第4話:もう1つのアイドル戦争-Another idol war-
※小説家になろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っています。それに加えて、ピクシブ版で発見された誤植1箇所を修正しております。
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・2015年5月22日午後9時13分付
前書き簡略化、行間調整。
西暦2014年1月10日、千葉の舞浜上空に現れた無数の宇宙船が飛来する。
その宇宙船に乗っていたのは、ダークネスアイドルと名乗る宇宙で活動をしているアイドルだった。
日本政府は、さまざまな議論や検討等を行った結果、彼女達に『ダークネスアイドル特区』を認める事を決める。
その一方では、一連の流れに超有名アイドルの影があるのでは…と考える人物がいた。彼の名はイージス、またの名を黒騎士と言う。
彼が開発したマジェスティック・ウェポンは人知を超える力を持っているのだが、その真相は明らかではない。
ロケテストが行われていたARゲーム〈アイドル・バトル〉は、そのゲーム性やシステム等からジャンル隔離が行われる事となり、マジェスティック・バトルとして運営される事になった。
そして、マジェスティック・ウェポンを手に戦う5人のアイドルを〈マジェスティック・アイドル〉と呼んだ。
エクストリームARスポーツとも呼ばれるようになったマジェスティック・バトルは、超有名アイドル商法等に疲れた市民からは絶賛されるという予想外の展開を生むのである。
それぞれのマジェスティック・アイドルが戦う裏で、ネット上では黒翼リンの正体を巡っての論争が展開されていた。
しかし、これを見て衝撃を受けたのは予想外な事にダークネスアイドル側のディヴァインアークだったのである。
何故、彼がこのニュースに食いついたのか…?
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西暦2014年4月12日午前10時、ネット上では〈とある話題〉で持ちきりとなっていた。
その話題とは、黒翼リンとダークネスアイドルの特使として姿を見せた女性が同一人物であるという物だった。
このニュースに関しては有力ソースが存在したのだが、そのソースに関しても疑わしい箇所が存在するという事で、一つの論争を生み出していた。
しかし、この情報を偽物と疑わない人物も存在した。それは、舞浜で情報収集を続けているディヴァインアークだった。
『なるほど。そう言う事だったのか。通りで、上層部が情報を隠す訳だ』
そして、彼は直接マジェスティック・バトル乗り込む事を考えていた。しかし、彼の行動は目立ちすぎる部分もある。それに加え、ディヴァインアークの行動に疑問を持っている勢力の存在もあった。
『この情報が事実であると市民に伝える事が出来れば、超有名アイドル商法が一部の歪んだ人間によって作られた〈都合のよいビジネスモデル〉と暴く事も出来る』
ディヴァインアークは考えた。超有名アイドル商法という裏ビジネスという流行語を生みだすきっかけになった商法は存在の価値さえない。
ならば、いっそのこと超有名アイドルを超える、市民に受け入れられる物を生み出す事が最優先なのでは…と。
『マジェスティック・アイドルが目指す物、それは一体何なのか?』
彼は悩む。しかし、マジェスティックという単語の意味を考えた時、一つの結論が浮かび上がった。
『マジェスティック…そういう意味だったのか』
ネット上の辞書を調べた結果、マジェスティックには〈堂々とした〉等の意味がある事が判明した。
つまり、超有名アイドル等が裏工作で頂点を目指したのに対し、マジェスティック・アイドルはバランスブレイカーではあるものの、姑息な手段や裏工作の類は一切使用しないアイドルだったのだ。
〈マジェスティック・バトル、それは極端に危険なエクストリームARスポーツを意味する〉
ディヴァインアークは、公式ホームページに書かれていたメッセージを思い出した。エクストリームスポーツは極端な要素を持っているスポーツでもある。
この場合の極端とは、下手な裏工作等を行えば、周囲の信用だけではなく自分の命さえも危険な状況になるという事なのだろう。
〈過去〉にはARウェポンの違法改造や違法パーツの流通が事件にはならなかったのだが、問題になっていた事があった。
それを踏まえると、今回のマジェスティック・ウェポンは元々のスペックが違法改造クラスの攻撃力を持っているのでは…と考えられる。
全てはとある存在によって既に定められていた…というつぶやきサイトのコメントもある位に、つぶやきサイトを制する者は情報社会を制するという噂もあった位である。
だが、情報の見極めができない人物がつぶやきサイトに手を出せば、どのような結果になるのかは目に見えている。
それを悪用したのが超有名アイドルであり、BL勢の信者であった。彼らの裏工作に敗北する形で他のコンテンツは次々と衰退していき、次第に超有名アイドル天下になろうとしていた時があった。
しかし、そうした事件は表向きには報道される事はなく、闇の中に消えていくという現状があった。
一説には、日本政府が公開を恐れている情報、日本経済に重大なダメージを与える可能性のある情報等が含まれているのでは…という説も浮上している位である。
情報を公開できないのには理由が存在する。しかし、これらの情報を公開しない理由に関して、政府は『ノーコメント』を貫いているらしい。これはどういう事なのか?
週刊誌では議員数人が有力企業から賄賂を受け取り、自分たちの都合のよい法律を作るように指示しているという記事もある。当然だが、日本政府は賄賂の存在も『ノーコメント』で貫いている。
果たして、日本政府は何を隠しているのか?
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同時刻、黒翼リンの一件に興味のない勢力は、とある話題に関して再び議論を展開していた。その勢力とは、ボーイズアイドルである。
アンテナショップの3階には、ショップエリアとは別に事務所が存在し、その中にある会議室で行われていた。
【RE:コンプガチャ、超有名アイドル商法、BL信者の暴走による脅迫事件…。どれもコンテンツ業界にとっては非常に痛手となる事件だ】
つぶやきサイトを引用しているのだが、特に議題があるような話でもないので、仮の議題としてコメントの引用をしている。それ以外には、議論の内容をつぶやきサイトへ拡散しないように指示が徹底されているのも特徴だろうか?
「超有名アイドル商法を推進していたのは、芸能事務所の力押しもあるかもしれない。しかし、日本政府も推進していたはずだ。それを、どうして規制するような流れになったのか?」
「結局、彼らは海外からの批判を恐れているのよ。超有名アイドル商法が行きつく先、それこそ、今のチートアイドルに該当する存在となる」
「日本政府は、ありとあらゆる手段を使ってでも〈賢者の石〉を生み出そうと考えた。それが超有名アイドルだった」
(中略)
「過去の総選挙の時には、1人で100000票も集中投票をしたという大富豪クラスのファンが複数いたという話があったな」
「しかも、その投票した人間は日本ではない海外からの投票らしい。何処の国かは定かではないが、ビッグマネーが動く場所と言えば、資源大国辺りが有力だろう」
「ここまでくると規制法案という物が検討されても当然の結果だ。そして、超有名アイドルは黒歴史と化した」
「しかし、ダークネスアイドルは同じことを繰り返そうとしている。投資ビジネスとしての超有名アイドルを…」
「これでは、投資詐欺事件を横行させるだけだというのを未だに理解していない」
「迷惑メールでも便乗して超有名アイドル商法を大々的に宣伝していると見せかけ、実際には別のオンラインゲームのサーバーへ攻撃する為のプログラムを仕込んだメールを投下し続けるという悪循環が繰り返される」
「そして、悪質なBL信者は自分たちで脅迫事件を起こしても超有名アイドルの仕業と決めつけ、純粋なBLファンの信用を失墜させている」
「この現状が許されるはずはない! 超有名アイドルは規制されて当然の勢力なのだ!」
(中略)
「超有名アイドルは発売1週で1000万枚というCD売り上げを記録と言われていたが、チャート発表後には999万枚はオークション転売に回されたという話もある」
「彼女たちの場合は、記録を作るだけ作って全てのランキングを制圧しようとしている流れもある」
「だからこそ超有名アイドル商法規制法案が出来上がった。芸能事務所は、自分たちのやった事を棚に上げて規制法案の廃止を訴えているが…」
(中略)
「しかし、超有名アイドル商法は日本経済を立て直すまでには至らなかった。数万人程度の超有名アイドル長者を生み出しただけで、大多数からは商法規制を訴える動きも起こったからだ」
「いくつかの世界で書かれているアイドル戦争の事ね。あれは小説の世界であって、現実には起こるとは限らない」
「あの世界観はWeb小説で描かれているようなファンタジーな異世界とは違う」
「あの小説に書かれている世界は全てに共通して現代日本、これが何を意味しているのか?」
(中略)
「あれが小説とは限らない。ネット上では、アカシックレコードとも言われているが…」
3人の女性と2人の男性による議論は10分以上にも続いた。しかし、10分以上の時間を使用しても超有名アイドル商法にしか触れられていない事には何かあるのだろうか?
「この他にも、株式市場も超有名アイドルのCDチャートのようになっているという話を聞く」
議長と思われる男性が口を開き、周囲に意見を求める。そして、意見の半分以上は予想通りの物だった。
「日本は超有名アイドルという異世界からの敵に支配されてしまった。だからこそ、超有名アイドルは駆逐するべきなのです」
「そうだ! 超有名アイドルは駆逐せよ」
「超有名アイドルの駆逐、それこそ日本を取り戻すための唯一の手段だ」
そして、議論の方は終了した。他の議論に参加していた人物は、それぞれの持ち場に戻る。どうやら、朝のミーティングを兼ねていた議論だったようだ。
一方、秋葉原では別の話題も耳に入ったらしく、その話が話題になっていた。通行人の一人がベンチで新聞を読んでいるのだが、その1面に書かれた見出しには…。
〈ダークネスアイドル、大手芸能事務所AとBによるアイドルユニットと判明か?〉
通行人が呼んでいた新聞は、過去に黒翼リンの正体をいち早く予想していた出版社の新聞である。
【どう考えても、過去に黒歴史化したアイドルグループだよな…。ダークネスアイドルの原型って】
【あのプロデューサーは、確か警察に逮捕されたはずでは?】
(中略)
【国家予算を超える保釈金で釈放されたとか?】
【そこまで到達していたら、ニュースになっていてもおかしくはない>保釈金】
【やはり、今回の超有名アイドルの件には与党の一部勢力等が無限の利益を得る為に動いているとしか…】
ネット上でも、ダークネスアイドルに関しては色々と情報が錯そうしているような気配である。一体、真相はどこにあるのか?
同日午前11時、BL勢が〈ある話題〉をネット上に拡散した事で、超有名アイドルの存在に疑問を抱く人物が増え始めていた。それは、一連の動画である。
「ダークネスアイドル、一般的には宇宙から現れたアイドルという認識が多いようですが、実は重大な事実が判明したのです」
赤をベースとした背広に黒いネクタイ、不死鳥をモチーフにした覆面をした人物が椅子に座っている。彼の経歴は一切不明だが、動画の説明文には重要な一文が書かれていた。
《ダークネスアイドルは道化である》
この一文は動画のタイトルにもなっており、どういった理由でタイトルになっていたのかは不明だった。
「彼女たちの正体、それは過去に黒歴史となった超有名アイドルの候補生…。つまり、大手芸能事務所の亡霊なのです」
「これ以上、向こうの茶番に付き合う必要性はないのです。全ては賢者の石を完成させようと考える与党、無限の利益を得ようとしている芸能事務所の策略なのです」
「向こうの策略に乗れば、地球に存在する全ての流通している通貨が日本の芸能事務所1社に集約されるでしょう。それだけは阻止をしなくてはならない」
(中略)
「芸能事務所1社に全ての資金が集まる事になれば、日本は超有名アイドルを地球だけではなく、宇宙にも進出させ、全ての世界に超有名アイドルが支配するディストピアを…」
「我々は、芸能事務所1社による暴走を止めなくてはいけないのです。その為にも、彼女たちを打ち負かす為の力を手に入れる必要があるでしょう」
そして、その人物は数秒の間をあけて発言した。
「ダークネスアイドルという金の力を得たチートを倒す為には、マジェスティック・アイドルの力が必要なのです」
この動画は、あっという間に100万再生を達成した。
それが何を意味しているのか定かではない。この人物がどの勢力に所属しているのかは、大体把握できてもボイスチェンジャーで声を変えられている以上、誰かを特定する事は困難だった。
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西暦2014年4月13日午前10時、秋葉原でのARサバイバルのステージは予想外の展開を生む事になった。
「この世界には超有名アイドルは不要なんだ!」
ヤンキーをモチーフとしたARゲームでも〈ストーム〉という異名を持つグループが、ダークネスアイドルに対して必要以上の攻撃を加える。
「お前達の稼いだ金がどのように使われているのか、知っているのか?」
「芸能事務所は、賢者の石を生み出す為に更なる金を消費している。しかも、1日に国家予算10年分以上に相当する!」
「俺達がダークネスアイドルのハンターをやっているのも、芸能事務所の無謀とも言える計画に付き合わされた結果、こんな生活を強いられているんだ!」
そして、ダークネスアイドルが消滅をした。どうやら、彼らが戦っていたアイドルはCGによる2.5次元とも言えるアイドルだったらしい。
ダークネスアイドルハンター制度、それは突如として設立された物だった。簡単に説明すれば、ダークネスアイドルをウォンテッドし、見事に撃破した者に賞金を与えるというシステムだった。
政府は即刻中止を申請しようとしたが、ここで中止と訴えれば正体を気付かれる危険性もあって手を出せない状況だったのである。
この制度に対して、ARゲームの状況が変わってしまうと判断した勢力がいた。それは、予想外な事にマジェスティック・アイドルだった。
「ハンター制度、これが横行すれば…いずれは大規模なテロ事件が起きる。それだけは阻止しなければ」
神咲佐那は、ハンター制度の存在自体に疑問を持っていた。これが横行すれば、いずれは大規模な思想狩りに発展し、それこそ大混乱を生み出す可能性が大きい。
「利益だけを求めるような思考の勢力を放置すれば、いずれは全ての業界が超有名アイドルによって支配された世界になるのは明白!」
そんな事を思いながらも、彼女は秋葉原のマジェスティック・バトルフィールドでダークネスアイドルを撃破する。ハンター制度には反対しつつも、彼女は超有名アイドル商法に対しては強い憎悪を抱いていた。
エターナル・スラッシャーを片手に、神咲は次々と現れるダークネスアイドルを撃破していく。ここまでくると、マジェスティック・バトルは関係がなくなっている可能性も否定できない。
次々と…とは言うものの、5人グループ以上のメンバー構成はルール上で不可能になっている為、5人グループを撃破後に乱入者、乱入者を撃破後に再乱入というループ状態である。もちろん、神咲サイドの方で乱入打ち止めを書ける事も可能である。
『お前は、どちらの味方をする気だ!』
パワードスーツで身を固めたダークネスアイドルファンの一人が神咲に問いかける。そして、彼女は数秒の間をあけて答えた。
「私が味方をするのは、アイドルを投資材料として見るような存在、タニマチ、フーリガンのようなファンが存在しないアイドルよ」
『その答えは〈コンテンツ業界〉全てを否定する! やっぱり、お前はコンテンツ業界を根絶しようと考えている勢力なのか!』
「違う! 私は単純にアイドルを悪用した〈便乗商法勢力〉を根絶したいだけよ。コンテンツ業界全てを滅ぼそうというのであれば、BL勢をスルーしようとは考えない」
『―貴様がコンテンツ業界の全てを歪める存在か!』
神咲がBL勢をスルーしていると判断されるような発言をした事で、刺客の1人がトマホークを神咲に向けて振り下ろした。
トマホークは確かに振り下ろされたはずだったが、振り下ろされたソレにはビーム刃がなかった。どうやら、使用者が気絶した為に機能を停止したのだろう。
その使用者を倒したのは、予想外とも言える人物だったのだ。その人物は大型のハルバードと呼ばれる武器を持っており、更には重装備のアーマーという装備で姿を見せる。
『バカな! 貴様は―』
トマホークを振り下ろした人物は、乱入してきた人物の姿を見て衝撃を受けているようだった。そして、その場に倒れる。他のメンバーは、倒れた人物を抱えてその場から逃げだした。どうやら、向こうは彼の正体を知っているような気配である。
「あなたは一体、何者なの?」
神咲の言う事も正論だ。本来であれば、通常バトルからの乱入は認められておらず、彼の登場はイレギュラーに近い要素である。それでも、彼が飛び入りで現れたのには理由があった。
『何者かの問いに答える事は出来ない。しかし、一つだけ確かな事がある』
そして、彼はメットを脱ごうとしたが、その前に指をパチンと鳴らし、周囲のモニターを全てジャミングで無効化してからメットのバイザー部分だけをオープンさせた。そこから見せたのは、両目が緑、黒髪のセミショートという男性である。後ろ髪に関しては確認できない。
「マジェスティック・アイドルこそ、全てを混乱させている」
彼が一言だけ残すと、再びバイザー部分を展開し、そのまま姿を消してしまった。一体、彼は何の為に乱入したのだろうか。超有名アイドル勢力というにも、持っていた武器は音楽ゲームを思わせる装飾やデザインがされていた。
「あの武器はマジェスティック・ウェポンにも似ているような気配がした。なのに、彼はマジェスティック・アイドルを否定しているようにも見える」
神咲の方も色々な疑問はもちつつも、ステージの方を去る事にした。現状では疲労もピークという訳ではないが、連戦が多かったという事もあって早めに引き上げる事にした。
同日午後2時、ナイトシェイドは舞浜から幕張へ向かう途中の専用車両で、ある情報を入手した。幕張へ向かう理由は、とある会議へ参加する為である。
「これはどういう事か、説明してもらおうか?」
ナイトシェイドのスマートフォンに映し出された写真、それはARアーマーに若干のデザイン違いが見受けられるが、彼の知っている人物であった。
「我々も把握しておりません。ボーイズアイドルかBL勢、他のコンテンツ勢がダークネスアイドルの評判を落とす為の裏工作かと」
隣に座っていた秘書と思われる男性も、この場を何とかしようと考える。せめて、幕張に到着するまでは彼の機嫌を損なえば…。
【このアーマーを見る限りでは、どう考えてもディヴァインアークなのは明白だろう。どうして、マジェスティック・アイドルを助けたのか?】
このコメント共に、ディヴァインアークの写真が添付されたつぶやきが拡散していたのだ。既に該当記事をフォローした人数は5万人を超えている。
「どちらにしても超有名アイドルの存在を脅かす存在は、我々が潰すまでだ」
そして、ナイトシェイドの乗った車は幕張のイベント施設へと直行するのであった。
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西暦2014年4月16日午前10時30分、神咲は秋葉原の別エリアでボーイズアイドルとダークネスアイドルがバトルを展開している場面を大型モニターで目撃する。ステージは、神咲のいる場所から数百メートル以上の距離があるようだ。
『黒翼リンを利用してマジェスティック・アイドルの―』
ボーイズアイドル側の人物の発言のようだが、途中が若干聞き取れない。ノイズが激しいのだろうか? それに加えて、声の方もボイスチェンジャーで変えられているように聞こえる。
『日本のコンテンツはBL勢が全て―。超有名アイドルは黒歴史―』
やはり、何者かによって意図的にジャミングをされている疑いがあるような音の途切れを神咲は感じていた。何故、このような方法を取ったのか?
『それ以上に脅威なのは、超有名アイドルのフーリガンに近いようなファンが生み出した、ダークネスアイドル―』
意図的なジャミングも若干だがノイズ量も少なくなり、声の方もはっきりと聞こえるようになった。
『私は、超有名アイドルのようなビジネス化されたアイドルには未来はないと断言できる。だからこそ―』
映像のノイズも消え、会話をしている人物はARアーマーに不死鳥の覆面をしているようにも見えた。不死鳥の覆面と言えば、例の動画に登場した人物だ。そして、話の途中で彼はマスクを脱ぎ始めたのである。
「そんな事が…?」
神咲は〈この人物〉の正体を見て凍りつくような気持ちだったのである。周囲の人物は、まさかと思った人物が半数以上、想定の範囲だったと見るのはわずか数人しかいない。
「超有名アイドルによるディストピアと化した日本に価値はないと断言します。倒すべき敵は、超有名アイドル商法その物なのです!」
不死鳥の覆面をしていた人物の正体、それは鷲宮奏だったのである。これが意味する物とは、一体何なのか?
「もう一度言います! 大手芸能事務所AとBは、超有名アイドルを復活させる為だけにダークネスアイドルを結成し、日本のコンテンツ流通を混乱させようとしているのです」
「そして、ダークネスアイドルの特使として現れた女性の正体、それはマジェスティック・アイドルの黒翼リンです」
衝撃的な展開だった。まさか、マジェスティック・アイドルの黒翼リンがダークネスアイドルの特使だったとは…。
『謀られた! まさか、鷲宮奏が裏で動いていたとは…』
舞浜ではなく秋葉原にいたディヴァインアークは、大型スクリーンに映し出された鷲宮を見て若干の焦りが生まれた。
『このままでは例の作戦も失敗するのは間違いないが、それ以上にまずいのは、ナイトシェイドが幕張で宣言した事か』
ディヴァインアークが懸念していたのは、ナイトシェイドが幕張の会場で発言した内容である。
『どちらにしても、ダークネスアイドルとマジェスティック・アイドルの共倒れを狙う勢力は多数存在する。まずは、そちらを―』
ディヴァインアークが別の名所へ向かおうとしていたが、そこへ何者かのメッセージが入った。厳密にはつぶやきサイトのようなコメントではなく、ショートメールの類である。しかし、そのメールには差出人の名前は書かれていなかった。
〈ダークネスアイドル以外の超有名アイドルが暴走を始めている。下手をすれば、BL勢が超有名アイドルにかわって日本を制圧する世界になるだろう〉
このメッセージを見たディヴァインアークは、何かを思い出したかのように幕張方面へと向かう。その何かとは、ナイトシェイドの宣言した内容である。
『大規模なテロでも起こせば、間違いなく日本は経済暗黒時代へと突入するだろう』
移動手段に車を使うにしても下手にスピードを出せば警察に捕まるだろう。そこで、ディヴァインアークが考えた移動手段は予想外の物だった。
「いらっしゃいませ! ARアーマー専用のジェットバーニアレンタルサービスをご利用ですか?」
ディヴァインアークが入った工場のような外見の建物、それはジェットバーニアというARアーマー専用フライングボードのレンタルサービスを行っている。
『重量タイプも使用可能な物を借りたい。空きはあるか?』
彼は専用のレンタルカードのような物を女性店員に渡す。しばらくして、女性店員はPCからジェットバーニアの空き状況を調べ、タブレット端末のような物をディヴァインアークに見せる。
「重量タイプ用でしたら、こちらに2台ありますね。すぐに利用いたしますか?」
『こちらも少し急いでいる。準備が出来次第、ここを出発したい』
「了解しました。では、こちらに表示されている特急コースのボタンにタッチして下さい―」
メニューの方は3種類あり、事前予約コース、当日に利用する人向けの〈当日コース〉、大至急の用事で利用する人向けの〈特急コース〉が存在する。その中で、ディヴァインアークは特急コースのボタンをタッチすると、即座に利用料を含めた合計金額が表示される。
『この値段でも止むを得ないか。料金の方はARブレス内にチャージされている電子マネーから差し引きを頼む』
「了解しました。ジェットバーニアが手配出来ましたら、放送でお呼びしますのでしばらくお待ちください」
そして、ディヴァインアークはジェットバーニアの手配が終わるまでの間、ショップ内にある売店で焼き餃子サンドと烏龍茶を購入、束の間の休息を取る事にした。
《番号札3番のお客様、ジェットバーニアの手配が完了しましたので、3番ガレージまでお越しください》
3分後、ディヴァインアークの手配したジェットバーニアの準備が完了したという放送が流れ、3番という番号札のかかっているガレージへと向かった。
「ちょうど、別の方が大型のジェットバーニアを返却に来たばかりでしたので、比較的早いタイミングで手配できました」
『それは助かる』
ディヴァインアークのARアーマーの脚部にロケットが接続され、それとは別に大型のサーフボードを3つつなげてブースターを取り付けたような物が別のコンテナで運ばれ、その封印がとかれる。どうやら、これがジェットバーニアらしい。
(お前達の思うようなシナリオにはさせない。そして、BL勢の野望もついえる時だ)
3番ガレージの入り口部分がシャッターで閉じられ、それとは別に用意されたゲート部分が開く。そこから見えたのは、荷物搬入用よりも大きめのエレベーターだった。
「番号札3番のお客様、目の前にある大型エレベーターに乗って、ジェットポートへと移動してください」
エレベーターに乗ったディヴァインアークは、エレベーターに乗って3階位の高さまで到達した所で止まった事に違和感を持った。
『この高さで飛ぶ事は可能なのか?』
「特に問題はありません。次の瞬間には、きっと空の上ですから」
女性店員はニッコリとほほ笑んでいるような表情をしていたが、本当に大丈夫なのか…若干不安がよぎった。
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次回予告
暴走する超有名アイドル勢、その行動にガソリンを注ぐような行動をするBL勢…日本のコンテンツ業界が大きく揺らぐ現状があった。
マジェスティック・アイドルは、どちらの勢力に付く事もなく両者の刺客を次々と撃破していく。
その状況を見た、とある人物がステージへ舞い戻ってきた事の意味とは?
次回、『イージス、再び』




