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第72話 危機一髪

 少年は遊び気分で持っていた槍を振り回しながら、ゆっくりと間合いを詰めてくる。

その横を歩く鋭い目をした女性も恐ろしい殺気を放っている。

 レノアはゆっくりと腰を落として敵の攻撃に備える。

次の瞬間、瞬く間にミーニャが間合いを詰めてレノアに蓮撃を繰り出す。

これを小剣で捌き、踏み込んで相手の剣の懐に飛び込み密着する。

纏わりつかれて攻撃がしにくくなり、さらに凶悪な形相となるミーニャ。

密着状態でレノアの剣が腹部を狙うも手で払われ、そのまま後ろに下がって距離を置かれる。

次の瞬間、側面から鋭い槍の2連撃が襲い掛かる。

 後退したミーニャに入れ替わるように少年の槍がレノアを襲う。槍で牽制し剣で切り掛かる。かわすのが精一杯のレノアの後ろに回ったミーニャが死角から強力な蹴りを繰り出す。

かろうじて体を捻って直撃は避けたが、バランスを崩され地面に倒れる。

転がり離れようとしたレノアの行く手に少年が立ちふさがる。

最後の一撃を加えようとする少年の鋭い眼とかち合う。


ああ……やはりだめだ。ごめん、カリーナ……。


 まるでコマ送りのように時間がゆっくりと流れる。少年の手の槍が閃光のように自分へ突き下ろされる。


次の瞬間、何かがレノアの視界に覆いかぶさった。


 コマ送りだった時間が動き出し、レノアは何かに覆いかぶさられたままゴロゴロと地面を転がる。


「ギーヴさまっ!!」


 ミーニャと呼ばれた女性の叫び声が聞こえる。


「レノア!!まだ生きてるんだろうな」


聞き覚えのある声。いつもはもっと抜けた声に聞こえるが今日はしっかりとした安心感のある声に聞こえた。

バッと視界が開けて見えた顔は顔に傷のある優男だった。


「ば、バーナル??ど、どうして??」


 レノアに覆いかぶさっていたのはバーナル・フォート。

レノアは少年の状況を確認する。

 自分を狙っていたギーヴと呼ばれる少年の目の前には喉を一突きされて転がっているリーガドゥの死体。

レノアが最後と思った瞬間にバーナルがリーガドゥと共に割り込んだのだった。

バーナルは全速力のままぶつかるようにリーガドゥごとギーヴに向かい、すんでのところでレノアを救ったのだった。


「バ、バーナル、なぜあなたが??」


 覆いかぶさったバーナルはレノアから離れる。

レノアは敵から目を逸らさず、膝立ちで臨戦態勢を取りながらバーナルに問う。


「はは、君のピンチを助けにきたのさ、と言いたいがほんとにたまたまでね。ルゥトたちを探して走ってる最中だった」


軽口を叩きながらバーナルも自ら剣を抜く。彼の剣技はカリーナより多少マシ、レベルなのをレノアは覚えていた。それに片目が見えない、と言っていたはず。


「命を拾ったがまだ窮地は脱してない。すまねーな。レノア」


たしかに状況は変わっていない。でもレノアは少し笑う。


「ありがとう、バーナル」


そう言ったレノアを端目で見たバーナルは


「お礼は生き残ってから言ってくれ」


 そう言って口元が緩む。


「ガッ!!」

一瞬目を離したバーナルの肩にギーヴの持っていた槍が突き刺さり、バーナルが後方へ吹き飛ぶ。

吹っ飛ばされつつ、バーナルは刺さった槍を素早く両の手で掴み離さなかった。

槍を引っ張られた一瞬、ギーヴの動きが止まる。


 その隙をレノアは逃さなかった。


手元に隠し持っていた短剣を素早くミーニャに投擲して牽制する、そして次の瞬間にはギーヴに向かって踏み込み、喉元を狙って小剣を突き出す。


「なっ!!」


レノアの渾身の一撃をギーヴは悠々と指で摘んで受け止めた。

剣を引こうとするが、ピクリとも動かない。、


「がはっ!!」


バーナルに刺さった槍に力を込め、さらに深く抉り込んでから手を離し、逆手で腰の剣を引き抜く。

まるで重さを感じさせない滑らかな動きで剣の軌道はレノアの逆袈裟をねらっていた。

バーナルに一瞬気を取られたレノアは反応できない。

その時、ギーヴの背後からリーガドゥが乗り込んでくる。

それに乗っっていた大男が上段に構えた大剣を振り下ろす。


「ギーヴ様っ!!」


ミーニャの叫びと強烈な一撃をギーヴの剣が食い止めたのはほぼ同時であった。

レノアは一瞬緩んだ指先から剣を引き、後方へ下がる。


「けっ!いいタイミングだと思ったのによ。これでもやれねーか」


顔にすり傷のある大男は、大剣に全体重を乗せて押し込もうとするが、少年は涼しげな顔で男の剣を受け止めている。


「おじさんは昨日、しつこく絡んできた人だね。なかなか見どころがあると思うよ、うん」


体格差があるというのに軽々と大男の大剣を防いでいる。今一度体勢を立て直したレノアが加勢に入るため地面を蹴る。


「そう何度もギーヴ様に剣を向けれると思うなよ、小娘が!!」


怒りで鬼の形相になっていたミーニャがレノアの行手を阻むように剣を繰り出す。


「ぐっ、クソっ!」


 槍が肩に深く突き刺ささって身動きが取れなず、藻掻くパーナルの横に誰かがしゃがみ込む。


「動かない方がいい。あとは任せてください」


「ルゥト!俺のことはいいからレノアに加勢してやってくれ!!」


バーナルは顔を顰めながら必死にルゥトに頼む。

 だが、レノアはミーニャと超接近戦に持ち込んで自分の戦いに持ち込んでいる。あの間合いで戦う限り技量的にはレノアが上、ルゥトはそう判断した。


「レノアを信じてあげてください。バーナル、君は動かない方がいい」


ルゥトはそれだけを言うと剣を抜いてギーヴを押さえ込もうと必死のガイの助太刀に駆けだしていった。

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