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マジェスティック・アイドル  作者: 桜崎あかり


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第2話:5人目の適格者-The 5th qualified person -

※小説家になろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っています。


>更新履歴

・2015年5月20日午後10時54分付

前書き簡略化、行間調整

 西暦2014年1月10日、千葉の舞浜上空に現れた無数の宇宙船が飛来する。


 その宇宙船に乗っていたのは、ダークネスアイドルと名乗る宇宙で活動をしているアイドルだった。


 日本政府は、さまざまな議論や検討等を行った結果、彼女達に『ダークネスアイドル特区』を認める事を決める。


 その一方では、一連の流れに超有名アイドルの影があるのでは…と考える人物がいた。彼の名はイージス、またの名を黒騎士と言う。


 彼が開発したマジェスティック・ウェポンは人知を超える力を持っているのだが、その真相は明らかではない。


 そんな中、彼らの工場から〈エターナル・スラッシャー〉と〈ナイトバード・フェザー〉の2つが奪われてしまったのである。


 奪った人物及び奪われたマジェスティックウェポンが使われた形跡を発見できないまま、4月1日を迎える事になるのだが…。


###


 4月1日を迎える前の3月20日、ネット上にはこのようなやり取りが存在した。


【やっぱりか】


【あれだけのパワーを披露されては、他のARゲームと差別化は不可能か?】


【ある意味でエクストリームスポーツだからな。表向きはARゲームだが、あのレベルの動きはスポーツ選手でも不可能だぞ】


【それを可能にするマジェスティックアーマーか…】


【あれがARゲームに現れたら、バランスブレイカーなのは間違いない】


【確認例が1つだけならば、まだ対策は可能だが…複数現れたら対応に追い付かないぞ】


 つぶやきサイト上では、アイドルバトルをARゲームとしてではなく、別の何かと言う扱いにするというジャンル隔離が行われた。


 それから、アイドルバトルは名称を変え、マジェスティック・バトルとして各地に広まっていく動きになった。


 ジャンルとしてはARゲームではなく、エクストリームARゲーム、あるいはエクストリームARスポーツと言う部類になると思われるが…正しい表記は定かではない。


 そして、エクストリームARゲームにジャンル隔離されたタイミングで姿を見せたのは、マジェスティック・ウェポンの3人目と4人目の適格者だった。


 3人目の適格者は黒翼こくよくリン、使用するマジェスティック・ウェポンは日本刀型の革命・神話である。


【何だ、あのアイドルは?】


【あのコスチュームに何処か見覚えがあるような…】


【もしかして、あれは―】


 彼女の衣装には周囲も若干の見覚えがあった。それは、ダークネスアイドルの特使として現れた人物の着ている衣装と似ている部分があったからだ。


 共通点は、ブラジル水着に近い布面積の低い水着だけであり、リンの場合はドレス等を着ていない。


【しかも、あの威力は異常だ】


【また一撃決着か】


【あれだけの威力を持ったARウェポンが広く出回ったら、それこそ取り返しがつかなくなる】


 動画投稿サイトに投稿されていた動画を見たユーザーは、誰もがマジェスティック・ウェポンの破壊力に衝撃を覚える。


 それは、通常のARウェポンが100という威力に例えるなら、マジェスティック・ウェポンは100000以上と言及されている部分だろう。


 リンの場合は、革命・神話のビーム刃に関しても強力だが、それ以上に火縄銃とみせかけたレールガンの威力も恐ろしい。


 エクストリームARゲームへのジャンル隔離と言うきっかけを作ったのは、実は彼女なのである。


 あまりにも一撃決着が多い為にARゲームの運営が調べた結果、マジェスティック・ウェポンの多くに異常とも言えるような攻撃力数値が確認された。


 この数値が放置されていた理由は、その他のパーツが違法性のある物を全く使っていなかった事、マジェスティック・ウェポンの所有者が少なかった事が発見を遅らせていた。


 しかし、この事を告発したのは超有名アイドル勢ではなかった。それが意味する者とは、一体何なのか…謎は深まるばかりである。


 4人目の適格者、それは意外な人物だった。身長は179CM、3サイズは88、57、85(推定)、ARスーツはフルアーマーを思わせるスーツを装備しているらしい。


 使用するマジェスティック・ウェポンはグレートソード型のサイレント・リニアレール。形状はパイルバンカーモードで運用しているように見える。


【何だ、あの巨大なアームは】


【どうやら、あのアームの補助で巨大な剣を制御しているようだ】


【パワードスーツとは違うようだが、どういう構造なんだ?】


【大型剣にも見えるが、アレはパイルバンカーだな】


【2つの形態を持った武器と言うべきだろうか?】


 単独でサイレント・リニアレールの大型剣を支える事が出来ず、ARスーツ〈アーマード・ギア〉の大型アームを使用してようやく振り回せる。


 なお、パイルバンカーモードで運用する場合は〈アーマード・ギア〉の右腕に固定される仕組みらしい。


 〈アーマード・ギア〉は変形式の特殊なARスーツで、大型のホバーボートが変形するという仕組みになっている。


 この特殊なARスーツこそ、彼女が極秘裏に開発していた物だったのだ。そして、彼女の正体は驚く事に…。


「これは、どういう事なのか?」


 思わずイージスが該当の動画を工場で見ている際に驚いていた。西雲水希にしぐも・みずき、彼女が4人目の適格者だったからだ。


 驚く理由はそれだけではない。彼女は、現在の工場を見つけた本人であり、マジェスティック・メタルも彼女が見つけた物である。


 それに加え、工場に出入りしていたドラゴンの覆面をしていた人物、その正体が西雲だったのだ。


「うかつだった。西雲と言えば、アカシックレコードにもその名を刻む伝説の2人―」


 そして、イージスは閲覧を終えた動画をwebブラウザごと閉じて、別の新規webブラウザを表示させる。


 そこには、とある出来事に関するまとめが掲載されていた。その出来事とは、マジェスティック・アイドルのジャンル除外に関するニュースだった。


「これも彼らのシナリオ通りと言う事なのか。超有名アイドルではなく、BL勢の…」


 超有名アイドル商法衰退の原因として取り上げられていたのは、別ジャンルの楽曲などではなくマジェスティック・アイドルだったのだ。


 彼女達は特に楽曲を発表していないはずなのだが、今後の展開次第でCDが出るのでは…と噂されていく内に、超有名アイドルにとって目の敵にされていた。


 それだけではない。このまとめ記事は別の勢力も既に確認済みだったのだ。


#####


 舞浜市に作られていたとある施設での出来事だった。時間は午前11時頃だろうか?


『なるほど。全ては、例の勢力が影響していたのか』


 身長178センチ、重装備のARアーマーを装着し、メットのバイザー部分も透明度が低い為に顔が見える事はない。


『ならば、こちらとしても考えがある』


 彼の名はディヴァインアーク、ダークネスアイドルの攻撃隊長を担当している人物でもある。


『我々が、BL勢よりも支持を受けている事を証明する日は近い。彼女たちの暴挙によって世界が閉鎖する前に…決着をつける』


 そして、彼はとある部屋へと足を踏み入れた。そこは社長室を思わせるような小道具等も置かれているが、ある人物は社長席とは別のソファーに座っていた。


 身長170センチ、赤髪のショートヘアに謎のゴーグルをしており、その目つき等を確認する事は出来ない。


 まるで、マインドコントロールを受けている人物のようにも見えるのだが、その彼がダークネスアイドルの設立者だった。


 彼の名はナイトシェイド。地球での芸能活動を本格的に始めようと考えた人物でもあるのだが、その経歴は一切不明である。


「ディヴァインアークか。何の用だ」


『実は、このような記事を見つけました。どうやら、この星では超有名アイドルが衰退していると考えられると思われます』


 ディヴァインアークはナイトシェイドに自分が見ていたまとめ記事を見せ、いくつかの考慮点を手で指摘しながら彼に説明をする。


『理由は不明ですが、この星のアイドルは握手券と呼ばれる物や複数枚シングルをリリースして、CDチャートを独占する事で注目度を上げた事が、一種の超有名アイドル商法と呼ばれ…衰退化する原因になったと考えられます』


「この世界のアイドルは、我々の世界とは違って〈儲かれば何をしてもいい〉というチートアイドルが多いようだな」


『そこで、チートアイドルを一掃する為にも総攻撃許可をお願いする為に来ました』


「しかし、総攻撃を仕掛ければ、我々がチートアイドルに返り討ちされるのは目に見えている」


『この世界のアイドルは、我々と違って武装化はされていません。返り討ちという可能性はないと思われます』


 ナイトシェイドは、ディヴァインアークの〈この一言〉を聞いて目の前のテーブルを軽く叩く。


「無抵抗なアイドルを攻撃すれば、我々が他の戦争を行う国家と間違われる可能性が大きい!」


『ですが、こうでもしなければ彼女達は気付かないのです。自分達が行ってきた事が、宇宙との全面戦争と言う引き金になるという事に』


 ディヴァインアークは一言だけを残して、部屋を出て行った。どうやら、超有名アイドルに対して総攻撃をしかけようと本気で考えているらしい。


「何としてもディヴァインアークを止めろ! 手段は問わないが、事態を悪化させる事は行ってはいけない」


 ナイトシェイドは、別の部隊に対してディヴァインアークを止めるように指示を出した。それを実際に聞いているかは不明だが、いくつかの部隊が既に出撃済みになっていたのが気になる所だが…。


「ディヴァインアーク、彼のような攻撃的過ぎる人物はダークネスアイドルに不要だ。しかし、彼の能力があってこそのダークネスアイドル特区の確保もある」


 ディヴァインアークの行った功績、それを踏まえて下手に彼を切れない事情がある。ディヴァインアークの周囲にも優秀な部下が何人かいる。一歩間違えれば、クーデターも起こるだろう。


「しかし、あの人物は危険だ。あの思考は明らかに我々がスルーするべき存在をも敵に回し、それを排除しようと画策しているようにしか見えない」


 ナイトシェイドの懸念、それはディヴァインアークが超有名アイドル商法が衰退した理由が〈BL信者の暴走〉と決めつけ、一方的に根絶しようとしているのでは…と。


###


 西暦2014年4月1日午前10時、葛飾区のショッピングモール内、そこでは超有名アイドルのミニイベント+CD購入対象者向けの握手会が行われようとしていた。


「やっぱり、人の集まりが通常よりも多いような気配がする」


 ミニイベントに参加する予定はないが、若干野次馬的な気配で姿を見せた人物がいた。


 黒髪のポニーテール、眼の色は赤、身長は175、3サイズは84、61、80(推定)、服装は若干露出度が高い衣装を着ているように見えるが…。


 彼女の名前は神咲佐那かんざき・さな、過去に男性アイドルグループのファンをしていた事もある。しかし、最近の超有名アイドル事情等が影響して、ファンを引退してしまった。


 何故、ファンを引退する事になった理由に関しては定かではない。


「何だ、あれは?」


「バカな、あれはダークネスアイドルじゃないのか?」


「一体、どういう事だ!?」


 周囲の人物が慌てだしたような気配がした。まさかの事態である。ショッピングモールの外では、ダークネスアイドルと思われるコスチュームの女性が多数目撃された。


 今回の事態に対し、公式から発表が全くない。これはどういう事か?


【ネット上でも発表がないようだ】


【まさか、便乗犯の仕業なのか?】


(中略)


【あれだけの装備は、ダークネスアイドル以外で持っているとは考えられない】


【ARウェポンにも見えるが、違う物なのか?】


【えっ? 到底、そうは見えないようなデザインだが】


 目撃されたダークネスアイドルを見る限り、ARウェポンに酷似している。しかし、殺傷能力があれば銃刀法違反で捕まるのは確実だろう。


 そして、女性アイドルが持っているビームライフルからビームが放たれた。そのビームは建造物を通り抜け、警備員として配置されていたARスーツを装備している人物に直撃した。


「ビームが、自動ドアも貫通して届くはずがない!」


「連中が持っている武器、まさか異星人の技術なのか?」


 倒れた警備員を目撃した2人の警備員も、突如の襲撃に慌てている。まさか、異星人が襲撃してきたのか…と。


【やっぱり。そう言う事か】


【あの武器はARウェポンだ。殺傷能力が一切ない所を見ると…】


【ARウェポンは、建造物も貫通するのか?】


【建造物の貫通はチートかもしれないが、ARスーツ以外には傷一つ付いていないとなると、その路線が正しいのかもしれない】


【ダークネスアイドルの使用するARウェポンのような物…。仮にダークネスウェポンと名付けよう】


【まさか、マジェスティック・ウェポンと同じような威力を持っているのか?】


 ネット上でも、彼女たちの使用するダークネスウェポンに関して謎が浮上している。その中でも、マジェスティック・ウェポンに匹敵するのではないか、と言う部分は疑問が残る。


 午前10時10分、ミニイベントに関しては中止となった。ダークネスアイドルの狙いは、こちらだったのでは…と言われている。


 しかし、目撃された場所が初っぴぐモールの外であり、イベント会場からは距離がある。それで中止にした理由は何なのか?


「あれがダークネスアイドル―」


 神咲は即座に逃げようと考えていた。しかし、周囲の客が慌てていた等もあってか逃げ遅れたというのが有力かもしれない。


「まずい、このままでは、やられる?」


 自動ドアが開き、そこからダークネスアイドルの何人かが侵入してきた。このままでは…と考えた神咲が逃げようと試みるが、逃げられるような気配はない。


『危ない!』


 その声と共にビームが神咲の目の前をかすった。しかし、彼女の顔に傷1つ付いているような気配はない。どうやら、ビームに関してはARウェポンから放たれた物らしい。


 そして、そのビームが放たれた先にいたダークネスアイドルは一撃で10人以上が撃破、即時退却という展開になっていたのである。これはどういう事なのか?


「あなたは一体、何者ですか?」


 神咲は自分を助けてくれたARスーツを装着した人物に対し、お礼を言う前に何者なのか…というのが先に口に出た。


『今は、そんな議論をしている場合ではないはずよ』


 彼女の言う事も一理ある。今は逃げる方が最優先であるべきと判断し、彼女の誘導に従って避難をする事にした。


###


 今から20分前に時間をさかのぼり、午前9時50分、ダークネスアイドルはステルス迷彩を使って何処かへと隠れて準備を整えていたのである。


《準備が出来次第と言いたい所だが、午前10時に作戦を決行する》


《目的は、本日行われる超有名アイドルのイベントを中止に追い込む事》


《超有名アイドルが衰退していないという事を、連中に思い知らせるのだ》


 何者かの通信がダークネスアイドルの装着しているアーマーのバイザー部分に表示されている。どうやら、メッセージオンリーの物らしい。


 午前10時にはスタンバイしていたダークネスアイドルがステルス迷彩を解除し、ショッピングモール外で超有名アイドルのイベントを警護していた部隊を壊滅させた。


「バカな! レーダーには何も反応がなったというのに」


「ダークネスアイドルが本格的に動き出したというのか?」


「何てパワーなんだ!」


 ダークネスアイドルは警護部隊よりも桁違いなパワーを発揮、部隊は5分足らずで壊滅したのである。警護部隊が弱い訳ではなく、彼らも強力なARウェポンを持っていたはずなのだが…。


《警護部隊を壊滅後は、一部のみ内部へ侵入しイベントを中止に追い込め》


《なお、別の勢力が介入しても下手に手出しはせずに撤退せよ》


 バイザー部分にはメッセージが表示され、そこでは別勢力の介入があっても手出しはしないようにと言う指示があった。このメッセージに関してはダークネスアイドル側にか見えていない特殊な物である。


###


 午前10時10分、神咲が遭遇した人物、それはARアーマーを装着した女性だったのである。


「質問を変更します。あなたは、どういう目的があって、ここに?」


『目的があるとすれば、襲撃してきたダークネスアイドルをせん滅する為よ』


「今時、女性の超有名アイドルなんて流行っていません。それは、超有名アイドル商法が衰退している事から明らかでしょう」


『確かに超有名アイドル商法が衰退しているとニュースで流れているのは事実よ。しかし、実際は衰退している訳ではない』


「まさか、他の勢力による偽情報?」


『それは…』


「目の前!」


 非常口へ向かう道中で神咲とARアーマーの女性は話をしていた。それは、ダークネスアイドルが実は宇宙人ではなく地球人なのでは…と遠まわしに言っているような物だった。


 しかし、非常口近辺で見張りをしていたダークネスアイドルと謎のスーツを着ている一般兵に発見されてしまった。


『しまった!?』


 敵兵士の攻撃に油断したARアーマーの女性は、不意打ちとも言えるビームライフルの一撃で手持ちの銃を落としてしまった。そして、それと同時にスーツの武装が解除される。


「まさか、アーマーの限界?」


 ARスーツが解除され、姿を見せたのは身長175CM、やや細身、髪型は青のセミロング。眼の色も青と言う女性だった。


「運がなかったな。ここでスーツが解除されるとは…?」


 増援の一般兵が駆けつけ、絶体絶命と思われた。しかし、それでも彼女は落とした武器とは別のARウェポンであるビームブーメランを取り出し、それを投げる事で何人かの一般兵を撃破する。


「バカな! ARスーツとARウェポンは連動しているはずだ! それが何故に単独でも動く?」


「残念だけど、マジェスティック・ウェポンは普通のARウェポンとはシステムが違うのよ! そして、今投げたのは本来の自分が使うARウェポン―」


 彼女は何か勝ち誇ったような表情で、もう1つのブーメランも投げ、非常口の一般兵を撃破する。しかし、ダークネスアイドルに関しては逃げられてしまったようだ。逃げたというよりは、援軍を呼んだようにも思える。


「あれが現実よ。ダークネスアイドルも、所詮は地球の超有名アイドルとやっている事は同じ」


 敵勢力が撤退した後で、彼女は神咲に向かって話す。そして、左腕を押さえているようにも見える。どうやら、先ほどの戦闘で負傷したのだろうか?


「最初は友好的だったとしても、次第に態度を変化させ、最終的には牙を向ける。結局、彼女達は外貨獲得の為に利用されているのよ」


 彼女は話し続けた。そして、非常口から何とか脱出する事に成功し、そこで神咲と分かれる事になるという流れになろうとしていた…はずだった。


 午前10時15分、非常口から脱出した2人を待ち構えていたのは、ダークネスアイドルと一般兵の大軍だった。その数は100人近く。


「あなたに、これを託すわ!」


 彼女は神咲にマジェスティック・ウェポンを手渡す。これは、先ほど彼女が落としていた銃タイプの物である。


「これは、ARウェポン?」


「ARウェポンとは違う、それを超えた威力を持つARウェポン。名付けて、マジェスティック・ウェポンよ」


 ARウェポンと言う神咲に対し、彼女はそれを否定、この武器はマジェスティック・ウェポンであると強調する。


「確か、ARウェポンの100倍以上の威力があるというのが…」


 神咲の手が若干震えているように見える。あれだけの破壊力を持つ武器を自分が使ってもいいのか、と言う事もあるのかもしれない。


「ダークネスアイドルの蹂躙を許すか、自分達と地球の平和を守るか? それは、マジェスティック・ウェポンにゆだねられていると言っても過言ではない」


 彼女は神咲に対して目を見て発言をする。ダークネスアイドルは超有名アイドルと同じことを繰り返すだろう。それを止める為にも、マジェスティック・ウェポンは必要なのだと。


「地球の平和を守る?」


 そして、神咲はマジェスティック・ウェポン〈インフィニティ・ソニック〉を彼女から託された。すると、マジェスティック・ウェポンが輝きだす。


「これは、どういう事なの?」


 マジェスティック・ウェポンを渡した方の彼女が驚いていた。次の瞬間には、銃モードから剣モードへと変化していたからだ。


 〈エターナル・スラッシャー〉、この武器は銃と剣の2モードに変形する事が出来、更には攻撃力もモードによって変化する。


 更には、神咲の服装が瞬時にして青いARスーツのインナー姿になっていた。そして、インナースーツに変化したと思った次の瞬間には…。


『これは、一体どういう事ですか!?』


 神咲も思わず驚いた。隣のガラス張りのショーケースを見て、自分の姿が変化している事に気が付いた。


「マジェスティック・アーマーの真の姿…まさか?」


 彼女は神咲のアーマーが自分の物よりも別の形状に変化していた事に驚く。


 肌に密着したARインナー、外見は戦隊物のようなスーツではなく、若干アニメの方に近いようなマジェスティック・アーマーが装着されている。


 アーマー部分は、ARアーマーを流用しているような箇所も存在しつつ、随所で全く違うような部分も存在する。カラーリングもダークネスアイドルの使用している物と比べると、明るめの色をしている。


 ヘッドのデザインは、騎士を思わせるような外見をしているが、所々でSFのようなデザインをしていた。


 アーマーに関してはクリスタルを思わせるようなプレートやアーマーがあちこちに取り付けられているのだが、それが何を意味しているのかは現状では分からない。


 しかし、かけ離れているのがマジェスティック・ウェポンのデザインである。武器デザインは他のARウェポンと類似する箇所も存在している。


 その一方で、ターンテーブルや鍵盤と言ったような音楽ゲームの専用コントローラーを思わせるデザインや装飾も存在していたのだ。


『これって、ARウェポンとは全く違うデザインをしていますね』


 神咲の質問に対し、彼女は何か仕方がないような顔をしていた。


「どうやら、〈エターナル・スラッシャー〉はあなたを選んだようね。そして、その力も従来より倍以上に跳ね上がる…」


 マジェスティック・ウェポンには適格者と言う概念が存在する。誰でも使えるのがARウェポンの基本だが、マジェスティック・ウェポンは適格者が使う事で各種能力が更に引き上げられるのだ。


『エターナル・スラッシャー…?』


 神咲は未だに状況が飲み込めない中で、剣を振り下ろした。その瞬間、その剣から放たれた衝撃波が周囲を包みこんだのである。


 そして、衝撃波が収まった後に神咲が見た光景は衝撃的な物だった。


『これは、どういう事なの?』


 衝撃波が収まってからバイザー越しに見えた光景、それはダークネスアイドルや一般兵が倒れ、彼らの使用していたARウェポンも損傷しているという阿鼻叫喚の光景だった。


「これが、マジェスティック・ウェポンの力…」


 神咲はメットを脱ぎ、改めて周囲の光景を見る。一般兵のアーマーも破壊されているが、中には大破している物も存在し、今すぐにでも救急車を呼ばなくてはいけないレベルである。ただし、それはARゲームでの場合の対処法だ。


「私の名前は鷲宮奏よ。これだけの事を平然と行えるダークネスアイドルに、反撃を考えているわ」


 鷲宮奏わしみや・かなで、彼女は自分にマジェスティック・ウェポンを託した理由が分からなかった。これだけの威力を持っているなら、どうして自分でやらなかったのか?


「どうして、私だったのですか!? 貴方では駄目なのですか?」


 神咲は鷲宮に対して訴える。どうして、自分でダークネスアイドルに挑もうとはしなかったのか…と。


「言ったでしょ? マジェスティック・ウェポンは適格者ではないとフルパワーを発揮できない。こういう事なのよ」


「この力で何をする気ですか? 世界征服? それとも…」


「世界征服なんて出来る訳はないわ。ARウェポンに殺傷能力は一切存在しないと言ったはずよ。周囲の景色を見れば分かるわ」


 鷲宮は神咲に説明するが、その一方で世界征服をするつもりなのか…と言う神咲の質問にも答えた。そして、周囲を見るように鷲宮は言う。


「えっ!?」


 思わず、神咲の声が裏返る。それ位に衝撃的な光景だったからだ。


「物的損害が…全くない?」


 神咲が見た物、それは無傷のショッピングモールである。一般客も騒ぎが一段落してからは、客足が戻っている。まるで、自分だけが別の空間にいたような光景だったのだ。


「元々がARゲームだったからよ。物的損害等は一切出ないようになっている。システムのエラーが出ない限りは」


 そして、鷲宮の姿も消えた。一体、彼女は何を伝えたかったのか?


「本当に、これがゲームだっていうの? これでは、まるで…」


 しばらくすると、神咲のARスーツとマジェスティック・アーマーは消えており、元の服装に戻っていた。そして、気が付くと周囲に倒れていたはずの一般兵とダークネスアイドルの姿もなかった。回収されたのか、それともCGだったのかは定かではない。


 一つだけ分かっていた事は、エターナル・スラッシャーが自分の手元に残っており、先ほどまでの体験もゲーム等ではなく、実際にバトルをしているような感じであった事である。


 神咲は周囲を見回すが、ARゲームには欠かせない〈ある物〉を確認する事は出来なかった。それは、ARゲームの専用筺体である。


 それが意味している物は、間違いなく今のバトルが本物だった事に他ならない。


「遂に5人揃ったか」


 遠目から一連の流れを見ていたイージスは、マジェスティック・ウェポンがアクシデントはあった物の5人目の適格者に渡った事を確認した。


「戦いは、これから始まる。超有名アイドルとBL勢と言うコンテンツ生存戦争とも言える展開が…」


 その後、イージスが黒騎士の工場に戻ってくる事はなかった。荷物は整理されており、既に出ていく流れにはなっていた可能性も否定できない。


 午前11時、舞浜市某所、ダークネスアイドルの移動式キャリアではディヴァインアークが一連の様子を映像で確認していたのである。


『何て事だ。あの破壊力は、我々のダークネスウェポンをはるかに凌駕している』


 武器の破壊力は自分たちの物以上、マジェスティック・ウェポンをそう判断していた。そして、何処かへと連絡を取った。


『例の武装を急いで完成させろ! 私の武器が調整中のはずだ。それを利用しても構わない』


 一体、彼は何を急いでいるのか…。この地点では、本人にしか分からなかった。


#####


 次回予告


 マジェスティック・ウェポン、それが常識では計り知れない力を持っている事は分かっていた。


 果たして、この圧倒的破壊力は何をする為の物なのか?


 黒翼リンの正体が明らかになった時、それは新たなる戦いの引き金となる。


 次回、『エクストリームARスポーツ』

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