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転生勇者のファンタジー力向上生活  作者: ロッシ
第1幕 転生勇者は霊媒師
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第4話 転生勇者とファンタジー力と霊媒師

「まぁ、それは半分冗談で半分本気なんですけどね」


 ひっくり返った夕実のリアクションに笑いながら、迅華はゆったりと続けた。


「やっぱり冗談でしたよね!? 流れ的にそうだと思いましたよ!」


 起き上がりこぼしのように瞬間的に起き上がると、夕実は迅華に詰め寄った。


「だっはっは、バレてましたか。まぁ、私が霊媒師をしている理由がそのファンタジー力なんですよ。この世界にはファンタジー要素ってほぼ皆無じゃないですか。もの凄い昔は存在してたみたいですが、既に廃れており、今は科学文明一直線。そんな世界において、数少ないファンタジー力が顕在している場所っていうのが、いわゆる心霊スポットな訳ですよ」

「あ、なるほど。だから、霊媒師なんですね」

「そういう事です。職業として携われば、率先してそういう場所に行くのも怪しまれませんし、むしろ情報も入りやすくなる。私にとっては天職のようなお仕事という訳です。元々、吾郎さんの会社から依頼があったのも、他の不動産業者さんからのご紹介だって聞いてますよ」


 迅華の説明はとても筋が通っており、納得のいくものであった。


「でも、本当に霊って存在するんですか? うち、そういうのがいるのは否定しませんけど、実感は出来ないタイプなので」

「ええ勿論ですよ。だって私の生命の源ですので、いてくれないと困ります」

「まぁ、確かに。じゃあ、迅華さんは本気で霊を見たり出来るって事ですか?」

「はい。その辺は昔取った杵柄と言いますか、元勇者ってのが効いてますね。私、昔は対アンデッド系を得意としてたんで、むしろよく見えます。こっちの世界の人達は、少し感じる事が出来る程度で基本的には接触出来ませんのでね。私にとってはファンタジー力独り占め状態で非常に助かってます」

「え!? でも、霊媒師って割といますよね!? 日本には陰陽師とかいますし、海外にもヴァンパイアハンターとか道士とかいますよ!?」

「ああ、あれは完全にポーズですよ。多分、少し見れるくらいの人達が、雰囲気でやってるだけですね。この世界の人達は霊に接触出来る程の魔力は持ってません。商売上の演技みたいなもんでしょうね」

「マジか! てか、魔力とか必要なんだ、霊と接触するのって」

「はい。その辺も私が元勇者で助かった理由です。これがガチ戦士とかガチ拳法家とかだったら詰んでましたね。あの辺のジョブって魔力無い勢がなるやつなので。いるはいるんですよ、生まれつきノン魔力な人って」


 饒舌に語る迅華だったが、その内容に夕実はどことなく気落ちしているようだった。


「じゃあ、うちもそのノン魔力勢なんだ」


 オカルト話には興味は無いが、実際に存在する出来事だと知った今、どんなものであっても才能が無いと自覚するのは残念なものだ。

 夕実の心情はそんな複雑なものだったが、迅華はその複雑を察したようだった。


「夕実さんも今は実感出来ないだけです。素養はあるとお見受けしますよ」

「え? マジですか?」

「はい。そういった霊的なものは少しでも魔力を保持していれば感じられますので。後は意識の持ち方です」

「そ、そうなんだ……」

「例えば、初めて森に入った人は全ての木が同じに見えるはずです。森の中で木の種類を見分けられる人は、木についての知識を持っている人だけですよね? つまり霊も、これが霊なんだ、って知識を得られれば、見分けがつくようになるってことです」


 夕実は自分の手のひらを広げてみると、まるで初めてネイルをした時のような新鮮な気持ちでまじまじと見入っていた。


「ま、見えても触れなければ何の意味もないんですけどね!」


 その気持ちについては察してはいないのか、迅華は額に手を当ててテヘペロしていた。


「それで、結局はファンタジー力って何なんですか? 転生者であるあなたに必要なのは分かったんですけど、それってうちらにはどんな影響があるんですか?」

「あ、そこが半分分かってないってとこなんですよね。私に必要なのは分かるんですけど、なんで必要なのかは分からない。ま、空気とか食べ物みたいなものって認識ですかね」

「そうなんだ。じゃあ、うちらにはあまり意味が無いんだ」

「そこも分からないですね。自分事じゃないので、考えた事もなかったですし。ただ、ひとつ言える事は、ファンタジー力が強い状況になれば私は体の調子が良くなりますし、強ければ強い程、昔みたいに勇者の力の行使が出来るようになります。なので、私は出来る限り強いファンタジー力のある場所に住みたい、もしくは集めたいと思っている。それが今の私の人生の目標ですね」

「え!? 勇者の力!? それって、魔法とかそういうのが使えるようになるってこと!?」

「ええ、その通りです。これまでも何度かはそういう場所に行った事がありますので間違いないです。ただねぇー、ファンタジー力が強い場所ってそうそう無いので、中々良い場所は見付からないんです。あったとしても、この世界では住んではいけない場所がほとんどで。トンネルとか廃屋とか、そういうの多いじゃないですか。勝手に住んだら逮捕されるんですよ。嫌になっちゃいますよね」

「じゃあ、事故物件に住んでいたのは、生命維持の為ってこと?」

「ま、有り体に言えばそうです。それこそ10年前くらいまでは家賃払って住んでましたけど、私、お給料貰う為に働くと、ファンタジー力がめちゃくちゃ消費されるらしいんですよ。その当時はいつも体調最悪で、欠勤も多かったです。なので定住するのは止めました。大体いつも1週間くらいの時間を貰って事故物件に無料で住まわせて貰って、その間はファンタジー力を得て生きてます。それで、期日が来たら除霊をして、次の物件へ移動する。それが霊媒師のお仕事の実態ですかね」


 迅華の説明に夕実は妙に納得していた。

 つまり迅華は、この世界で生きる為には心霊スポットと関わるしかない。霊媒師を続けるしかない。自由に見えて全く自由ではない。それは何だか、とても大変な人生なのではないか。

 納得だけではなく、どこか迅華に同情している自分にも気が付いていた。


「とりあえず私は明日から1週間、吾郎さんに依頼された事故物件に住ませて貰う事になりました。その間はまた会う事もあるかもしれませんね」


 夕実の気持ちを知ってか知らずか、迅華はにこやかな笑顔を投げ掛けてきた。


「ね、依頼された物件ってどこなの? もし良かったら、うちが案内してあげようか?」


 自分でもどうしてこんな申し出をしたのかは分からない。ただ、自分も何か力になれればと、そう思っただけなのかもしれない。


「いいんですか? じゃあお言葉に甘えましょう。宜しくお願いしますね」

「うん、明日の朝、父にマンションの場所を聞いておくから」

「はい、助かります」


 こうして、夕実は迅華に付いて事故物件へと赴き、彼女の除霊に立ち会う事になったのだった。

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