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第74話 変生

「いやあああああぁぁぁ!!ギーヴさま、ギーヴさまがぁぁ」


 ギーヴが大男に吹き飛ばされ、そこに騎馬が突撃していくのが見てミーニャが悲痛な叫び声を上げて崩れ落ちる。

 対峙していたレノアが呆気に取られたとき


「レノア!!」


突撃してたきた騎馬隊の列からカリーナが離れてレノアに馬を寄せる。

カリーナに気づいてレノアが安堵しかけた時、吹き飛ばされたギーヴを飲み込んだ騎馬隊の先頭で


バァァァァン!!


 と凄まじい破裂音と衝撃波が広範囲に巻き起こり、辺り一帯に血煙を撒き散らす。

突然のことでカリーナの乗っていた馬が驚き嘶いて乗っていたカリーナは馬から振り落とされる。

レノアが素早く反応して地面に落ちる前のカリーナを掴んで受け止め、2人はもつれるように倒れた。


「ああ、ギーヴさまぁ」


 倒れたレノアの耳にミーニャの安堵と歓喜の声が聞こえた。


 馬も人もまるで握りつぶしたりんごのように砕け散り、その血溜まりの中に少年が座り込んでいるのが見える。


「嘘だろ……」


 突然の爆発音とその衝撃波に吹き飛ばされて、地面に倒れたガイが信じ難いものを見たかのようにぼやく。


「ガアアアアァァァァァァァ」


 天を仰ぎ、脱力した状態ギーヴが突然、人ならざる叫び声を上げる。

その声を耳にしたすべての人間が恐怖し、一瞬心臓を鷲掴みにされたような感覚に捕らわれ動きを止める。


「こ、こいつは……」


 ガイはその感覚に既視感を感じた。

そう、何度か味わったことのある感覚。

死を感じる、と表現するような……。


 頭を振って奇妙な感覚を振り払う。


 叫び声を上げるギーヴの身体に異変が起き始める。

身体の皮膚がボコボコと鱗のような形状に変化を始め、見開いた瞳が金色に変わり、大きく開かれた口に見える歯が鋭い牙へと変化していく。

そしてぼさぼさの赤毛の髪の中にバキバキと飛竜の角に似た角が生えてくる。

変化している間、ずっと凝縮するようにギーヴの周りに渦巻いてた力が一気に解放される。

それは無数の刃物のような衝撃波となり、あたり一面に無差別に放出されなぎ倒して切り刻んだ。


「ぐっ!!」


 とっさにガイは頭を低くする。

衝撃波により辺り一帯で敵味方関係なく多くの兵士と騎馬が切り刻まれて阿鼻叫喚となる。


「なんてこった。おい、ルゥト!!ありゃあなんだ??」


 隣で同じように身を低くして、変わってしまったギーヴから目を離せなずに呆然と眺めるルゥトにガイが叫ぶ。

続けてギーヴから強烈な衝撃波が乱れ飛ぶ。

ガイは慌てて飛んできた衝撃波を転がって避ける。

ガイがいた場所の地面が抉れているのを見てゾッとする。


ルゥトは放心状態のまま静かに立ち上がる。


「彼もまたサラと同じ……」


ボソリと呟くと


「ガイ!!」


 急に力強く叫ぶと左手を開いてガイに向ける。

その手を見て察したガイが


「チッ!!無茶すんなよ!!」


持っていた自らの大剣を放り投げる。

ルゥトはそれを受け取り両手で強く握って、身を低くすると全力で走り出す。


「ぐああああああああああ」


 ギーヴがまた吠える。

すでに人とは言えぬほど姿が変化してしまっている。

それはまるでトカゲか蛇を人の形にしたような姿。


 衝撃波を掻い潜りルゥトは大剣を大きく振りかぶり上段から叩きつける。

だがその攻撃はギーヴだった化物には届かず寸前で弾かれる。

ルゥトは怯むことなく剣を返して立て続けに斬撃を叩きつける。

その度に弾かれて攻撃は届かない。

 だがその行動はギーヴだった化物の意識をルゥトに向ける結果となった。

何度目かわからぬ攻撃が届く前に弾かれてルゥトは後ろに飛び退がる。

ガイの大剣の刃はすでにボロボロ。


 ギーヴだった化物の大きな金色の瞳がルゥトを完全に捉えていた。


「グアああああああぁぁぁぁ!!」


 威嚇するように吠えるギーヴだった化物。

それに合わせて周りにまた力が集まっていくのが目視でわかる。

ルゥトは壊れかけている大剣を構える。


「ルゥト、これを使え!!」


 ガイはその辺りに落ちていた剣を投げる。

そして自らも槍を拾い化け物に向かって力一杯投げる。

だが、化け物の身体に届くことなく力場のようなものに当たって槍は砕けた。


 次の瞬間、大小沢山の衝撃波がルゥトとガイに向けて飛ばされる。明らかに先程までと違い、意図して飛ばしたと分かる攻撃であった。

ガイもルゥトも横に飛んで殺傷能力の高そうな大きな攻撃をかわす。細かな衝撃波はその身に受け身体じゅうが裂傷まみれとなり、血が噴き出す。


「いまだ!撃てー!」


 カリーナの号令が響く。

それに合わせて数人の帝国兵が弓に矢を番えて放った。

攻撃した直後でギーヴの周りには力場が発生していない。そこを狙ったのだ。

何本かがギーヴに届き、彼の緑色に変じた鱗のような肌に突き刺さる。



「貴様らぁ!!私のギーヴさまにぃぃぃ!!」


 恍惚とギーヴの勇姿を見ていたミーニャが傷ついたギーヴを見て火がついたように怒り狂ってカリーナ達に襲い掛かる。

それにレノアが割って入って2人の戦いが再度開始される。


攻撃を食らってギーヴだった化物の視線がはゆっくりとカリーナ達に向きを変える。


「ぐおおおおおおおお」


 威嚇するように大きく吼える。


「もう一度だ、構えて、撃て!!」


 カリーナの指示で兵士たちの弓が放たれる。

今度は咆哮と共に発生した力の壁に阻まれる。


「てめーの相手はこっちが!!」


 意識がカリーナたちに向いたことにより、一気に突っ込んで接近したガイが途中で拾った太い丸太でおもいっきりギーヴだった化物の後頭部を殴りつけた。

 それはギーヴだった化物に届くことなく、既んでの所で砕け散ったが化物の意識はガイへと向き、視線が上がる。

その視線の先、ガイの後方の空に


 白い天馬の姿があった。

天馬の背には純白の鎧を纏った少女


 ギーヴだった化物はその姿を見て大きく金色の眼を見開いて、ピタリと動きを止めた。

その瞬間、砕け散る丸太の残骸、それを力任せに振るったガイの大きな巨体の影からルゥトが飛び出す。

ルゥトの手から鋭い突きが繰り出される。


天馬の姿に釘付けだったギーヴだった化物の喉にルゥトの剣は深々と突き刺さった。

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