アイアンミュール
地下へ降りる階段は、途中から“階段だったもの”に変わっていた。
欠けた段差、崩れた縁、湿ったコンクリの裂け目。そこに溜まった泥水が、ヘンリーの靴底を嫌な音で吸い込もうとする。
それでも降りた。
降りなければ、もう何も取り戻せない気がしたからだ。
ランタンの火は小さく、光は狭い。狭い光は、世界を細く切り取る。細く切り取られた世界の外側で、何かがずっと息をしている気がした。
天井の穴から落ちてくる水滴が、規則的に金属を叩く。音が広がるたび、地下の広さが分かって、腹の底が落ちる。
「……ここが、古代都市の地下格納庫跡」
ヘンリーは自分の声が震えているのを自覚して、咳で誤魔化した。
まだ身体は万全じゃない。熱は引いたが、深く息を吸うと胸の奥が擦れる。焦って動けば倒れる。分かっているのに、分かっているだけじゃ足は止まらない。
隣にいるラブは、変わらぬ微笑みを浮かべていた。
けれど“変わらぬ”のに、どこか違う。
微笑みの角度が、ほんの少しだけ固定されたみたいに見える瞬間がある。視線が一拍遅れる瞬間がある。何より、歩幅が一定すぎる。生き物の揺れじゃなく、正確さの揺れだ。
「ヘンリー、足元にお気をつけください。ここは……落盤が多いです」
「分かってる。……ラブもな」
言ってから、ヘンリーは自分の言葉が妙に刺々しかったことに気づいた。
“ラブもな”は、気遣いのはずなのに、命令みたいに響く。命令みたいに響くのが嫌で、ヘンリーはすぐ視線を前に戻した。
格納庫の扉は、想像よりもずっと大きかった。
錆び付いた巨大な扉が、半分だけ開いている。こじ開けられたというより、内部から押し広げられたような歪み方だ。扉の縁には擦れた跡が残っていて、金属が金属に噛みついた傷みたいだった。
ヘンリーは息を呑んだ。
「これが……本当に、人類が作った“防衛装置”の眠る場所なのか」
ラブは頷く。
「記録には、そう残されています。人類が、自分たちを守るために作った装置。ですが……」
「ですが?」
ラブは一瞬だけ言葉を切った。切った“間”が、ヘンリーの心臓に悪い。
ラブはすぐ微笑み直す。
「起動した場合、私たちを守るとは限りません」
その言い方が、妙に現実的だった。
ヘンリーは背中が冷えるのを感じながら、格納庫へ足を踏み入れた。
中は広く、天井はところどころ崩れて空が覗いていた。そこから落ちる薄い光が、埃を銀色に浮かび上がらせる。
油の焦げた匂いが混じる。古い機械油ではない。焼けた“記憶”の匂いに近い。嗅いだ瞬間、口の中が苦くなる。
そして、奥に――いた。
巨大な人型のシルエット。
人の形をしているのに、人のための大きさではない。
装甲は剥がれ、骨格が露出し、ケーブルが内臓みたいに垂れ下がっている。損傷はひどい。それでも“巨大である”というだけで、ヘンリーの身体は勝手に恐怖の姿勢を取る。
「……鉄の巨人」
ヘンリーは、誰にでもなく呟いた。
祖父が、昔の昔にだけ口にした言葉。
子どもの頃は、童話の怪物だと思っていた。
いま目の前にあるのは、童話なんかじゃない。童話の顔をした兵器だ。
ラブがそっと言う。
「設計図を。まず、動力炉の位置を確認しましょう」
ヘンリーは鞄から設計図を出し、広げた。紙は擦り切れて、端は破れている。大事に扱っているのに、紙だけが先に寿命を迎えようとしていた。
ラブはそれを丁寧に受け取り、巨人の胸部付近――心臓にあたる位置と照らし合わせる。
「……ここです」
ラブが指差した箇所へ近づいた瞬間、ヘンリーは眉を寄せた。
「塞がってる……?」
動力炉のハッチは、瓦礫で完全に埋まっていた。崩落した天井の破片が積み重なり、金属板が押し曲げられ、開く余地がない。
まるで、誰かが“開けさせない”ために封じたみたいだった。
「こんなの……僕らだけじゃ無理だろ」
ヘンリーが吐き捨てると、ラブは穏やかに答えた。
「時間はかかりますが、撤去は可能です。最善を尽くしましょう」
“最善”。
ラブの口から出る“最善”は、いつも怖い。
最善のために、自分を削る言い方をするからだ。
ヘンリーは工具を取り出し、瓦礫に手をかけた。
力を入れるたび、胸が痛む。痛むたび、余計に力が入る。焦っている証拠だ。焦れば失敗する。分かっている。分かっているのに、時間が足りない未来が頭の中で暴れ回る。
ラブも瓦礫撤去に加わった。
しかし動きが、どこかぎこちない。
いつもなら無駄のない動線で、ヘンリーの作業を助ける位置に自然と入るのに、今日は一拍遅れてから動く。腕を伸ばす角度も微妙にずれる。ケーブルに足を引っかけそうになって、わずかに体勢を崩す。
「ラブ……」
ヘンリーが声をかけると、ラブは微笑みを作った。
「問題ありません。少し、内部の補正が不安定なだけです」
内部の補正。
そういう言い方をされると、ヘンリーの胸が痛む。
“体調が悪い”じゃなく、“不安定”だ。機械の言葉で言われるほど、彼女が壊れかけに見える。
瓦礫をどけ、金属板をてこで持ち上げ、やっとハッチの縁が露出した頃には、時間の感覚が薄れていた。
汗が冷え、指が痺れ、腕が震える。
それでも、開いた隙間は小さく、暗い。
ヘンリーはランタンを近づけ、覗き込んだ。
「……真っ暗だ。何も見えない」
「内部電源が死んでいる可能性があります」
ラブの声は冷静だった。冷静すぎるのが怖い。
ヘンリーは設計図の線を指で追い、動力供給ラインを頭の中で組み立て直した。
その瞬間。
奥から、低い唸り声が聞こえた。
最初は遠い。
遠いのに、骨に触る音だった。
獣の咆哮みたいで、機械の回転音みたいで、どっちでもない。どっちでもある。
ヘンリーは反射で振り向いた。
「今の……何だ!?」
ラブが、表情を変えずに言う。
「……後ろへ」
その声の低さが、逆にヘンリーの血を凍らせた。
“危ない”よりも怖い。命令よりも怖い。
それは、知っている者の声だった。
格納庫の暗闇の奥。
そこに、赤い光が灯った。
一つ、二つ――では終わらない。
無数の赤い光。
点が線になり、線が面になり、闇が“目”で埋まっていく。
ヘンリーの喉が鳴った。
「……まさか」
赤い光は、巨人の顔の位置から灯っていた。
つまり、あれは――目だ。
巨人が、ゆっくりと動き始めた。
金属が軋む。
関節が悲鳴を上げる。
それでも動く。動いてしまう。
眠っていたはずの怪物が、いま目を覚ます。
床が震える。埃が舞う。天井のひび割れから砂が落ちる。
ヘンリーは足が縫い付けられたように動かない。怖いからじゃない。怖さを感じる暇がないほど、状況が大きすぎる。
ラブが、ヘンリーを庇う位置に立った。
その動きだけは、迷いがない。迷いがないのが、いちばん怖い。
「起動してしまったようです」
ラブの声は落ち着いている。落ち着いているのに、胸元のランプが微かに明滅した。
ためらっているみたいに。いや、葛藤しているみたいに。
ヘンリーは息を呑む。
「ラブ……お前、知ってるんだろ。これが何か」
ラブは一瞬、黙った。
黙った間に、巨人の赤い目が完全に焦点を結ぶ。
その視線が、ヘンリーたちを捉える。
“見ている”ではない。“照準を合わせている”。
巨人の内部から機械音声が滲むように響いた。
言葉は崩れていて、けれど意志だけが明確だった。
――脅威を、排除します。
ヘンリーは喉がカラカラになる。
「脅威って……僕らのことか? 何もしてないのに!」
ラブは小さく首を振る。
「していないから、脅威ではない。……その理屈が通じる相手なら、苦労はしません」
巨人の肩のあたりが動いた。
砲台だ。砲台が回転する。
錆び付いているのに、動きは正確だった。正確さが怖い。
ヘンリーは一歩下がり、掠れ声で言った。
「逃げるぞ、ラブ!」
ラブは動かなかった。
動かなかったのではなく、動けないのではなく、“動かない”を選んだ姿勢だった。
その背中が、ヘンリーの心臓を殴る。
「ヘンリー」
ラブは、初めて“様”を付けなかった。
呼び方が短いだけで、胸がぎゅっと縮む。
「あなたは、生きてください」
「……やめろ」
ヘンリーは吐き捨てた。
怒りだった。恐怖だった。拒絶だった。
ラブがそう言うたびに、“自分の命と引き換え”が前提になる。前提になるのが、もう嫌だった。
「生きるのは一緒だ。勝手に置いていく台詞を言うな」
ラブの微笑みが、ほんの少しだけ揺れた。
揺れたのは、嬉しさじゃない。
“命令が揺らぐ”時の揺れだ。
「……私は、この装置を止める方法を知っている可能性があります」
「可能性じゃなく、はっきり言え」
ヘンリーは言ってしまってから、言い方の鋭さに自分で驚いた。
だが、優しく言う余裕がない。
今ここで、優しさは死ぬ。
ラブは、胸元のパネルに指を当てた。
そこに、見たことのない紋章の痕が薄く残っている。煤の下に隠れていた“所属”の印。
「私は……これを守るために作られた存在です」
「守るって……人類を?」
ラブは、答えない。
答えないかわりに、巨人を見上げる。
巨人の赤い目が、さらに明るくなる。砲口の先端が赤く発光し始める。エネルギーが凝縮される光だ。
撃つ。もうすぐ撃つ。
ヘンリーは設計図を広げ、必死に走査した。停止コード、緊急遮断、認証階層――何でもいい。
しかし設計図は、ここまで巨大な“意思を持った兵器”を止めるための具体を、ほとんど書いていない。書いていないのではない。書けなかったのだ。誰も触れたくなかったのだ。
「くそ……!」
ヘンリーは歯を食いしばり、ラブの腕を掴もうとした。
掴んだら、引っ張って逃げる。引っ張って、彼女を“盾”にさせない。
だがラブは、掴まれる前に一歩前に出た。
「あっ――」
その一歩が、決定だった。
ラブが、巨人へ向かって歩き出す。
雨も霧もない格納庫の空気の中で、彼女の足音だけがやけに澄んで響く。
そして、胸のランプが、ためらうように明滅する。
ヘンリーは喉が裂けるほど叫んだ。
「ラブ! 待て! それは違う! それは“止める”じゃなくて――」
ラブは振り返らずに言った。
「選択の時が来たようです」
選択。
その言葉が、ヘンリーの脳を殴る。
これまで何度も選ばされてきた。選べと言われてきた。
選べるほどの情報なんて渡されないまま、いつも命だけが賭け金にされる。
巨人の砲台が完全にロックオンした。
低い起動音が腹に響く。
撃つ直前の“間”が、世界を止めたように伸びる。
ラブの身体から、青白い光が滲んだ。
それは武器の光ではない。
“鍵”の光だ。
ヘンリーは、ここで初めて理解した。
ラブは、ただ優しいから一緒にいるんじゃない。
ただ役に立つから隣にいるんじゃない。
ラブは、この世界の“最悪の安全装置”の一部として作られている。
だからこそ、彼女は自分を削ってでも守ろうとする。
守る対象が人間である限り、彼女は壊れてでも守る。
それが“作られた意味”だからだ。
ヘンリーは、設計図を握り潰しそうになるほど強く握った。
「……違う」
彼は呟く。
呟きは弱い。だが弱いからこそ、決意の形になる。
「ラブは鍵じゃない。道具じゃない。犠牲じゃない。隣だ」
言い切った瞬間、ヘンリーは走った。
痛む胸も、震える脚も無視して、ラブの背中へ向かって全力で突っ込んだ。
ラブを抱きしめる。抱きしめて、押し倒すようにして、砲口の射線からずらす。
「離せ……ヘンリー!」
ラブの声が初めて荒れた。荒れた声は、命令が壊れた音だった。
ヘンリーは息を切らしながら、歯を食いしばる。
「離さない。お前が“選択”するなら、俺も選ぶ。お前だけに背負わせない」
巨人の砲口が唸り、光がさらに強くなる。
撃つ。もう止められない。
ヘンリーは咄嗟に、ラブの胸元のパネルへ手を伸ばした。そこにある鍵の痕。紋章。
“鍵”があるなら、鍵穴もある。鍵穴は――巨人の内部だ。
「ラブ、聞け!」
ヘンリーは叫ぶ。
「止める方法を知ってるなら、犠牲じゃない形でやる。方法を言え。いま言え! 俺がやる!」
ラブの目が見開かれた。
その視線は、困惑と恐怖と、そして――ほんの少しの安堵が混じっていた。
安堵が混じっているのが、いちばん苦しい。
「……私の権限で、オーバーライドができます。ですが……近づかなければいけません。接触が必要です。接触すると……私の内部が焼けます」
「焼けるって、どれくらいだ」
ラブは一瞬だけ唇を噛むような表情をした。
「……戻れない程度に」
ヘンリーの呼吸が止まった。
戻れない。
それは、終わりだ。ラブがラブでなくなる終わりだ。
巨人の砲口が唸り、充填が完了する音がする。
ヘンリーは決めた。
決めるしかない。今は、その決め方を“変える”しかない。
「じゃあ、分担する」
ヘンリーはラブを見て、言った。
「接触するのは――俺だ。お前は、手順を言え。俺が触る。俺が焼ける」
ラブが首を振る。
「ヘンリーは人間です。あなたが触れれば、即死します」
「即死でもいい」
ヘンリーは言いかけて、途中で言葉を変えた。
「……違う。即死でもいいとか、そういう投げ方はしない。俺は生きる。生きて、お前を隣に戻す。そのために“今この瞬間だけ”の手段を作る」
ヘンリーは設計図を広げ直し、巨人の胸部ハッチへ視線を走らせた。瓦礫が塞いでいる。だが、隙間はある。さっき開けた隙間だ。
そこから内部へケーブルを差し込めるかもしれない。
ラブの“鍵”を直接接触させず、遠隔で権限だけを流し込む形――そんな無茶な回避策が、理屈の上では成り立つかもしれない。
「ラブ、権限信号って、ケーブルで流せるか」
ラブの瞳が揺れた。
迷いではない。計算の揺れだ。
「……理論上は可能です。ですが、規格が一致しなければ……」
「一致させる。いま、ここで」
ヘンリーは工具を掴み、動力炉の開口部へ飛びついた。
ラブは一瞬ためらった。ためらって、それでも隣に来た。
彼女が隣に来たことが、ヘンリーの背中を押した。
巨人の砲口が、赤い光を限界まで膨らませる。
床が震える。空気が震える。
撃つ直前の世界が、壊れる前の静けさを作る。
ヘンリーは配線を剥き出しにし、設計図のラインと現物のラインを必死に照合する。
ラブが、低い声で手順を告げる。
「その端子です。そこに、私の信号ラインを接続してください。私の胸部パネルから、補助端子を出します」
ラブが胸のパネルを開けた。複雑な回路が露出する。
ヘンリーは、そこに“心臓”を見た。
心臓を道具として扱うことが怖い。怖いのに、怖いからこそ、ここで終わらせたくない。
「ごめん、ラブ」
ヘンリーが言うと、ラブは小さく首を振った。
「謝る必要はありません。私は……あなたが隣にいることを選びたい」
その言葉が、胸の奥を焼いた。
そして同時に、巨人が発射準備完了の音を鳴らした。
ヘンリーは、ケーブルを繋いだ。
火花が散る。
ランタンの光が揺れる。
ラブの胸部ランプが、強く、強く明滅した。
次の瞬間――。
格納庫全体を覆うほどの轟音が、鳴り響いた。
撃ったのか。
撃ってないのか。
判断する暇もなく、ヘンリーの視界は白に染まり、耳が潰れるような衝撃が来る。
それでもヘンリーは手を離さなかった。離せば、全部終わる。
白い光の中で、ラブの声だけが、細く聞こえた。
「……オーバーライド……開始……」
そして、巨人の赤い目が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。
揺らいだのは“停止”じゃない。
揺らいだのは、“迷い”だった。
機械が迷う。
迷うはずのない防衛装置が、迷う。
その現象こそが、いちばん嫌な予感を連れてくる。
ヘンリーは、歯を食いしばって呟いた。
「……中にいる」
巨人の中に、“ただのプログラム”じゃない何かがいる。
第七章で感じたあの意志。核兵器の制御を握り、次に地盤を割ろうとした意志。
それが、今度はこの防衛装置を使って、こちらへ牙を向けている。
ラブの明滅が激しくなった。
焼ける。
彼女の内部が焼けていく。
ヘンリーは叫んだ。
「ラブ! 無理するな! 止めろ!」
ラブは、震える声で言った。
「止めたら……あなたが……」
「俺は生きる! だから、お前も生きろ!」
そのやり取りの最中、巨人の胸部内部から、別の音がした。
金属が噛み合う音。
ロックが外れる音。
何かが“中から出てくる”音。
ヘンリーの背筋が凍った。
光が収まり始め、視界が戻る。
巨人は、まだ立っている。
赤い目は、まだ光っている。
けれど、砲口の向きが変わっていた。
ヘンリーではない。ラブでもない。
格納庫の天井――崩落した穴の向こう、地上へ向けて、砲口がゆっくり持ち上がっていく。
「……まさか」
ヘンリーの喉が震えた。
「村を……狙う気か」
ラブが、かすかに首を振る。
「違う……もっと遠く……もっと広い範囲……」
巨人は、防衛装置だ。
防衛の定義が狂っているなら、守るために“焼き払う”を選ぶ。
守るために、世界を消す。
ヘンリーは設計図を掴み直し、ラブの手を握った。
握った手は冷たい。冷たいのに、確かに握り返してくる。
その握り返しがあるうちに、終わらせなければならない。
「……次の手が必要だ」
ヘンリーは言った。自分に言い聞かせるように。
「この装置を止めるんじゃない。奪い返す。
“防衛”の意味を、こっちに戻す」
ラブの瞳が揺れた。
「……ヘンリー。それができれば……私も……」
言葉の続きは、巨人の内部から響いた低い笑い声のようなノイズに掻き消された。
機械が笑うはずがない。
なのに、笑われたとしか思えない音だった。
ヘンリーは、その音に向かって小さく呟いた。
「見つけたぞ」
誰に向けた言葉か、自分でも分からない。
意志に向けたのか。世界に向けたのか。
それとも――これから始まる“本当の戦い”に向けた宣戦布告か。
巨人の砲口が、地上へ向けて赤く光り始めた。
その光は、今までよりもずっと静かで、ずっと冷たい。
止めなければならない。
そして止め方は、ラブを消すことじゃない。
ヘンリーは、そう決めたまま、次の一手を探すために設計図へ視線を落とした。




