第4話 道具屋
「しかし、あんた働き者だね。あと2日と言わずずっとうちで働きなよ」
アーウィンの妻で道具屋「小人工房」の看板娘?たるメリルはカウンターで肘をつき感心しながらルゥトを褒める。昔は評判の美人だったそうだ。その残滓は今も残ってはいるが年相応の体格となっているのが残念だった。
ルゥトの仕事ぶりは実に見事であり、店内にあるいろいろな道具をテキパキと整理し分類分けして陳列して在庫チェックを行い、仕入れルートの整理、接客とお得意様リスト、その合間に配達とたった一人で八面六臂の大活躍だった。
ルゥトは冒険者用のバックパックを並べ直しながら
「それもいいかもと思いましたが、そうもいかないのです。まず兄を探さないと、弟と妹に母の看病をお願いしたままなので・・・」
そうルゥトが説明するとメリルはハンカチを出して
「ぐすっ・・・・そうだったね・・・。あんたんち・・・かーちゃんよくなるといいね・・・」
最近、涙もろいメリルだった。
「でもさ、あんた軍人になるって言ってもそれなりに腕っぷし強くないとなれないよ?たしかに荷物運んでここまで来たのは聞いてるけど力自慢だけじゃあ軍人になれないんじゃないのかい?」
荷物持ちに逃げられ、ほとほと困っていたアーウィンに代わりを引き受けて10日、相当な量の荷物を担いだままルゥトは平然とした顔で100㎞以上を踏破してこの街に入っている。
その屈強さは折り紙付きであったが軍人になるにはそれだけでは足りないのではと心配しているのだ。
「聞いたところによるときちんとした新人訓練所があると聞きました。そこできちんと適性をみられるらしいのできっと大丈夫ですよ」
ルゥトは雑嚢を丁寧にたたみ重ねながらそう言った。そして最後の一枚を重ねると
「整理がすんだので冒険者ギルドの納品に行ってきます。ほかに外での用事はありますか?」
雑踏としていたバックパックや雑嚢などの収納品コーナーが綺麗に整理され見やすくなっていた。
類似品として革袋や水筒などもまとめられていた。
ルゥトがきてからメリルは本当に大助かりだった。
「そうだね。じゃあついでにこの荷物をバロック商会まで届けておいてくれるかい?注文を受けてた夜間の照明道具なんだけど」
大きな木箱を1つメリルがカウンターに置く。
「わかりました。バロック商会は通り向こうの大きな建物でしたね。では行ってきます」
テキパキと荷物担ぎ用装備に運ぶ荷物を積み込むと相当重いであろうがひょいと軽々と立ち上がった。
メリルも惚れ惚れするほどの働き者だった。
「あ、そうだ。午後は少しゆっくりしてきていいから街でもぶらついておいで。これお駄賃、って言ったら子供みたいだけどさ、取っといておくれ」
メリルは笑いながら銀貨を数枚手渡してくれた。
「こんなにいいんですか?では遠慮なく頂いて少し街を散策してきます。日が暮れる前には戻りますので」
そうにこやかに笑いルゥトはお辞儀をして店を出て行った。
「ずいぶんと役立ちそうなの雇ったじゃないか」
ずっとルゥトの働きぶりを商品を物色しながら見ていた冒険者風の男が感心をする。
「そうなのよ。あれだけできる上に男前だからね。あれは相当モテるだろうねぇ」
メリルはうっとりしながらそう言った。
それを見て冒険者風の男はヤレヤレといった感じで
「旦那に言いつけるぜ、メリル。予備の救急箱を1つとロープ、あと防寒用のマントを新調したいんだ。いいのあるかい?」
そう言いながらカウンターに肘を置く、
「おや、ずいぶんと羽振りがいいじゃないか。あいよ。すぐ準備できるよ。なんせルゥトがしっかりと整頓してくれたからねっ!」
メリルの仕事ぶりも向上し「小人工房」はいい道具屋として評判が上がることになる。