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「乃亜……。私、もう死ぬしかないよぉ……」
鈴田乃亜の元に、友人である横見まどかから電話がかかってくる。いきなり死ぬしかないと言われて乃亜は驚いたけれど、まどかに
「いったいどうしたの?」
と問いかける。するとまどかは泣きながら
「彼氏、結婚して子どもいた……。独身って聞いてたのに騙されてた……。私が不倫相手だったの……」
と話す。独身のふりをして嘘をつくような相手のためにまどかが死ぬことはないのに、と乃亜は考える。
「いまどこ? すぐ行くから」
乃亜が言うも、まどかに
「来なくていい! 死ぬ時は1人になりたい。乃亜、たくさん迷惑かけてごめんね……。今までありがとう」
と電話を切られてしまう。乃亜だけではどうにもできなかったので、叶絵に電話をする。
「叶絵さん、いま大丈夫ですか? まどかが……あ、友達がいきなり電話で死ぬしかないって言ってきて……」
すると叶絵は乃亜の元に駆けつけてくれ、乃亜は電話でのまどかの様子を叶絵に話す。それから手分けしてまどかを探すことになった。叶絵がビルの屋上にいるまどかを発見し、2人でそこに向かう。
その頃、辰巳啓徳は市役所での仕事を終えて退勤中だった。啓徳はビルの屋上に若い女性が立っているのを発見する。このままだと飛び降りてしまうかもーー。そう思い、啓徳は女性のもとに走って向かった。話をして、飛び降りるのを思いとどまってほしいからだ。
「何してるの? そんなところ危ないよ」
啓徳が声をかけると、女性ーー後に横見まどかという名前が判明するーーは
「私、もう……。死にたいよぉ……」
と泣き崩れた。
「自殺なんてダメだよ、まだ若いのに。親御さんが悲しむって……」
啓徳の言葉にまどかは、「私はもう誰にも愛されてないの……」と返す。そのころ、乃亜と叶絵が屋上にやってきた。乃亜はまどかが自殺を考えている理由を知っているので、
「そんなクソ男のためにまどかが死ぬことないって」
と言う。しかしまどかは
「私もう恋愛とかできる気しないし、1人で生きていくしかないの……」
と頑なな気持ちだ。そこで叶絵が
「まどかちゃん、辛かったね。乃亜ちゃんの言う通り、そんな人のために死んだらダメだよ。すぐに答えは見つからなくても、一緒に悩んで考えていこう」
と、まどかと目線を合わせながら話をした。するとまどかは飛び降りを思いとどまり、3人のもとに戻る。啓徳が
「俺の高校の同級生の弁護士なんだけど、女の人だしまどかちゃんも話しやすいと思う。俺からも言っておくから」
とまどかに猪熊弁護士の名刺を渡した。乃亜がまどかを家に送り届けてくれるとのことなので、叶絵と啓徳は彼女たちを見届ける。