魔王のお迎え
「お迎えに来ました」
そうドアの向こうから聞こえる。
父がそれに反応し、ドアを開けた。
「魔王様がお目覚めと聞きましたぞ」
白い髭を生やした老人。えらく堂々とした佇まいだ。
どうやらそいつは、俺のことを迎えに来たらしい。
「何のようだ」
俺が遠くからそう言う。
まずは迎えに来た理由を聞かなけれればならない。
「ほほぅ……これは……」
老人は俺を見て驚いているようだ。
「魔眼、か」
あの老人は魔眼を使って俺の魔力を見たようだ。
魔眼はルイロスがよく使っていた。そういえば、あいつの魔眼に逆らえる魔族はいなかったな。
「目覚めたのですね」
「そういうことになるな」
目覚めたということは、魔王はこの時代に俺だけだということだ。誰かが、転生するまでに魔王になっていたりはしなかったのだろうか。
そう疑問に思ったが、今はそれが大事ではない。
今一番大事なのは、俺をなぜ迎えに来たのか、だ。
「行きましょう」
俺はそう促され、ドアの方に足を、歩き始める。
「「行ってらっしゃい!」」
「ああ、行ってくる」
父と母にそう言われ、外に出ることにした。
この世界は一体どうなっているのか、それが気になるな。
外に出ると、メイドの服を着た人が1人、目に映った。
それよりも、街の方が気になった。2000年前と何も変わっていない匂い。そして、街並み。
ここは、魔王の城の1つ——ボウラノグだ。
ここでルイロスと戦ったことがある。結局は決着はつかなかったが、この場所は知っている。
そして、2000年前の全く変わっていない。
「転移」
老人がそう言うと、俺含め、近くにいたメイドの下に術式ができる。それはたった1秒もない。
そして俺たちは転移した。
魔王城——ギシテイラに。