表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

ツーブロックがモテる

 倉田蒼。17歳の高校3年生。今、1番欲しい物は彼女! 君どう?

 僕は中々の優良物件だと、思うよ?

 

 僕は今とことん落ち込んでいる。

 先程、桜の花弁舞う中で告白したら、女に振られた。

 多分、俺が参考にしていた本が駄目だったのだと思う。

 新しい本を買う為に本屋さんに向かい、トボトボと歩く。

 どれだ!!

 女の子にモテる裏技が書いた本はどれだ!!

 必死な僕の目に飛び込んできた本は【これで、貴方も女の子にモテる!!】というタイトルのハウツー本。

 早速、レジに向かうと購入する。

 

 近くの公園に向かいベンチに座ると、袋から本を取り出した。

 表紙を開くと『男はツーブロックがもてる!!』なんて言葉が当たり前のように書かれている。


「これだ!!」


 これで、俺にも春が来る。

 彼女が出来たら、頑張って貯蓄したバイト代で旅行でも連れて行くんだ。

 そんな事を考えながら向かった先は、カリスマ美容師が居るサロン。

 お値段。カットのみで一万円。

 こいつに、俺の春は掛かっている。

 店内に入るとニュアンスパーマの美容師が、僕を待合所に案内してくれた。


「どんな髪型になさいますか?」

「待っている間にきめておく!」


 カリスマ美容師が居るような店は、初めてで緊張するが、男らしく返事を返す。

 美容師が居なくなるとスマホで、ツーブロックと検索をかけた。


 ツーブロックとは、段差を作るようにカットしたヘアースタイルの事だ。

 他にも細かい事が色々書いてあるが、これだけ分かれば大丈夫だろう。


「問題はない! 段差が有ればいいんだろ?」


 皆と同じじゃモテない。

 前に見た雑誌には個性を出すのも、女の子にモテる秘訣だとかいてあった。


 名前を呼ばれ、大きな鏡の前に座らされた。

 鏡に俺の顔が写るったが、中々のイケメンだ。

 髪に流行を取り入れたら、イケメン度が増す事は間違いない。


「今日はどのようなカットにするかお決まりですか?」

「この髪型でよろしく!」


 自信満々に、選んだ髪型の画像をスマホで見せる。

 それは、沖田総司の肖像画。

 トップだけ髪を刈り上げ、サイドはありのままの姿。

 これこそ、ツーブロック。

 段差の有るヘアースタイルだ。

 なにより、流行は繰り返されると言うじゃないか。


 沖田カットは、一周して流行るだろう。


 流行とは、時代の最先端。

 男として、それを逃す事は出来ない。


「え。この髪型でいいのですか?」


 カリスマ美容師がびびっている。

 俺のセンスにビビっている。

 しかし、俺は動じるなんてバカな真似はしない。常にエレガントに余裕を持って、人と接する。


「勿論!」


 美容師はバリカンを持ち出すと、口を開いた。


「本当にいいんですね? 行きますよ?」


 その瞳には、僕のセンスを妬んでいるのか恐怖の色に染まっている。

 狂気を含む程の僕のセンス__

 

 僕の頭の中心にバリカンを当てた、美容師の手はこの刻みに震えていた。

 そりゃそうさ。

 巨大なセンスを持っている、僕を目の前にしてビビらない奴など存在しない。


 バリカンのスイッチがオンにされ、中心部分の髪の毛ご床に落ちてゆく。

 それすら、快感に思えるからイメチェンは素晴らしい。

 三分後。


「お客様。仕上がりをチェックお願いします!」


 そう言うと、特大サイズの手鏡を持って来た美容師。

 その手は小刻みに震えている。


「素晴らしい!!」

「あ、ありがとうございます……」


 レジで一万円を払い、外に出た。

 春風が、髪の無い部分に当たって気持ちがいい。

 通行人の女の子の視線が痛いほど伝わる。

 それもそうさ。俺みたいなイケメンはそうお目にかかれない。


 ふと、面白い事を閃いた。

 それは、モデルとしてスカウトされる事。


 スカウトマンが居そうな繁華街に向かうと、視線が刺さる。


 僕の事を見ながら会話をしている、女の子二人組はイケメンっぷりにはしゃいでいるのだろう。


「あの。少しいいですか?」


 きたー!!

 雰囲気的にスカウトマンでは無い、可愛い女の子の二人組。

 これは、ちまたで噂の逆ナンってヤツだろう。


「いいよ!」

「あね……。一緒に写メを取らせて貰えますか……?」

「べつに、いいよ!」


 惚れている。

 イケメン過ぎる俺にときめいて、ツーショットの写メを欲しがっている。

 この感覚たまらねえぇ!!


 二人組は各自ツーショット写メを撮ると、満足そうな笑みを浮かべてどこかに行ってしまった。


 あ・れ・だ!


 僕がイケメン過ぎるから、彼女なんてポディションは望めないという思考回路だろう。

 ただ、僕が写った写メを夜な夜な眺めて、幸せな気分に浸ろうと思っている訳だ。


 奥ゆかしい女性は嫌いじゃない。

 むしろタイプ。


 そう考えたら、連絡先くらい交換しておけば良かった。


 この日、この街にスカウトマンは存在しなかったのだろう。

 しかし、沢山のレディーの視線を浴びたし、一緒に写メを撮ったりした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 前向きな主人公にほっこりしました (*≧∀≦)人(≧∀≦*)♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ