転生
「可愛い子が生まれたわ!」
「なんと! 俺に似ているではないか!」
そんな2人のオレの耳の近くでする。
意識はある。言葉も分かる。そして確信する。
やっとだ。オレは——転生した。
「魔王の子よ! 何歳になったら力が目覚めるかしら!」
そう元気な声が聞こえる。オレの体が抱かれているのに気づき、オレは赤ん坊の体になっているにも気づいた。
この人たちがオレのことを生んだのだろう。
いい父さんと母さんみたいだ。
まあ、オレはもう目覚めているが、それに気づいていない様子。
「ふむ、ここが」
「しゃ、喋った——ッッ⁈」
「なんだと! もう目覚めたのか!」
そうオレが喋ると、父さんと母さんは目を見開いて驚いている。
オレは、この体は動きづらいと思い、《成長》の魔法を使って、体を動きやすい体にする。
手をグーにしたりパーにし、指の感覚を覚醒させる。オレはある程度慣れてきたので、口をポカンと開けている父さんと母さんを置いて、鏡に向かった。
「なるほど、顔は勇者時代と変わらないのだな」
そうして、鏡に映った自分を見る。どうやら、勇者の頃と顔は変わらないようだ。
それより、さっき魔法を使ったが、オレの体には膨大な魔力が秘めている気がした。
いや——自分の体だから分かる。なんでもできそうだ。2000年前の魔王の仕業かもしれないな。
そして、オレが普通に魔法を使えたのは何か。
おそらくだが、どうせ2000年前の魔王が仕組んだのだろう。あいつは魔法に関して、使えない魔法はなかった。だが、魔力の量に関しては少し劣っていた。魔王より多くの魔力を持った奴が何人かいたな、と思う。
オレを滅ぼしきれないのも、魔王の魔力が最後には足りなくなるからだ。
そして、魔王と向き合ったから分かるが、この体は前の魔王より強い。これは確かだ。
オレのただ自信があるという性格からきているのかもしれないが、今誰かと戦って負ける気がしない。
そんなことを考えていると、さっき父さんたちがいた方から声がした。
「魔王が目覚めました! すぐ来てください!」
父さんの声が家中に響きわたる。
来てください、とはどういうことか。それは分からなかったが、何かはあるとは思い、オレは落ちついてその誰かが来るのを待つことにした。
そして数分も経たないうちに、オレたちの家にコンコンとノックがなる。
「お迎えに来ました」
そうドアの向こうから言った。