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転生勇者のファンタジー力向上生活  作者: ロッシ
第9幕 予期せぬ決戦
70/70

第70話 拝啓

 鎌渡迅華様


 お元気ですか?

 うちは元気にやっています。

 

 あの日、迅華が消えたあの日、うち達は必死で探したけれど、迅華はどこにも居ませんでした。


 どうして居なくなっちゃったのかは今でも分かりません。

 チヨは最初、自分のせいで迅華を死なせてしまったってとても泣いていたけど、迅華がそんな事するとは思えないんだよね。

 チヨの代わりに自分が死んだら皆が悲しむし、何よりもチヨが責任を感じてしまう。それが分かってる迅華が、自分を犠牲に、なんておかしな話しだもんね。

 きっと迅華は、チヨは蘇生させるし、自分も生き残るつもりでいたんだと、そう思ってる。

 ただ失敗しちゃっただけなんだって、今は皆、そう納得しているよ。

 迅華が居なくなった事、受け入れるまでに少し時間は掛かっちゃったけど、あれから1年。

 それでも皆、それぞれに、進む道を見付けました。


 星さんは、消滅して逝ってしまいました。

 元々、迅華の役に立つのが目的だって言ってましたし、迅華が居なければ現世に留まる意味は無いって、笑って逝きました。


 京子も、小説を書き終えたら、満足して消滅して逝きました。

 京子の小説はやっぱり面白くなくて、ぶっちゃけコンテストとかには引っ掛からなかったけど、それでも自費出版で本を装丁して、とても満足そうでした。


 ふたりは逝ってしまったけど、その他の皆は元気にしていますよ。


 駒場先輩は、今はチヨと二人三脚で霊媒師をやっています。

 迅華と一緒に立ち上げた【真九郎コンサルティング】を引き継いで、本格派の霊媒師として活躍してます。

 ま、ほとんどはチヨのお手柄なんだけどね。


 薫子さんはね、なんと、フルール勇703号室に引越しして来たんだよ。

 もう霊能力は無くしちゃったけど、その経験とか知識を活かして、駒場先輩のアドバイザーをやってくれてます。


 そして最後に、うちの事なんだけど。

 うち、薫子さんに弟子入りして、霊媒師を目指してます。

 相棒となる式神は、タケルです。

 ぶっちゃけ、麒麟やチヨと比べるとマジ雑魚で使い物にならないんだけど、そこはほら、うちらって迅華の遺志を受け継ぐ者じゃん?

 力よりも対話で解決する除霊の後継者じゃん?

 だからいいの。雑魚でもいいの。

 うちら一生懸命、霊達の話しを聴いて、解決してあげてるんだ。

 霊達の悩みって本当に色々だよね。ま、人間でも幽霊でも、悩みが色々なのは当然だけどね。

 そんなたくさんの霊達の悩みを聴いてるとさ、迅華がどれだけ凄かったのかって、改めて思い知らされるよ。

 だけどさ、うちら、迅華と一緒に過ごしたあの春休みの時間を、絶対に忘れない。

 絶対に忘れないし、迅華にまた会った時に胸張っていられるように、カッコよくて善い者の霊媒師になるよ。


 いつかさ、また、会いたいよ。

 会いたくて会いたくて、仕方ないよ。

 ねぇ、迅華。

 今なら、前よりももっともっと、迅華の言ってた事が理解出来ると思うし、もっともっと、力になれると思うんだ。

 迅華。

 帰って来て欲しいな。




 トゥルルル……トゥルルル……


 夕実が手紙をそこまで書き終えたところで、真九郎コンサルティングの代表電話として使っているスマホが着信音を奏でた。


「はーい、心霊現象でお困りならお任せ、真九郎コンサルティングでっす!」


 勢い良く電話に出ると、相手はすぐに話し始めた。

 低いが耳障りの良い、男性の声だった。


『私、警視庁捜査一課の中東(なかひがし)と申します。実は心霊現象というものについてご意見を頂戴したくご連絡を差し上げました』

「え!? 警察の人が!? 心霊現象で我が社に!?」

『ええ。以前から都内で起こっていた案件なのですが、カメラ映像に残らない存在による暴行事件というものがありまして』

「はぁ、カメラ映像に残らない……暴行事件?」

『最後に起きたのは約1年前の渋屋区での事件で、それからは全く音沙汰が無かったのですが、つい最近、同様の案件が発生しまして』

「1年前の渋屋? それってもしかして、日本刀を持った女性によるとか言う?」

『ご存知でしたか。正にその件です。それと同様に、今回も日本刀を携えた女性が闇バイトの元締めグループを襲撃したとされています。ですが、その主犯とされる女性の目撃情報は多数あるものの、肝心の映像が残っていない』

「カメラが壊れてたんですかね?」

『いえ、映像自体は残っているんです。ですが、その女性の姿というものだけが、映っていない。まるで、透明人間でもそこにいるかのように』

「ほうほう……カメラに映らない、日本刀を持った女性の……透明人間」

『以前から発生してはいたのですが、死傷者は出しておらず、しかもきちんと警察に通報もされている。要はダークヒーロー行為とみなされて、上からは黙認されてきました。とは言え、違法な私刑行為には違いない。現状では私個人の一存ではありますが、心霊現象の専門家にご意見を頂戴したく、ご連絡した次第です』


 そこまで聴いた夕実は、勢い良く立ち上がった。


「もっちろん、お引き受けします! と言うか、その事件が起きたの最近て言いましたよね!? いつ、どこでですか!? てか、うちらも現場見せて貰ってもいいですか!? え、ダメ!? でも、近くでお話し聴かせて貰ったりとかは!? ええ!? オッケですか!? あざますあざます!」


 中東刑事とのアポ取りを終えると、夕実はすぐに駒場のスマホを鳴らした。


「あ! 先輩!? あのね、あのね!」


 夕実はこれでもかというくらい大きな声で、はっきりと伝えた。


「迅華、いるかもしんない!! どっかに!!」



~おわり~

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