第1話:宇宙から現れたアイドル-The idol who appeared from the universe-
他の世界線シリーズ(なろうへ移植済の物及びpixivオンリーの物を含めて)に出てくる用語等も出てきていますが、チェックが必須という事ではありません。チェックしていると思わずニヤリと思うシーンもいくつかある…という範囲になります。
今回は、今までとは違って専門用語は控えめになるような気配もしますが…。
※相変わらずですが、超有名アイドルネタやタイムリーネタ等が非常に多い傾向もある為、苦手な方はブラウザバック等を推奨いたします。今作は至る所にタイムリーな時期ネタ等を含んでおります。タイムリーネタがあるのは、世界線シリーズでは恒例行事の気配でもありますが。
※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、フィクション扱いでお願いします。あくまで虚構という方向で…。
※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。
※この作品は『pixiv』に連載中作品の移植となっております。向こうがリアルタイム更新に対して、『小説家になろう』ではDVD及びBlu-ray収録扱いとなります。
※小説家になろうへ移植する際、エキサイト翻訳の英文追加を行っています。
>更新履歴
・2015年5月19日午後11時56分付
行間調整
西暦2014年1月10日、千葉の舞浜上空に現れた無数の宇宙船が飛来してきたのである。
飛来と言っても、テレポートのような物で現れた訳ではない。普通にどこかから舞浜まで飛んできたという表現が正しいのかもしれない。
その宇宙船の目的は一切不明であり、朝のニュースでは取り上げようというテレビ局も少数だった。
宇宙船の形状も飛行機にガワを取り付けただけのような気配も感じたが、そこへ突っ込むのも面倒と言う事でスルーしている可能性も否定できない。
それ以上に取り上げない理由は、周辺施設の宣伝にもなりかねないという事情があったと思われる。何の施設かというと…お察し下さい。
しかし、その流れがひっくり返る事になったのは、午前10時30分にとあるテレビ局で放送した、1枚の画像だった。
その画像には宇宙船から降りてくる女性の姿が映っており、それが何を意味するのか…。
【どういう事なの?】
【異星人だというのか?】
【一体、何の目的で…】
つぶやきサイトでは、テレビ局が放送した画像に関しての反応が非常に高かった。その反応を確認したかどうかは不明だが、しばらくして状況は一転する。
午前11時30分、昼のニュースは一つの話題で独占されていた。朝に放送されていた、舞浜の宇宙船に関するニュースである。
《我々は、あなた方と仲良くなる為に、宇宙からやってきました》
その女性は、透明なドレス、布面積がブラジル水着に近い水着、一昔に流行したようなスペースグラスという姿の奇抜なファッションをしていた。
『今回姿を見せた宇宙人に関しての情報は、政府からも公式発表がなく、現在調査中との事です』
男性キャスターも状況が状況なので慌てているような気配もするが、テレビと言う事もあってそうした様子を一切見せる事はない。
『日本政府は今回の宇宙人に関して、特に抵抗の意思も見られない事からしばらくは静観する構えを見せており―』
彼女は宇宙人らしいという事だが、ニュースの映像等を見る限りでは地球人にも見えなくはない。
しかし、日本政府は下手に刺激をしては大変な事になると判断し、静観する構えを見せた。
その理由は色々あると思われるが、海外にも宇宙人が襲来して自体が悪化してしまうのを防ぐというのが有力だった。
実際には、もっと別の目的もあるかもしれないが…それらの手の内を見せたくない事情もありそうである。
【アレを宇宙人と言っていい物か】
【宇宙人と言っても、無機物生命体のような物も今まで書かれていたが…】
【本当に宇宙人なのか疑問に残る。実は元超有名アイドルというオチも見えそうだ】
【アイドルの中には、自称宇宙人のような設定のアイドルもいた位だ。そんな風にも見える】
【しかし、あの宇宙船がCGなのかというと…】
つぶやきサイト等では、このように反応としてはバラバラである。
当然だが、宇宙人と言っても色々な説があって、姿が特定された訳ではない。色々なメディアでも傾向は変わらない。
#####
以下、午前10時30分頃にニュースで放送された断片的な宇宙人とのコンタクトの様子である。
午前10時頃、舞浜の宇宙船が現れた現地では、宇宙船の1つがヘリポートに着陸し、そこから1人の女性が姿を見せた。
「あなた方は一体?」
それを見た舞浜市長は疑問に思った。我々の知らない宇宙では、これが流行しているのだろうか?
『あなた方の言葉では、ダークネスアイドルとでもいうのでしょうか。我々は地球と友好を結ぶ為にやってきました』
彼女の話を聞いて、状況は若干把握したが…全部を把握したかと言うと疑問に残る。
「あなた方は戦闘の意思はないという事でよろしいでしょうか?」
それを聞いた宇宙人と初めて接触した舞浜市長の男性は質問をぶつけた。
『そうです。我々は戦争をする為に日本へ来た訳ではありません』
そして、彼女は舞浜市民と対話のテーブルを用意、自分達は侵略の為に地球に来た訳ではないという事を説明した。
会談に関しては非公開と言う事で話が進められた。その会談にはプロデューサーと名乗る人物も姿を見せたらしいが、真相は不明である。
「何故、今回の会談は非公開だったのか?」
「それだけ大きな事を議会にも通さずに行ったのですか?」
「今回の一件は、超有名アイドルのプロデューサーから進言があったという話が噂されていますが…」
「超有名アイドルの所属する芸能事務所から賄賂を受け取っているという件と関係はあるのですか?」
「今回の条件提示でBL作品に対して更なる規制を盛り込むという噂もありますが、その辺りに関しては…」
会談は20分弱で終了。そして、会談が行われた市役所前には無数とも言える報道陣が待ち構えていた。
「会談の件に関しては政府と検討した上で公開する事にしております。しばらく、お時間をいただきたい」
舞浜市長は報道陣に一言だけ残し、専用車で何処かへと向かう。何処へ向かったかは不明だが、おそらくは国会と思われる。
###
その一方で、この動きに対して何か怪しいと感じる人物がいた。彼は、舞浜の宇宙船に関しては舞浜駅にある大型ビジョンで放送されているニュースで見ているのだが…。
「ダークネスアイドル、別の世界線で見た意図的に作られたアイドルのようにも見える」
彼はユニミドというカジュアルファッションブランドの服に、背中にはバックパック、黒髪のセミショートと言う外見をしている。
「政府が様子を見る以上、我々も様子を見ていくしか方法がないのか?」
彼の名は黒騎士、この名前を持つ人物は複数存在し、コードネームやサークルネームの可能性もある。
「この世界に宇宙人は次々と否定されている事が、科学雑誌等でも言われている。それが、こんなにもあっさりと受け入れられる事自体、何かあるとしか」
そして、黒騎士はスマートフォンで何かのGPSマップを見ていた。そのマップには、足立区のとあるエリアでピンらしきものが立っている。マーカーか何かだろうか?
〈世界線上に存在する何かが、この場所にある〉
マーカーをクリックすると、メモがマーカーの下に表示された。このメモが示す物とは一体?
「彼らの狙いは間違いなく…」
黒騎士は何かの不安を感じつつも、舞浜を後にした。
1月11日、ネットでは宇宙からやってきたアイドルに対して色々な議論が展開された。中には、黒騎士と同じ事を考えた人物もいたが…。
【今回のアイドルが超有名アイドルだとしたら、どんな目的で舞浜に来たのか理由が分からない】
【全国区アイドルよりも、地方狙いなのか?】
【最近では、地方のゆるキャラが全国区になったパターンも存在している。もしかすると…】
(中略)
【しかし、政府も宇宙人と戦争をする訳にはいかないだろう。様子見ムードなのは変わらないか】
【アレを宇宙人と言うのも疑問だ! BL勢が超有名アイドルの評判を落とす為に罠を仕掛けているのかもしれない】
【もしかすると、それこそ世界の…】
中には、その理論に到達するのはおかしいと思わせる発言や、どう考えもBLと結び付かない物でもBLに結び付けて、BL勢根絶への道につなげようとするコメントも多かったように見える。
午前12時、昼のニュースでは、ダークネスアイドルの一件がトップニュースとなっていた。
『我々としては、下手に彼女たちを刺激させるのも得策ではないと判断し、舞浜市を中心としてダークネスアイドル特区を認める事を発表いたします―』
テレビに映っていた官房長官の発表によると、ダークネスアイドルに対して特区を認める事で更なる経済発展を考えているようだ。
それ以外にも、ダークネスアイドルを舞浜市の公認アイドルとしてデビューさせる事も同時に発表されている。
これに対してはダークネスアイドルも超有名アイドルと同じように、商品価値がなくなれば切り捨てられる的な発言もネット上に出てきた。
しかし、彼女達は宇宙人である。下手に刺激をして別次元の援軍を呼ばれては勝ち目はないだろう。
結局は色々と議論は展開されたのだが、ダークネスアイドルは受け入れられる流れとなったのである。情報操作があったかどうかは、定かではない。
###
同日午後1時、舎人にある工場近辺に黒騎士の姿があった。
「これは…」
工場のゲートを開けると、そこにあったのは放置された無数の人型兵器、パワードスーツ、武器の数々だった。
人型兵器は組み立てられている物は3体のみ、パワードスーツは一部でパーツの欠けている物も存在し、セットで揃っているのは数体しかない。
武器に至っては、色々とパーツを利用した後もあるらしく、パーツ取りに利用された後に放置された武器も数個ある。
しかし、それらの放置された武器類に殺傷能力等があるのかと言われると答えは『NO』である。
これらの武器は、全てARゲームと言われる最先端のゲームで使用される予定だった物だが、試作の段階で放置した物だろう。
あるいは、何かの実験をする為に持ち出したのか…。その真相は発見した黒騎士本人にも分からなかった。
パーツを利用した後は、何か新しいスーツを開発している証拠のように見えるが、色々と疑問が残る。
そこで、その内の一つであるパワードスーツを黒騎士はチェックしていた。スーツデザインは練り直す必要性もあるが、能力的には非常に高いと黒騎士は考えている。
スーツの調査中に、彼はテーブルにパソコンが放置されているのを発見した。
「このパソコンは比較的に新しい物だ。一体、誰が何の目的で…」
しかし、パソコンの存在が気になりながらも他の武器や人型兵器などもチェックする事にした。
10分を経過した辺りで、黒騎士は別の人物が来た事を悟り、何処かへと隠れた。
そこに姿を見せたのは、背広に身長179センチ位、両手にはジュラルミンケースらしき物を持っており、それ以外にも特徴的なのは…ドラゴンの覆面で素顔を隠した人物だった。
「データが抜き取られた形跡はないが、これは…?」
ドラゴンの覆面はジュラルミンケースを開ける前に、何者かが侵入したような跡を見つけたのである。
「そう言えば、あなたも黒騎士だったな」
姿を見せた黒騎士はドラゴンの覆面を見て、ふと何かを思い出したかのようにつぶやく。
「これをどうしようと考えている?」
ドラゴンの覆面は、黒騎士の目を見て何か嫌な予感を感じていた。
「超有名アイドルが衰退したという話は嘘だ」
突然、黒騎士が話を切り出す。しかも、唐突に超有名アイドルの話である。
「衰退か。確かに、そういった話があるのも事実だろう。しかし、それが別の勢力による炎上させる為の嘘だったとしたら?」
「それはありえない。この話は既に裏を取ってある。それに…」
ドラゴンの覆面は話を否定するが、黒騎士は超有名アイドルの衰退が事実だという証拠をドラゴンの覆面のスマートフォンに送信する。
「全てはBL勢のディストピアだ。彼女達にとって邪魔な存在は、何であろうと全てを許さない。だからこそ、ダークネスアイドルの正体も彼女たちにとって―」
黒騎士が流した情報、それは全てがアイドルプロデューサー等の億万長者が支配する世界と思っていたドラゴンの覆面にとっては、さまざまな意味でも衝撃的だった。
「これは!? まさか、こんな事が…」
若干女性の声になっていたようなドラゴンの覆面だったが、途中からシステムが何とか戻り、元の男性の声に戻る。
「どちらにしても、今のままでは財力を持った人間によるディストピアが始まるのは時間の問題。それを全て破壊する為に、協力してほしい」
そして、黒騎士はもう1つのデータもドラゴンの覆面に渡す。それは、1枚のケースに入ったブルーレイディスクである。
それを受け取ったドラゴンの覆面は、早速パソコンにセットして、データを読み込ませる。
〈アカシックレコード〉
データの名称を見て、ドラゴンの覆面は思わず覆面を外して真意を確かめようと考えていたが、一時的な感情に任せて覆面を脱いでしまっては、全ては水の泡になるだろう…と落ち着いた。
「何を考えているの? このデータは今日までのARゲームを支えてきた物。それのフルパワーとも言えるフルアクセスは、世界を揺るがせるほどの能力がある」
データの内容は、ARゲームを支えてきた基礎データを含め、工場に置かれている人型兵器やパワードスーツの元となった設計図も存在している。
「僕の考えた最強のアイドルを生み出し、超有名アイドル至上主義社会は幻想である事を証明させる」
黒騎士、またの名をイージスと言う。彼の目的、それは超有名アイドル商法が幻想である事を証明させ、日本経済の目を覚まさせる事にあった。
「力によって圧力を加えるのは、超有名アイドル等と変わらない。それでも、同じ事をするつもりか?」
ドラゴンの覆面は、イージスに対して問いかける。
「向こうは無尽蔵の資金力を利用して支配しているのに対し、こちらはアカシックレコードの絶大な力を利用する。どこが同じだというのか?」
イージスの答えを聞いて、何かを思ったドラゴンの覆面はジュラルミンケースの中身を開けた。
そこに入っていたのは、クリスタルにも似たような謎のプレートだった。
「これは、マジェスティック・メタルという次世代金属と言われている物…」
ドラゴンの覆面が持ってきた物、それはマジェスティック・メタルと言う金属だった。金属と言うよりは、クリスタルのような透明な部分もあり、人工物のようにも見える。
「マジェスティックか。この金属があれば、次世代型アーマーを作り出す事も可能なはず」
イージスは考える。この力を利用すれば超有名アイドルを倒す事も可能になるのではないか。
###
宇宙アイドル騒動から1ヶ月の経過した2月10日、短期間ながらマジェスティックアーマーの試作型が完成したのである。
ベースになっているのは、工場に置かれていたパワードスーツで、それにマジェスティック・メタル製のアーマーを一部でデザインを変更して使用した試作的な物だった。
これを装着する為に必要なのはARゲームでも使用しているARスーツだが、カラーリングはブルーに変更されている。形状がインナースーツになっているのは変更されていない。
これは、ARゲームでの運用を考えてのデザインと言うのもあるが、ARゲームで運用する為には一定の条件をクリアしなくてはいけないという事もあった。
使用する武器は、ARゲームで一般化しているARウェポンではなく、ワンオフとも言える仕様になっているマジェスティック・ウェポンである。
午前11時、マジェスティック・ウェポンの開発工場となっていた一角、そこでは既に完成した1つの武器をテストパイロットで運用している。
どうやら、その為に黒騎士の男性メンバー数人にも招集をかけていたようだ。
「この武器はブレイヴ・レーザーバスター、ビームチェーンソーとして運用が可能で、それ以外にもシールドとしても使用可能だ」
イージスが完成した武器の仕様書を見ながら、パソコンでデータの測定を行っている。測定の数値入力は右手だけで行っており、かなり手先が器用な気配も…。
「ネーミングセンスは別に構わない。ただ、このデザインは何とか出来なかったのか?」
ドラゴンの覆面をした人物は完成したブレイヴ・レーザーバスターを見て、デザインの方を気にしているように見える。
「既に、他の武器も完成済みだ。隣に、スペックノートと実際の武器も置いてある」
イージスの一言を聞いて、ドラゴンの覆面は衝撃を隠せないでいた。短期間で複数の武器を完成させた事に対して…。
「アレ以外にも完成させたとでもいうのか?」
ドラゴンの覆面のボイスチェンジャーが再び故障し、女性の地声が出てしまう。しかし、イージスには気づいていない。
午前11時5分、イージスが他のメンバーと試験運用をしている場所とは違うエリア内にある別工場では、ドラゴンの覆面が入口を開けている所だった。
そして、入口のゲートを開けると、そこには巨大な物を含めて複数のコンテナが置かれていた。どうやら、ここは組み立て途中などを含めてARウェポンを保管するエリアらしい。
中には、起動兵器もいくつか存在し、それらは組み立て途中である事が見ても分かる。完成したら、どれ位の大きさになるのだろうか?
「ここまでの物を短期間で…。いくら、ベースのARウェポンがあるとはいえ…」
奥のエリアへ進むと、他のコンテナとは明らかに違うような封印がされたコンテナを発見した。
どうやら、これがイージスの言っていたマジェスティック・ウェポンらしい。コンテナは全部で5つあるが、封印は特殊な物で鍵で開けられるような物ではない。
しかし、隣にあったテーブルに5つのマジェスティック・ウェポンに関するスペックノートが置かれているので、それを確認する事は可能だった。
「これは…どういう事なの? 名前も既に決まっているなんて」
ドラゴンの覆面が驚いていたのは、ブレイヴ・レーザーバスターと同様に名称が既に決まっていた事だった。彼にネーミングセンスを求めるのは無駄なのだろうか?
〈エターナル・スラッシャー〉
ショートソードタイプ、防御無効化能力あり。
〈革命・神話〉
ロングソードタイプ、形状は日本刀+火縄銃。火縄銃部分は装飾のみで、実際はレールガン。
〈ゴッド・アーム〉
グレートソードタイプ、形状は巨大なガントレット。半径5メートル内限定で、あらゆる誘導兵器を無効化する。
〈サイレント・リニアレール〉
グレートソードタイプ、コンセプトはパイルバンカー+グレートソード。その破壊力は、全武装で最強。
〈ナイトバード・フェザー〉
ショートソードタイプ、ダメージを与えたユニットに防御力ダウン効果を与える。攻撃力は比較的低いが、バランス調整がされている。ファンネルのように展開出来る。
「武器のデザインもそうだけど、色々な意味で飛躍しすぎているようにも見える」
ドラゴンの覆面はマジェスティック・ウェポンが、デザインやネーミング的にも飛躍しすぎていると考えていた。
それに加えて、単純な攻撃力はARウェポンの100倍以上と記載部分も気になっている。この攻撃力で、ARゲームに使用可能なのだろうか?
それ以外にも疑問は浮上する。マジェスティック・ウェポンが1つだけならばバランスブレイカーとして対策される可能性は高い。しかし、それが6つもあるという事である。
イージスの狙いが分からない。スペックノートを見ても、色々な専門用語ばかりで頭を悩ませる物ばかりだ。
「―でも、これだけの数を揃える必要性があるのか? それだけ、彼は超有名アイドル商法に対して不満を持っている」
ドラゴンの覆面は、イージスの持っている技術力には感心しつつも、それが超有名アイドル商法を根絶する為だけに向けられている事には、疑問を持っていた。
「これは? このコンテナだけが光っているようにも見える」
ドラゴンの覆面は、サイレント・リニアレールと書かれているコンテナが光っている事が気になり、そのコンテナを開けようとしていた。
「!?」
そして、ドラゴンの覆面が見た物、それは音楽ゲームに使用されるコントローラーのような外観、パイルバンカーとグレートソードを足したようなデザインだった。
「これが、マジェスティック・ウェポン…重い?」
ドラゴンの覆面はサイレント・リニアレールを持ち上げようとしたが、簡単には持ち上がらない。かなりの重量があるのだろうか?
スペックノートによると、サイレント・リニアレールは重量が30キロ以上あるらしい。
そして、それを運用する為に特注のARアーマーを開発している途中だという事も補足されていた。
###
試験運用から10日後の2月20日、とあるARゲームがロケテストを始めていた。ロケテ会場は西新井と北千住、竹ノ塚の3か所である。
【会場の確保的な関係だろうか?】
【ARゲームの場合、ある意味でイベントと同じ扱いになるからな。ARゲームの設置に積極的ではないエリアでは歓迎されないだろう】
【だからと言って足立区だけというのも、ロケテストを確認する的な意味でも…】
つぶやきサイト上では、ロケテストに関しての話題が出始めていたが、場所が足立区に集中している事も盛り上がりに欠ける原因かもしれない。
#
〈アイドルバトル・ロケテスト仕様書〉
このARゲームは、最大10名(5VS5)で戦うアクション系ARゲームです。
アイドルならば誰でも参加出来ますが、ロケテスト仕様で誰でも参加できるように変更しています。
〈ルール〉
1、参加するメンバーを決める。その後、ファーストとセカンドを決める。
※1対1や1対5のような変則メンバーも可能。
2、フィールドにメンバーを配置する。
3、制限時間内(30分)にどちらか片方のチームが相手戦力を撃破した方が勝ち。
#
「仕様書だけで見ても、いまいち実感が沸かないような気配がする。プレイしてみないと分からないか」
西新井の会場に姿を見せていたのは、他のARゲームでも有名なプレイヤーだった。彼女の名前は嶋村五月、20歳。
身長は170センチ、3サイズは、90、61、93(推定)、黒髪のツインテールに別のARゲームで使用されるインナースーツを着用している。
インナースーツに関しては、着ていたとしても警察に呼び止められる事はなく、一種のファッションとしても認められている。
#
〈楽曲セットのルール〉
1、基本的に5曲、1チームで15分という時間配分内で決める。
2、単純計算で3分の楽曲×5曲で15分になるが、15分の楽曲を1曲という配分はNGとなる。5分の楽曲×3曲等のように上手く時間配分をしなくてはならない。
(ファースト→セカンドと言う順で楽曲を流すのは決まりになっている為)
3、自分たちが歌う曲以外でも可能。ただし、曲かぶり(ファーストとセカンドで流す曲が同じ)は流す順番が異なる場合のみ問題はない。
(順番も被った場合は、変更を支持される)
〈ファーストとセカンド〉
曲を流す順番で、ファーストとセカンドと言うルールが存在する。関係ないように見えて、実は重要。
ハンティングスコア及びクリティカルスコアがチームスコアに重要となってくるからである。
ハンティングスコアは通常スコア+2倍ボーナス、クリティカルスコアは通常スコア+3倍ボーナスと言う表現が分かりやすいだろうか?
※ファーストが味方、セカンドが敵と仮定した場合。
味方の曲が流れている時に敵を全滅:ファースト側にハンティングスコアが入る(個別+メンバーボーナス)。セカンド側は通常スコア(個別のみ)。
敵の曲が流れている時に敵を全滅 :ファースト側にクリティカルスコアが入る(個別オンリー)。セカンド側は通常スコア(個別のみ)。
※ファーストが敵、セカンドが味方と仮定した場合。
味方の曲が流れている時に敵を全滅:セカンド側にハンティングスコアが入る(個別+メンバーボーナス)。ファースト側は通常スコア(個別のみ)。
敵の曲が流れている時に敵を全滅 :セカンド側にクリティカルスコアが入る(個別オンリー)。ファースト側は通常スコア(個別のみ)。
#
「楽曲って、どういうシステムなのかな? この辺りは…」
嶋村が疑問に思い、近くを通ったスタッフに訊ねようとしていた。しかし、楽曲については、このようにも書かれていた。
〈楽曲はライブ形式で流す〉
〈使用可能な楽曲は、アイドルバトルに収録されている曲から選択する〉
この項目だけをみると音楽ゲームのようにも見える。しかし、アイドルバトルと言う名称や仕様書を確認する限りでは、音楽ゲームには到底見えない。
〈このゲームは、あくまでアクションゲームであって、音楽ゲームではない〉
〈音楽ゲームと言うよりは、運営側で用意した楽曲をバトル中に流す事が出来るという方が、正しいのかもしれない〉
この文章はスタッフのインタビュー記事の一部である。これを見る限りでは、音楽要素よりもアクション要素の方が高いような気配を感じる。
音楽を題材にしたARゲームもいくつか存在する。それを踏まえると、何処かで差別化するような要素が必要なのかもしれない。
『まもなく、第1グループのバトルが始まります』
会場アナウンスもあったので、早速見学をする為に該当のエリアへ向かおうとした嶋村だったのだが、急に何かを感じ始めていた。
「この奥かな?」
嶋村は会場から若干離れたエリアに置かれた、1つのコンテナの前にいた。このコンテナは、本来であれば特殊な封印が施されているのだが、特にロックはされていない。
そして、嶋村がコンテナを開けた時、そこに置かれていたのは2本のビームチェーンソーだった。
デザインの方は、一般的に流通しているARウェポンとは大きく異なり、音楽ゲームのコントローラーを思わせるような鍵盤やターンテーブル等も見られる。
このデザインを見た時、嶋村はふと何かを思い出した。何処かで、これと同じような武器を使用している人物がいたような…。
「これは、ARウェポン?」
嶋村がブレイヴ・レーザーバスターに触れた瞬間、ARアーマー装着のアナウンスが表示された。このアナウンスはメットのバイザー越しに表示されるはずである。
気がついた時には、既にARアーマーとは全く違うカラーリングをしたアーマーがARスーツに装着されていた。
もしかすると、これが専用アーマーなのだろうか? そんな事を思いつつも、嶋村はバトル会場の方へと戻る事になったのである。
「このARウェポンは、通常の物よりもパワーが段違い。しかも、このスペックは…」
嶋村が感じていたパワーの違和感、それは間違いではなかった。この機体の能力はチートとも言えるような能力だったからだ。
チート能力は過去にARゲームで超有名アイドル勢が自分たちの宣伝の為に使用したという形跡もある。しかし、嶋村が感じていたのは更に別な物だった。
これは、間違いなくリアルチートと呼ぶにふさわしい能力だった。
###
3月1日、嶋村のロケテストでの衝撃デビューはネット住民にとっても衝撃的だった。それに加え、嶋村自身も何か今までに感じた事のない何かを…。
その頃、工場では他のマジェスティック・ウェポンを調整している所だった。
ロケテストで得られた嶋村のデータをベースにしている所が大きいが、それ以上に別の協力者がいた事も大きかった。
「あのロケテスト会場で、マジェスティック・ウェポンの適格者を見つけるとは…」
ドラゴンの覆面をした人物が、マジェスティック・アーマーを装着した嶋村を見て驚いていた。
「それ以上に、別の人物を発見したのも大きいですが。正直に言うと、これには驚きました」
イージスは嶋村がロケテスト初日で見せた成績が、予想外の人物を釣り上げた事に関して驚いている様子である。
「私はただ、未知のARウェポンに興味があっただけ」
黒髪のポニーテール、眼は黒色、服装はカジュアル気味という感じがする。身長168センチ、3サイズは95、58、94(推定)という外見だが、何処かで見た事のあるような…。
彼女の名前は黒翼リン、彼女がどういった経緯で参加するようになったのかは―。
「凄いですよね! マジェスティック・アイドル! 私、頑張って…」
「茜、もう少しテンション下げてくれないかな?」
リンのツッコミを受けたのは、赤髪のショートヘアにバイカーグローブ、ARインナー、身長は169CM、3サイズは78、57、79(推定)と言う女性だった。
彼女の名前は暮羽茜、嶋村にあこがれてマジェスティック・アイドルになった人物である。
「しかも、ゴッド・アームの適格者に選ばれるとは…」
イージスが驚いていたのは、扱いがもっとも難しいであろうゴッド・アームを使いこなしていた部分にある。
「後は4人目と5人目…?」
ドラゴンの覆面が、警報のなっている事に気が付いた。そして、メンバーが警報のなっている工場付近に向かうと、意外な展開になっていたのだ。
「やられた!?」
イージスも、思わず声をあげた。盗まれていたのは、〈エターナル・スラッシャー〉と〈ナイトバード・フェザー〉の2つである。
宇宙アイドル騒動、今回のマジェスティック・ウェポン強奪事件から数カ月が経過した4月1日、とある事件がダークネスアイドルと日本の関係を悪化させる事になった。
#####
次回予告
有名アイドルのミニライブ会場にて、姿を見せた謎のマジェスティック・アーマーの正体とは?
神咲佐那が目撃した光景、それは非現実を超えた世界だった。
次回、マジェスティック・アイドル『5人目の適格者』