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転生勇者のファンタジー力向上生活  作者: ロッシ
第7幕 金谷市へ
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第45話 逆霊媒

 結論から言うと、駒場源二はやはり霊媒師では無かった。

 正確には、霊媒師を目指しており、その修行を行っている最中の霊媒師見習いだった。

 駒場源二は蘆場正安に師事し、除霊活動を学んでいた。

 故に彼は幾人かの霊媒師の活動を知っていて、それを手記としてまとめる事が出来たのだ。

 その修行の中、件の蘆場正安無理心中事件が起きたのだった。

 彼が本当に正安に依頼を受けて彼を殺害したかどうかまでは判別しなかったが、彼が霊媒師として大成していない以上は、迅華の推測通りの事が起こったと考えるのが妥当である。彼らの結論はそれで落ち着いた。

 そして資料を読み解いていくと、彼が蘆場正安に付いて何度かの除霊に立ち会った事が判明した。

 その中の一つ。北陸地方での除霊依頼。

 これに駒場源二も帯同していた事実も残されていた。


秋川(あきかわ)県、金谷(かなや)市。北前船で財を成した、そこのとある豪商の依頼で、正安と源二は除霊を行ったようですね」


 古ぼけたノートに指を這わせつつ、駒場が呟くように言った。


「詳しい住所は書いてあるんですか?」


 駒場の脇から覗き込む夕実の質問に、駒場は首を横に振った。


「住所は書いてないね。でも、その家の苗字は書いてあるよ。簗田(やなた)家らしい。北前船の豪商で苗字も分かっていれば、その家がどこにあったのかは割と簡単に分かるはずだけどね」

「じゃあもう追い詰めたも同然ですね! 先輩のご先祖様が悪い人じゃないって判明しましたし、後はあの女の人の霊がそこから来たのかを突き止めるだけですよ!」

「いやまぁ、まだ推測でしかないけどね」

「先輩もしつこいですねぇ。その場に居たわけでもないんですから、本当の事なんて本人しか分からないですって。じょーきょーしょーこって言うんですか? そこから分かってる事が、うち達には真実ですって」

「いや、状況証拠は駒場源二が蘆場正安を殺害したってだけなんだけどね」


 フォローになってないフォローをかました夕実に呆れつつも、その気遣いはしっかり伝わっている駒場はぎこちなくも何とか笑顔を浮かべるのだった。


「まぁとにかくですよ。源二さんの真実は大まかにでも分かったんですから、次に進みましょう。金谷市でしたっけ? あの女性の霊がそこから来たのかどうか。それを探りに行きましょう。彼女の名前や出自が分かれば、彼女に記憶を呼び起こさせる事が出来るかもしれませんし、そうすれば対話も可能になるかもしれませんから」

「そうですね。金谷市ですか。少し遠いですが、岩野(いわの)まで出て北陸新幹線に乗ればそんなに時間は掛かりませんね。明日にでも行ってみましょうか」

「えぇー? 明日ですか? 明日はうち、法事があるんで無理ですって。それに行けたとしても、母が許してくれるか分かりませんし」

「ああ、そう言ってたね。じゃあ迅華さんと僕のふたりで行くしかないね」


 駒場がそう口走った直後、迅華が即座に答えた。


「え? 私は行きませんよ?」

「「ええ!?」」


 それには夕実も駒場も驚いた。


「なんでよ!?」

「迅華さんが行かないと困るんですけど」

「いやいやいや、新幹線乗るんですよね? 無理ですよ。私、そんなお金無いですから」

「あ、確かに。片道で1万円以上掛かりますね」

「ですよね? 私にそんな大枚ははたけませんって」

「え? じゃあさ、必要経費として紅沢社長に請求したら?」

「君、なんで状況証拠は片言だったのに必要経費は滑らかに言えたんだよ。それは無理だと思うよ。普通の人に流れを説明したとして、わざわざ金谷まで行く理由がちゃんと伝わるとは思えないし。何なら、遊興費を出せって言ってると捉えられかねないよ」

「ですよね? なので、私はパスです」

「じゃあ先輩が奢ってあげれば?」

「いや……流石にそこまでは僕も出せないかな。バイトで貯めたお金はあるけど、そんなたくさんあるわけじゃないし」

「ええー!? じゃあ、本当にひとりで行かなきゃですね」

「うん、そうなるね」


 自身なさげに呟いた駒場に、迅華は笑いながら言った。


「大丈夫ですよ。私は行きませんけど、代わりにタケルさんを付かせますから」


 迅華がその名を出した途端、やはりタケルが突然天井から首を吊って現れた。


「はい! 迅華さんの言いつけであれば、俺は野郎ふたり旅でも問題無いです!」

「え、なんでタケルなんですか?」


 ハイテンションなタケルとは対照的に、駒場はやはり戸惑ったように尋ねた。


「まぁ、あれです。タケルさんは今、私が使役している式神と言うか使い魔と言うか、そういう関係性になってまして。逆霊媒とでも言いましょうかね。私が遠隔でタケルさんの意識を乗っ取って憑依する事が可能なんですよ」

「逆霊媒!? 霊に自分の意識を憑依させる!? マジ怖いんですけど!!」


 迅華から発されたあまりの衝撃発言に、夕実はどてーん! っとひっくり返って驚いていた。


「なのでまぁ、私は行きませんが、タケルさんを介して会話や見聞きが出来るんで、行く必要は無いって事です。ただ……」

「ただ?」

「タケルさんの霊力が結構消費されるので、1日に1回は充電しないと消滅します。私には影響無いですけど、タケルさんが消えます」

「ドンと来いですよ! 夜中にどっか神社とか廃病院とかトンネルに連れてってくれれば大丈夫です! ちゃんと地縛霊がいる心霊スポットに!」

「いや僕がそれやるんだよね? ひとりで行くの結構怖いんだけど」


 ドンと来いと同時にドンと胸を叩いたタケルとはやはり対照的に、駒場はドン引きしているようだった。


「大丈夫ですって。一応は私の意識が憑依してるんで、半分は私が同行してる状態ですから」

「でももし悪霊とかと出くわしたら、戦えるんですか?」

「そこはタケルさんの雑魚パワーで対抗するので、期待はしないで下さい」

「やっぱり嫌なんですけど!」


 遂に駒場も夕実同様にどてーん! っとひっくり返るのだった。


 しかし、四の五の言っても始まらず。

 一応は日程を1日ズラして夕実も同行出来るよう調整を試みたものの、やはり母の牙城は崩せずに、駒場ひとりで金谷市に向かう事になったのであった。


「んじゃ、いってらっしゃーい!」


 翌朝、迅華に見送られ、駒場はひとり電車に揺られて勇市を後にした。

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