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第十一章 夏の日

 気がつくと、季節が変わっていた。

 夏だった。

 湿った空気が、肌にまとわりつく。

 部活は予選の二回戦で終わっていた。

 俺の三年間はあっけなく終わっていた。

 期末考査も終わって、授業は半日で終わるようになっていた。

 勉強以外にやる事は無い。そしてその勉強が憂鬱の種だった。

 教室の空気が、どこか緩んでいる。

 家に帰って勉強しかする事が無いのに辟易しつつも帰ろうとすると、呼び止められる。

 「海行かね?」

 振り向くと、竹内が立っていた。

 特に理由もなかったが、断る理由もなかった。気分転換もしたかった。

 海までは、それほど距離はない。

 気がつくと、砂浜に立っていた。

 日差しが強い。

 照り返しが、足元から上がってくる。風も強い。

 暑すぎて気持ちいいとは思えなかった。

 竹内は、鞄からグローブを2つ出してきた。こいつは野球部でもないくせに昼休みはキャッチボールばかりやっているので常備してる。

 ひとつ取り出し、こちらに投げてよこす。

 そのまま、何も言わずにキャッチボールが始まる。

 ボールの音だけが、乾いた空気の中に残る。

 「お前、将来どうするんだ?」

 「知らん。適当に生きる」

 「お前は天邪鬼だよな」

 そのまま、しばらく続く。

 暑さのせいか、時間の感覚が少し曖昧になる。

 同じ動きが繰り返される。

 投げて、取って、また投げる。

 「お前こそ、どうするんだ?」

 「留学したい」

 また、暫くパチンパチンと、ボールがグラブにおさまる甲高い音が響いている。

 「海外で、仕事したいな」

 「そっか」

 それだけ言って、ボールを投げ返す。

 暫く黙々とキャッチボールを続ける。風が強いせいか、海にカイトが高くまで上がってるのが見える。

 「それだけかよ?」

 「聞いといてなんだが、あんまり興味無いことに気付いた」

 「ひでーやつだな」

 ボールをキャッチした瞬間今まで以上に甲高い音が響いた。

 さっきよりも、明らかに速い。そして、手のひらが痛かった。

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