思い出す。この気持ちの名を
中学に上がって少したった日、私は先輩からトイレに呼び出されていた。
『おめーその髪の色何だよ? 生意気なんだよなぁお前』
『これは地毛で……』
『あ~しらが染めるのは許さなくてこの1年がこの色なのは許されるってわけ?』
そう言われて、髪をハサミで切られた。怖かった。なによりお母さんからもらった大事な髪が。悠真くんの褒めてくれたロングの髪が惨めになったことが嫌で、その後の授業をさぼって、髪を短く切ってもらいにいった。
次の日、みんなに理由を聞かれたけどイメチェンってごまかしてた。
そんな中、悠真くんが来て、一言、
『ショートも似合ってるからさ。大丈夫だよ』
その一言で、私は救われたんだ。
その日は雲一つない晴天だった。だからこそ俺は傘を持っていかずにいたのだが。
「今日は美咲さんと一緒に帰ってくださいね? 私は用事があるので!」
と言って去ってしまった。
「あはは。なんでユリアちゃんは私と悠真くんを二人きりにさせたがるんだろうね?」
「さあなぁ。あいつの目的に関わってるのかもな」
白々しく嘘を付く。とはいえお前が広いんだ! などは頭がおかしくなったのかと思われるので言えない。
「あのさ……今日行きたいところあって」
「どうした美咲? 行きたいところって」
「あの公園。君とよく遊んでたところだよ」
「ああ。あそこか。でもなにもないぞ?」
「ちょっとね……」
「で、ついたけど何があるんだ?」
「こっちこっち。今日はこれ学校から借りてきたんだ」
「スコップ?」
「そう、確かこの辺に……」
「ああ! 思い出した! タイムカプセル! 高校はいったら掘ろうって言ってたな!」
「思い出した? それをほろうと思って……」
「じゃあ貸して。俺が……」
「俺が掘るよって言うだろうと思って、もう一つもらってきてたよ。場所大体しか覚えていないから二人でほろう?」
「ああ。わかった」
そうして掘り始めて30分ほど立った時、俺の方に手応えが来た。
「来たかっ!」
「あった!? そっちだったかぁ」
「探し物は得意なんだ」
「たしかにそうだったね。で、何が入ってた?」
そう言って取り出そうとした時、急に大雨が降ってきた。
「と、とりあえずあの遊具の中入るぞ!?」
「う、うんっ!」
そうして公園中央の遊具の下に入る。急に寒くなってきたな。
「大丈夫か? 寒くないか?」
「とりあえずは大丈夫。でもびしょ濡れだね」
「ああ。そうだ……」
と、つい見てしまったが、今は夏服。薄い夏服が水に濡れて透けてしまっている。肌に張り付いている部分もあり、なんだかちょっとイケない気分になりそうになる。
そんなこっちを知らずに美咲は覗き込んでくる。
「うっわあああ!」
「何をびっくりしてるの? ちょうど良いから今のうちに見ちゃおう? その中身」
「あ、ああ……」
必死に理性を発揮させ、目を背ける。本人は気がついていないのが幸いなのかどうなのか。
「えっとこれとかこれとか……なんか色々あるね? 大体はオモチャだけど……」
「幼稚園卒園のときだからなぁ埋めたの。当時はこれ流行ってたなぁって感じのグッズが多いけど……」
何を探していたのか? そう聞こうとしたが、それを見つける。未来への手紙的なやつだ。
「これこれ! 探してたんだぁ」
「なにかあるのか?」
「知りたいことの答えが多分あるんだ」
「そうか」
人の手紙だ。見ないほうが良いだろう。そうして目を背けようとするが、
「一緒に見よう?」
そう言われた。観念して一緒に見ることにする。拙い日本語が書かれている。
『みらいのみさきさんへ! ゆうまくんと私はなかよしいっしょでにくらしていますか? そうだったらいいなって思います。みらいでもゆうまくんのことが大好きな私でいてください』
……未来、か。と、美咲の方を見ると顔が真っ赤になってる。風邪でも引いたのか?
「そっかぁ。そうだったもんね。昔からこの気持ちは変わらなかったもんね」
「……? どうした美咲?」
「いや、なんでもない。見つかったよ。私の大切なもの」
「そうか。それは良かった」
何かはわからない。でも美咲の顔はいつもより晴れ晴れとしていて、俺までいい気分になる。
そうしていると雨がやんだ。が、空はまだ暗いままだ。
「と、とりあえず今のうちに行こう!」
「うんっ!」
そうして走っていたのだが、俺の家の前あたりでまた大雨が降ってくる。スコールみたいな雨だ。
「と、とりあえず家入っていけ? な?」
「う、うん。ありがとう」
そうして俺の家に避難することになった。
「とりあえずシャワー浴びて、服は乾燥かけて置こう」
「うん、ありがとう。着替えは?」
「来客用のパジャマがあったはず。持ってくるよ」
「ありがとう。ごめん、先いただくね?」
「気にするなって」
そうして俺はパジャマを用意してお湯を沸かしておく。すると風呂場から
「キャー!!!」
という声が聞こえてきた。何があった。そう思い見に行くが返事がない。まさか頭を打ったのか!? そう思いノックするが、返事がない。仕方がない。もし裸を見てしまったとしても勘弁してくれ! そう思い扉を開くと
「く、蜘蛛! たすけて悠真くん!」
と飛びついてきた。
「うわああああ!」
「私蜘蛛死ぬほど苦手なのぉ! 助けて!」
「わかったから抱きつくなうわあああ!」
ユリア。このイベントあったぞ! ちょっと違うけどそれでもあったぞ!
そう、今ここにいないユリアに報告をしていたのだった。




