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第六章 夏の日

 3年最後の夏休み。

 夕方の光が、公園の地面に長く伸びている。もう夕暮れ時なのに真夏日に到達している。

 呼び出された場所は、見慣れた近所の公園だった。

 竹内聖人が、先に来ていた。

 その隣に、俺の彼女である石田多恵が立っている。

 ほんのわずかに、距離が空いている。

 「何だよ、急に」

 そう言うと、竹内が一度だけ視線を落とした。

 それから、ゆっくり顔を上げる。

 「……飯田、ごめん」

 その言い方に、違和感があった。

 何の話なのかは分からないのに、嫌な感じだけが先に伝わる。

 「俺、多恵ちゃんのことが好きなんだ」

 一瞬、意味が分からなかった。

 言葉だけが、そのまま耳に残る。

 「はっ……何それ?」

 横を見る。

 多恵が、少しだけ俯いている。

 一年前から、隣にいたはずの顔だった。

 それが、急に遠く見える。

 「勤くん、ごめん……」

 小さな声だった。

 「多恵も、北村のこと好きなのか?」

 返事はなかった。

 ただ、視線が落ちる。

 それで十分だった。

 竹内が、少し前に出る。

 「多恵ちゃんは悪くないんだ。俺が言い出して……」

 頭の中で、何かが噛み合わなくなる。

 言葉の順番が、全部おかしく感じられた。

 「はっ……お前ら、俺に隠して会ってたのか」

 多恵がもう一度、頭を下げる。

 「ごめんなさい……」

 何に対してなのかは、はっきりしない。

 ただ、その言葉だけが繰り返される。

 「それは順番として、おかしいだろ」

 声が、自分でも分かるくらい荒くなる。

 「義理くらい、通せよ」

 足元にあった鉄棒を、思いきり蹴った。

 鈍い音がして、すぐに痛みが走る。

 それでも、止まらなかった。

 二人とも、何度も同じ言葉を繰り返す。

 ごめん。

 ごめんなさい。

 その言葉だけが、やけに残る。

 「……もういい」

 声が、少しだけ掠れる。

 「お前ら、俺に一生話しかけるな」

 それだけ言って、その場を離れた。

 振り返らなかった。

 家に帰ったあと、足の痛みが強くなる。

 靴を脱いでみると、腫れていた。

 捻挫だった。

 夜になっても、痛みは引かなかった。

 それが足のものなのか、それ以外なのかは、分からなかった。

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