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まちまちの手遊び  作者: 佐智 こさじ
2024
32/101

あったかくて美味しくて…

11月の上旬は確か、半袖を

着て仕事していたはずなのに。


寒い。もう秋というか冬に違いない。


地下鉄から地上に上りあがり、

そっと瞼で空気を押し上げるように

見上げる。


そして目の前のコンビニを見つめ

考えるのだ。


「職場で食べられるものを買おう」


-----------

あったかくて美味しくて…

-----------


突然だが私は朝が弱い。


お腹はもっと弱い。


おかゆの重たさにへろへろと負けて

じくじくと痛さを一日中感じるほど

弱い。


朝にご飯を食べるということと

一日のお腹の健康を捨てることは

同義に等しい。


そんな私でも、家を出て職場までの

通勤によって生まれ変わった気持ちに

なるのか、

「朝ご飯が食べたい!」

と思う日がある。


ちょうど今日のように。


これまで物心ついた後から積み重ねて

来た研究結果によると、

どうやらちゃんと睡眠時間が取れて

ストレスが少ない日だとわりかし

朝ご飯を求めるようだ。


今までどれだけ睡眠とストレスを軽視

してきた人生だったのか?

…などと考えると悶々とした気持ちに

なるのでやめる。


話と場面をもとに戻して朝ご飯である。


目の前のコンビニのラインナップを

考える。


すでに出勤時間の15分前。


悠長に迷っている時間はないが、少し

ばかりの逡巡は歩きながらできそうである。


最近ハマっている豆腐バーか…


ホット飲料のラインナップも豊富だし

缶々のスープか…


それともバタバタと用意してカップスープを

熱湯で入れるか…


コンビニに吸い込まれた末、結局

缶々のスープを買った。


コンビニを出るとやっぱり急ぎ足の

会社員がいっぱいいて、私も負けじと

混ざるように出勤を急ぐ。


ほんとは肉まんがよかった。


だけど職場で歩きながら食べると

隔日に玄関の職員に見られるし、

職場内ではにおいが迷惑なので

食べにくい。


さっきのコンビニで見つめていた

肉まんの様子を脳内で反芻しながら、

両手で缶々のスープを包む。あったかい。


缶々の徐々に冷えていく熱を、少しでも

効率よく消費できるように指を伸ばして

しっかりつかむ。

帰りはこの手で肉まんをやわらかく包み

ながら、帰ろうと思う。


あったかくて美味しくて、

そういう朝ご飯に迷える朝が

私はけっこう好きだ。









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