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第63話 戦況

 戦闘開始から2日目の太陽が沈み、戦いが終了してからルゥトが本陣に戻った時には、その日の終わりが近づいた頃であった。

 全身泥と血に塗れもう誰なのか分からないくらい薄汚れたまま、本陣の大きなテントへと入る。

そこにいた全員が入ってきたルゥトを見て怪訝な顔をしたが、帝国式の敬礼をしたルゥトを見て誰かわかったようだった。


「……ルゥト殿の働きには誠に感謝している。よければ詳しい戦況報告をいただいてもよろしいか?」


「はっ!」


 ルゥトはジンゴッドの言葉に姿勢を正して返事をすると、テント中央に置かれた地図と駒で作られた戦場を確認して今日の戦況を話し出す。


「本日の早朝、帝国軍は進軍を開始。兵力は重装歩兵を主にした歩兵部隊一万程度。本来なら昨日と同じく第一陣の戦力で十分支えれるはず、でした」


 一息つき、周りを見渡す。

何人か苦々しい顔をしている。


「ですが帝国が打った手は奇策、単騎突入による我が軍の撹乱。本来ならこのような策はあり得ないところですが……残念なことに帝国軍第二師団にはこれを可能にする人物が存在していました」


「なんなんだ!!あの青い騎士は!! あんな人物がいるとは聞いてなかったぞ!!」


 大声を出したのは第一陣の総指揮を行なっていた将軍であった。悪夢でも見たかのような顔をしていた。


「大胆不敵な作戦ですが止めるとこはできませんでした。単騎で100人前後の兵士を殺され、完全にこちらの状況は崩されました。帝国軍は単騎突入して崩れた場所からこちらの第一陣を分断、士気の低下も相まって第一陣の崩壊は時間の問題だったため、第一陣は蜂起。兵士を第二陣まで下がらせ、戦力の温存を最優先にしました」


 ここで先ほど怒鳴っていた第一陣の総指揮官が


「撤退に成功した兵数は第一陣に配置した人数の大雑把にみて約7割ほど。現在、第二陣にて戦える者たちを編成し直しているところだ」


 ルゥトは将校たちの顔を見る。

皆やりきれない怒りの表情をうかべていた。


「……やられてしまったことは仕方ない。明日以降の話をしよう」


ジンゴッドは気持ちを切り替えるように切り出す。

そこで第二陣を統括している将軍が


「現状、第二陣は編成し直している兵の配置が済めばいつでも戦える状況だ。まだ現場は混乱しているが明日の朝までには準備が完了するだろう。

 第二陣は第一陣より勾配もあり敵もやすやすとは攻めれない。十分期日まで耐えうることは保証しよう」


 そう息巻く第二陣の将軍であったがジンゴッドは大きくため息をつき


「明日も今日と同じくらいの手勢で攻めに出てくれれば、の話だがな」


「帝国はこのまま引き上げるかも知れぬと言うことですか?」


  見当違いに喜ぶものがいた。

 これには流石に全員がげんなりした。


「帝国軍はこの勢いに乗って更なる兵力で猛攻を加えてくるでしょう。我々は最低でもあと2日、できれば兵力をこれ以上減らすことなく敵の攻勢を耐えねばなりません」


 ルゥトがそう言うと周りは沈黙した。

すでに士気の低下は上級士官の中にも蔓延し始めていた。


「……あの単騎で突撃してきた男は……明日も出て来るのでしょうか?」


 弱気になっていた若い将校が俯きながらそうつぶやいた。

 ルゥトは首を振り


「あんな奇襲が成功するのは一度だけなのはあちらもわかっているでしょう。対処としては簡単です。最初からすべての矢を直接集中砲火をすれば良い」


 今朝の特攻時、味方の矢は後続に突撃してくるであろう帝国軍に狙いを定めていたため単騎に向けられた矢はバラけた散発的なものとなってしまった。

これを一点集中にして放てば単騎突撃は流石に不可能である。


「とにかく明日はこちらも出し惜しみは無しとなるだろう。予備兵力も投入してでも第二陣を死守するぞ」


 ジンゴッド将軍は力強くそう宣言をし立ち上がる。

おお!!と皆気合を込めて賛同するものの、下がった気持ちは盛り上がりに欠けるのは明白であった。



 翌日、3日目の戦いが始まった。

敵は早朝から予想通り昨日より大人数を最初から投入。苛烈な攻勢に出る。

 ルゥトはガイの受け持つリーガドゥ部隊に混ざり、遊撃隊として戦場を駆け回っていた。

一旦整理。戦況は思わしくなく次に打つ手もない。

そんな状況となってます。

さて好機は訪れるのか……まて次号!!

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