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第56話 探索方法

「でも、探すってどうやるの?」


 3人の意志は固まった。

 固まりはしたが、だからと言ってすぐに動けるものでもない。そもそも、何をどうするのかがまるで分からなかったのだ。

 夕実が真剣な顔で迅華に問い掛けた。


「それに、問題は、迅華さんが安芸薫子(あきのかおるこ)を探し当てたとして、どうやって退散させるんですか? 迅華さん、前に負けてしまったって言いましたよね?」

「それはまぁ……話し合いですが……」

「決裂した場合はまた戦うんですよね? 手はあるんですか?」

「そこは、あれです。今の私には前と違って、星さんがいますから」

「え、ひょっとして……」


 夕実は数日前のニュースで、東京渋屋区の雑居ビルで、女性を監禁暴行していた闇金グループが逮捕された事件を目にしていた。


「あの日本刀の女って、マジで迅華?」

「あ、バレてしまいました? そうなんですよ。星さんの力を借りて、剣を具現化して使う事が出来るようになりまして。場合によってはそれで交戦します。それなら人間相手でも私もやりようがありますので」


 とんでもない事を口走った迅華に、駒場が慌てて否定意見を飛ばした。


「いやダメですって! 生身の人間相手に日本刀で戦うって、現代日本でやっていいような行為じゃないですから! 迅華さん、捕まっちゃいますよ」


 が、それに異を唱えたのは夕実だった。


「誰も見てなければいいんじゃない?」

「ダメに決まってるだろ! どうすんの、本当に迅華さんが殺人犯になっちゃったら!」

「あ、それは絶対にダメなやつ」


 ふたりが言い合っている中、迅華が口を開いた。


「大丈夫。殺したりはしませんよ。私はあくまで勇者ですよ? そんな事はしません。まずは話し合い。それでダメなら実力行使ですが、殺したりは絶対にしません」

「ならいいんですけど……約束ですよ?」

「分かってますってば」

「それで、探す方法だったけど……」


 駒場が言いかけたところで、夕実が大きく挙手をした。


「うちは分かってるぜ? その辺の浮遊霊に聴き込みをですよね!?」

「多分そう言うだろうと思ったけどね。一応僕の懸念を言うと、浮遊霊がその安芸薫子を目撃して、それを僕達に伝えて、徐々に迫っていくとするよ。もしそれに感ずかれて、周囲の浮遊霊を除霊し始めたらどうするんだよ? 周囲に霊の居ない場所を追っていく形になって探しやすくはなるけど、迅華さんにとって不本意な形にならないかい?」

「え!?」


 駒場の放った非常に現実味を帯びた懸念に、夕実は眉根を寄せるしかなかった。


「それは……まぁ、そうです」


 恐らくは迅華もその可能性を感じていたのだろうが、だからこそ、堂々と提案も出来なかったのだろう。


「と言う事は、迅華は今、無策って事?」


 夕実が締め括った。


「そうですね」


 迅華もまた、バツが悪そうに頷いた。


「迅華さん。探したい気持ちは分かりますけど、無策の状態であまり前のめりにならない方がいいです。まずは、方法を模索しましょう」

「駒場先輩が率先して仕切ってるって事は、先輩には作戦があるって事ですかね?」


 珍しく勘良く、夕実が駒場に問い掛けた。


「一応、君の案よりは安全なものは考えてるよ」

「あー! 先輩、嫌味っぽいですね。勿体ぶらずに教えて下さいよ」

「なんだよ、たまには良いだろ? いつも君におちょくられてるんだから」

「はいはい、すいませんね! んで、案は何ですか?」

「霊的な方法を使えないなら、僕達が使うのは文明の利器だよ」

「文明の利器? それってまさか、街中の防犯カメラをハッキングするとか、そういうSF的な事じゃないですよね?」

「いや、それが出来たら1番簡単なんだけどね。それは君の言う通りでSFだよ。無理でしょ」

「じゃあ何ですか?」

「でも発想は同じだよ。ライブカメラを使うんだ」

「あ、なーる!」


 駒場の一言に、夕実は納得したように手を叩いた。


「え、なんですか?」


 が、迅華の方はなんのこっちゃ分からないらしく、ストレートに首を傾げていた。


「あのですね、この勇市は神社仏閣の多い、京都と並ぶ日本有数の観光地なのは知ってますよね?」

「ええ、存じ上げてますよ」

「それで、観光地にはその場所の混雑具合なんかを確認可能なライブカメラが設置されてる事が多いんですよ。誰でも視聴可能な」

「え? 公共の盗撮ですか?」

「めちゃくちゃ人聞き悪いですね、それ。違いますよ。ちゃんと公表されてますし、誰でも視聴可能だって言ってるじゃないですか。それでですね、勇市のライブカメラは3箇所ありまして、駅前、駅から最も大きなお寺に向かう参道の入口、それから、そのお寺の大門前なんです」

「はぁ。それがどうしたんですか?」

「今いるアパートのあるここから駅に向かうには、必ず駅前のライブカメラの前を通らないとならなんいんです。だから、そのカメラを監視すれば、確実とは言いませんが、かなり高確率で探し人を見付ける事が出来るんですよ」

「ふーん。そうなんですか。でも、車とかで移動してたら分からなくないですか?」

「ええ、そうですね。ですが、駅を利用しないなら、少なくとも電車で移動する線は消えます。車で街を離れたか、まだ街に潜伏しているかのどちらかです。それだけでも十分な情報になると思いますよ」

「うーん。でもまだまだ確実性の低い手段ですね。ですがそれでも、非常に参考になりました。その手を使う発想は私にはありませんでしたから」


 難色を示していた迅華だったが、ここへ来て突然に意見を翻した。


「カメラをハッキングするという手は私の中にはありませんでしが、そういう事も出来るのですね」

「え? 迅華、まさかそんな事も出来るの?」

「まさか。私は機械とかちんぷんかんぷんですよ。でもですね、カメラに霊を憑依させて映像を覗き見すればいいという方法を思い付きました。これおふたりのお手柄ですよ」

「出たー! やっぱり霊能操作!!」

「この方法ならば、恐らくは安芸薫子に霊の気配を悟られる心配も無いでしょうから、安全かつ広範囲での探索が可能だと思います」

「でも、そんなたくさんの霊を一度に操れるの?」

「それにはかなりのファンタジー力を要しますね。なので、一旦戻りましょう。私の幽霊マンションに」


 一気に自信を取り戻したように凛とした表情で引っ張ってくれる迅華の姿に、夕実も駒場も内心で奮い立つのであった。

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