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司は唯の次の言葉を待った。
でも、なぜか唯は司に話があるの、と言ったのに、そのあと話をすることもなく、ずっと黙ったまま小川の水の中れる様子を、橋の上からじっと眺め続けていた。
しばらくして、小川の中で魚がぽちゃんと音を立てて跳ねた。
その魚の跳ねる音を聞いて、唯は司を見ると、それから司に向かってなにかを言いかけて、でもなにも言わずに、そのまま口をつぐんでしまった。
それから唯はまた、暗い水面を見た。
二人のいる古い橋の周囲に、涼しい夏の風が吹いた。
司は唯の言葉を待ちながら、ぼんやりと橋の周囲の風景に目を向けた。いつの間にか、小川の中を泳いでいた魚たちはどこかに泳いで行ってしまって、どこにもその姿は見えなくなっていた。
司が小川の流れる上流のほうに目を向けると、そこには綺麗な光が、夏の夜の中に、たくさん浮かんでいる場所があった。
……それは、蛍の光だった。(とても綺麗な光だ)
司は唯の言葉を待ちながら、じっと、そのぼんやりと光る淡い薄緑色をした、たくさんの蛍の光に目を向けた。