1.詩を吟う中流貴族(ニート)な僕。
短編に投稿してしまった・・・。
スミマセン。
R15指定したけれど、性描写苦手なのでしないかも。
ダルテア国の首都の市場は今日も賑わいを見せていた。
様々な商店が並んでいる。
果物、野菜、肉、魚、反物、家具、宝飾品、武具、書籍、家畜・・・この世のすべての富の集合。
様々な商品の色鮮やかさ、人々の活気と熱気、ダルテアの首都独特の白いレンガに反射する白く眩い太陽光。
それらが合わさるこの首都はまさに大陸の宝石である。
生きとし生けるものの為の都、パラダイス。
そんな商店が密集している街の中心部を少し外れたところにリラを弾く少年がいる。
彼は建物の階段に腰掛け、一心不乱にリラを弾いている。
彼の指は並行に素早く弦を移動する。
少年らしい弾みのある、楽しげな音。陰りのない響き。
技巧にあまりこだわっていない故か深みが出ていない気もするが。
しかしむしろ思うがままに弾いているが故に彼の奔放な個性が出ているとも言える。
彼は自分の世界を構築し、その中に没頭している。
その様子を少し遠くから伺う三人の女の子達がいる。
女の子達はヒソヒソと何やら話し合っている。
「わぁー。噂の残念詩人があんなところに。」
「残念詩人?なにそれ、アガーテ?」
小柄な可愛らしいおさげの少女が尋ねる。
それに対して、アガーテと言われた少女は少年を指差した。
「あいつのこと。あいつ、どっかの金持ちのボンボンみたいだね。
いつもいい服装でそこらへんプラプラしてる。」
「ねぇ、アガーテ聞いた?アマンダの話?
彼の詩を聴いたら小一時間トイレから出てこなかったって。」
色気のある美貌を持った少女がアガーテに尋ねる。
「ああ、きいたよ。一体どうしたらそんな殺人的な詩が出来上がるのか。」
「残念詩人ってことは詩が下手なの??演奏はまぁまぁ聴けるのに。」と小柄な少女。
「下手っていうか・・・うーん。そうなのかな??かなりがっかりものなんだって。」とアガーテ。
「でもアマンダが言ってたんだけどね・・・詩はド下手で残念なんだけど、情熱だけは無駄に伝わってくるらしいわ。」と美貌の少女。
「・・・それじゃあ、アマンダはサムい詩の内容に凍えつつ、彼の情熱に浮かされたってこと??」
小柄な少女が若干顔を赤く染めつつ尋ねる。
「よく見れば、ルックスいいわね。あの子。ちょっと興味湧いてきちゃった。お金持ちみたいだし。」
美貌の少女は舌舐めずり。
「リーゼロッテ・・・あんた、相変わらず面食いだな・・・。ぶれない子。」
アガーテはため息をつく。彼女はその手の話にはあまり興味がなさそうな少年みたいな雰囲気の子である。
「時間もあることだし、一回詩を聴いてみようか??イェニも聴いてみたいでしょ??」
小柄な少女、イェニは赤くなりながら恥ずかしそうに小さく頷く。
「うん。聴いてみたいかも。どう残念なのか知りたいし。」
「イェニ・・・お前まで面食いだったのか。ふーん。まぁ・・・じゃ、いってらっしゃい。ダメージ食らっても知らないからな。先に帰るわ。また明日ね。」
手をヒラヒラさせながら去ろうとするアガーテ。
「何言ってんの。あんたも一緒に行くのよ。」
「いいよ。行きたくないって・・・ああっ。」
リーゼロッテはぐいぐいアガーテの手を引く。アガーテは引きずられる体になる。
「なんで私が行かなきゃいけないんだ!!あんたたちだけで行けばいいじゃん。」
「私たちだけじゃ声かけづらいでしょうが。」
リーゼロッテの頬が心なしか赤い。
いつも男に高飛車で彼らに対して余裕そうな態度をとる友人が乙女になっている・・・。
アガーテはその様子に唖然としたが、そういうことならば助けてやろうじゃないの、と思った。
・・・友達だもんね。助けてやんなきゃ。
心の中で腕まくりをする。
掴まれていた手を一旦引き抜き、友人の手を包み込む。
「分かった。ついてくよ。」
「んじゃ、早速行きましょうか!!いくよ、アガーテ、イェニ。」
ハイテンションな友人にアガーテは苦笑いする。
・・・なんで私はこんな決断をしてしまったのか。
アガーテは後でかなり後悔した。
少年は完全に自分の世界に引きこもっている。
リラの音は人によって違う音色が出る。
少年は自分なりの色を出すためにリラと会話しているのだ。
外界と隔絶された彼は何かにとり憑かれているような感じすらする。
そんな彼の殻を破った少女の声。
「詩を聴かせて頂戴!!」
少年が視線を上に向けると可愛らしい女の子が三人。
__うわぁ・・・。可愛い。
すっかり嬉しくなった少年は快諾した。
「じゃあ、僕が明日王宮で披露するやつでもいいかな。今練習中なんだ。
できれば評価してくれると嬉しいかな。」
「あなた・・・王宮に行くの?凄いわねぇ。もしかして高い身分なの?」
三人の中でもひときわ美貌の少女が尋ねる。顔はほんのり上気している。
「・・・そうでもないよ・・・。・・・ただの商人だからね。」
少年は少し引き攣ったような表情をした。
美貌の少女は慌てたように話題を変えようとした。
「まぁまぁ、それでも私たちにとっては高い身分よ。
それで貴方はどんな詩を披露しようとしているのかしら?早く聞かせて頂戴。」
少年は呼吸を落ち着かせると息を吸い込んだ。
「では・・・始めます。」
まずは自己紹介をしよう。僕は詩を吟じ、音曲を奏でることを生業にしている吟遊詩人…ってもそんな大層な響きは恥ずかしいな…自分の才能にそこまで自信がない。まぁ…私のことは、アマチュアひよっこド素人詩を吟う人とでも紹介しておこうかな。この物語の進行役さ。
ああそうそう、さっきまで三人の女の子達に詩を披露していたところだよ。三人とも口を抑えながら顔を真っ赤にして去っていったよ。「い・・・いいと、おっ思います・・・。」と言い残して。
そんなに感動的だった?だとしたら嬉しいなぁ。
話を元に戻そう。私はこのダルテア国、中流貴族の次男坊。裕福だよ(笑)読者諸君、誰か嫁に来ないかい?
まぁ…冗談はさておき、我が家は成り上がりの大商家で、絵に描いたような大金持ちなのは本当の話。そしてこの前、僕の父は大枚をはたいてこの国の伯爵位を買った。「うわ~コイツら、成っりあっがり~」という嘲る様な視線をひしひしと感じる今日この頃。まぁ…もう慣れちゃったから精神的ダメージはそうでもない筈・・・とはいえ上流階級は凄く苦手…。だから明日この国の女王に謁見することになってるのだけど、城に行きたくないなぁ…。雲上人を取り巻く御身分の方々からの「お前らは場違いなんだよコール」、明日は特に凄そうだし。何せ、普段は王宮に商売の要件で来る、僕達が女王との私的な謁見は初めてだから。
ああ、そうそう。今までやってた曲は明日披露する詩作なんだ。
だから三人の女の子達があんなに顔を真っ赤にして嗚咽(!?)を漏らしてくれるのならそれは出来がいい
ということなんだろうね。なんとかなりそうだ!!では皆さん、また明日!!
すっかり暗くなった夕暮れを見つめながら少年は機嫌よく口笛を吹き吹き去ってゆく・・・。
__翌日・・・。
「おはよう・・・。」
「おはよう・・・。」
「おはよう・・・。」
広場に集まったアガーテ、リーゼロッテ、イェニは気持ち悪そうな顔で互の顔を見つめていた。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「ええい、なんとかいいなさいよ・・・。ウック・・・。」
リーゼロッテはぎゅうぎゅうアガーテの腕を掴んでブンブンゆらす。
「痛いよ。ロッテ。」アガーテは顔をしかめる。
「寝ても治らない毒が全身に回っ・・・たわ。」
イェニはその場にかがみ込んで頭を抱える。
「彼の全身から発せられる情熱が・・・まとわりついて離れない・・・。
だけどフラッシュバックはあのキザで大げさな言葉だわ・・・。もう最悪。」
リーゼロッテは熱病に浮かされたようにつぶやく。
アガーテも頭痛が止まらない。
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・なんであんなキザい言葉を言って許される男がいるのか・・・。もう忘れたい。」
口を抑えつつリーゼロッテ。
「その上、奴はイケメンだからな。被害が大きすぎる。頭痛薬持ってきたよ。飲む?ロッテ?」
「もらうわ。」
「イェニも飲む?」
「うん。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・そういえば奴は明日王宮でこの詩を披露するとか言ってなかったか。」
アガーテは思い出したように言う。
「・・・そういえばそんなこと言ってたような・・・。」
リーゼロッテは青褪める。
二人は顔を見合わせる。
「あの人罰とか受けなきゃいいけど。」
「・・・だね。」
短いなぁ・・・。
更新超のろいです。亀の歩みです。
気長にお付き合いくださいまし。