーユニットも使用しないと支えられない程のサイズである。そして、そこから放たれたビームも他のマジェスティック・ウェポンに匹敵する威力を持っていた。


「間に合わない!?」


 鷲宮はガイア・ブレイカーの一撃を回避しようとしたが、超高速で向かってくるビームを回避できる手段がない。鷲宮も絶体絶命と思った、その時だった。


 鷲宮の前に姿を見せた人物、それは何とイージスだったのだ。そして、マジェスティック・エクスカリバーをシールド代わりにしてビームを無効化したのである。


「バカな! ガイア・ブレイカーがあっさりと無効化されるのか?」


『マジェスティック・ウェポンをコピーしようと考えるから、粗悪品しか生み出す事が出来ない連鎖を繰り返す! それが超有名アイドルが衰退する事になった決定的な証拠だというのが分からないのか?』


「ダークネス・ウェポンもマジェスティック・ウェポンも元はARウェポンのはずだ! それが、こうも大差がつくはずがない!」


『マジェスティック・アイドルが生まれるきっかけとなった、超有名アイドルには到底分かるはずもないだろう!』


 そして、イージスがマジェスティック・エクスカリバーを再変形させ、グレートソードの形状に戻す。更には、ナイトシェイドに向かって全速で突撃を開始する。


「我々は日本経済を立て直す為に努力をしてきたはず! それが、お前達のような勢力に敗れるというのか」


『マジェスティック・アイドルの作られた理由、それは《アイドルコンテンツ存亡の危機には全力で立ち向かう》事だ! そして、打ち倒すべき相手には違法な便乗商法を繰り返す勢力、転売屋、悪質な信者が含まれる』


「日本経済を救った英雄に対し、お前は刃を向けるというのか!?」


『お前のような存在は英雄とは呼ばない―』


 マジェスティック・エクスカリバーの刃がチェーンソーのように高速で振動を始めていた。そして、その状態で一度ジャンプし、ナイトシェイドの頭上にむけてマジェスティック・エクスカリバーを振り下ろした。


「我々を倒せば、日本経済は永遠に不況の海をさまよう事になる。それでも、お前は超有名アイドルを不要と断言するのか?」


『不要とは言わない。しかし、超有名アイドル商法はやり過ぎたのだ。彼らは地球上のあらゆる資源を独占し、それを永遠に保有し続け用と考えた。その考えは、地球だけではなく全ての世界を崩壊させる』


「しかし、我々がやらなければ日本経済は…永遠に、不況となるだろう。お前達ならば、それを打開できるのか―マジェスティック・アイドル!」


 しとめ損ねたのだろうか、ナイトシェイドのガイア・ブレイカーはイージスに向けられていた。しかし、アーマーユニットの損傷は激しく、その大砲を支えられるような状態ではない。1発撃てば、アーマーが崩壊するだろう。


『打開出来るかではない。我々が超有名アイドル商法や信者の暴走、さまざまな事件から反省点を割り出し、一度コンテンツ業界をリセットする必要性があった。それが、マジェスティック・アイドルを組織した理由だ』


 ガイア・ブレイカーに気付いたイージスは、即座に戦闘態勢をとって発射に備えた。しかし、ガイア・ブレイカーが火を吹く事はなかった。既にARウェポンのブラックボックスが損傷しており、発射が不可能という状態だったのだ。


「お前達は、後悔する―。我々を倒した事で、BL勢が暴走し全てを無に―」


 しばらくして、この言葉を最後にナイトシェイドは気絶、更にはナイトシェイドのゴーグルが真っ二つに割れた。そこから見せた正体は、何と捕まったはずの超有名アイドルのプロデューサーだった。


「これが、賢者の石という錬金術に取りつかれた人物のなれの果て…」


 神咲は再びメットを脱ぎ、気絶しているナイトシェイドを見てふと思った。そして、彼女は姿を消してしまったのである。


 時刻は、間もなく午後2時になろうとしていた。


###


 同日午後2時、ある人物が提供した情報を参考に警察は新宿、綾瀬、日暮里、八王子、横浜にある芸能事務所の家宅捜索を始めた。


「例のサーバーへアクセスした形跡が確認できました」


 例のサーバーとは、少し前に強制捜査が行われたBL勢力が利用していると思われるサーバー施設の事である。ここを強制調査した際、謎の暗号を発見したのだが、その解析を外部へ依頼していたのである。


 わずか30分弱で情報の解析が終わり、謎の暗号を解読した結果として発見した物が複数の芸能事務所が表示された地図だった。


 最初は、この地図に関連性が…と疑問に思った警察だったが、違う事件を調査していた警察官が地図に共通点がある事を指摘、一定の法則が存在する事を突き止める。


 その共通点とは、スパムメールで『アイドルと会える』と騙った詐欺事件で摘発された事務所という事だった。芸能事務所と言っても、今はアイドル事務所として機能している訳ではなく、スパムメールの中継サーバー等で利用されていたらしい。


「このサーバーは凄いですね。海外へ転送してかく乱するよりも、犯人特定が困難になる事は間違いないかと―」


 警官達が持ち出しているサーバーは特殊な物で、国内からスパムメールを転送しても、海外経由やハッキング等を利用するよりも犯人の特定が難しくなるというシステムが使われていたのだ。これには、持ち出し作業中の警察官も感心していた。


「しかし、このサーバーは子機であって親機ではないらしい。一体、どこにあるのか?」


 そんな中で、ある1本の電話が全てを変えたのである。


『木を隠すには森というのを聞いた事があるだろう。探している親機サーバーは舞浜にある』


 このメッセージだけを残して電話を切った人物、それはディヴァインアークだったのだ。しかし、警察はディヴァインアークからの電話とは誰ひとり気付いていない。ボイスチェンジャーで声が変えられているという事もないというのに…。


『何としても、アレを警察に見つけてもらわないと困る―』


 ディヴァインアークがいる場所、それは草加駅近辺だった。そして、彼が発見した場所は大手動画サイトのビルである。サーバールームは草加近辺の各所に太陽発電と共にあるのだが…。


「ここに来れば、見つかると思っていたら…案の定か」


 動画サイトの受付前で待っていた人物、それは背広姿の西雲水希にしぐも・みずきだった。何故、彼女が動画サイトのビルに来ていたのか?


『西雲か。一体、何の用だ?』


「あなたの正体が知りたくて…というのは冗談だけど、超有名アイドルとBL作品を全て黒歴史にしようと考えているのは本当なの?」


『政府が、その答えをもうすぐ出してくれるだろう。それ以上の事は、現状では話せない』


「政府と言うと、情報操作禁止法の事? それとも別の水面下進行中の法案?」


 西雲はディヴァインアークが言う〈答え〉に関して聞きたがっている。しかし、ディヴァインアークも事情があって答えが言えない状況でもあった。


《臨時ニュースをお伝えします。先ほど、日本政府は情報操作禁止法に関して野党の反対多数で否決し、廃案となった事を発表しました。繰り返します―》


#####


 次回予告


 マジェスティック・アイドルがもたらした物、それは全く別のコンテンツ流通を求めていた勢力による大改革を生み出した。


 一方では、ディヴァインアークの行動に不審な個所が浮上する。真の狙いとは、一体何なのか?


 超有名アイドルとマジェスティック・アイドルの戦いは、周囲も予想していた結末が待っていた。


 最終回、『マジェスティック・アイドル』

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