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第3話 アーウィン

 ブッシュテイン帝国。

 グワナダ大陸東側の広大な土地を有する帝国。

属国が6国あり現在もヴァシュ王国、ルルク国と交戦中。アウルストリア王国、ガターヌ共和国と緊張状態というとにかくきな臭い国である。

帝都バンディッシュは大陸の東海岸にある広大な港都市である。

ブッシュテイン帝国は陸、海、竜の三軍を持ち、特にワイバーンを駆る竜騎兵はどこの国にも追随を許さない強大な軍事力であった。


 そんな帝都バンディッシュの陸路西門に並ぶ検問待ちの集団の中に、背の高い黒みがかった灰色の髪の男が混じっている。年の頃は20代後半くらいで髪はぼさぼさ、無精ひげを生やし目つきが悪いため悪人面に見える。スラリとしているが鍛えているのだろう、大きな荷物を背負っていて荷物運びの人足のようだった。


「なかなか前に進みませんね」


人相の悪さの割に礼儀正しく優しい喋り方で彼の隣のリーガルゥという2足歩行の鳥とトカゲのあいの子のような動物に跨った中年の男に話しかける。


「この時間はなかなか進みませんからな。もうちょっとしたら検問官も増えてすぐ街に入れますよ」


 40代前半くらいの少し太った男はそういいながらニコニコと話す。


「ルゥトくんはバンディッシュは初めてだと言ってたよね?当てはあるの?」


 太った男は心配そうに荷物を持っている男に訊ねる。

ルゥトと呼ばれた男は少し困った顔をして


「いいえ、できれば軍に仕官したいんですが身元保証人が必要らしくて…。最悪冒険者経由で行こうかと…」


 それを聞くと太った男が悲しい表情で


「水臭いこと言わないでくれよ。野盗に襲われていた私たちを助けてくれた上に、この10日の間、荷物を持ってもらったり食事の準備をしてもらったり、とてもお世話になったんだ。僕が保証人になってあげるよ。ただ紹介するためには5日間はうちで働いてもらうことになるだろうけどそれくらいは平気だろ?」


 それを聞くとルゥトは申し訳なさそうに頭を下げ


「ほんとですか?アーウィンさん、助かります。できる限り早く軍に入って兄を探したいのです。田舎で待っている母が元気なうちに兄にもう一度合わせてあげたくて…」


 そう言ってルゥトは顔を伏せ、少し言葉を詰まらせた。


「いいさ、親孝行したいときに親はなしっていうしね。僕も父さんの死に目には会えなかったからなぁ…」


 そういってしんみりして空を見上げるアーウィン。父親を思い出しているのだろう。


「とりあえず、街に入ったらうちの店でゆっくりしてください。5日間うちで働いた実績があれば紹介状が出せるからね。僕に任せておきなさい」


 彼はそう言ってドンと自分の胸を叩いた。

暫くすると列が流れ始める。

どうやら検問官の増援が来たらしい。

検閲は順調に流れてアーウィンの番となる。

検問官が厳しい表情でこちらをみながら


「手形と証書、あと持ち込み品の書類を提出してくれ」


 そう不愛想に指示をしてくる。アーウィンは手慣れた風に準備していた書類をだしてからルゥトに関する説明を始めた。


「あのですね。連れて行った人足が野盗に殺されまして、こいつは途中の村で雇ったもんでして、死んだ人足の代わりにうちの店で雇うことにしまして」


 そう言いながら書類の下に小袋を隠しながら検問官に渡す。

検問官もそれを受け取り


「それは難儀だったな。野党の被害は死んだ人足だけかね?」


 そう聞きながら書類に目を通す。


「いいえ、大事な商品の一部を持っていかれましたよ…。こいつを雇って早々に稼ぎ直さにゃいけません」


 そうわざとらしく顔を覆い辛さをアピールする。

検問官は見向きもせず書類にめを通して判を押すと書類を返し


「この先で銀貨8枚を払ってくれ。確認事項は以上で終わりだ。よく戻られたアーウィンさん。またこの街に貢献してくれ、では次の人」


 そう言うと次の仕事へと取り掛かり始めた。

ルゥトたちは次の建物前でアーウィンさんがお金を払い最後の門をくぐり街へと入る。

門をくぐると、ブッシュテインの首都バンディッシュはとても賑わっていた。

海岸都市というのもあり潮の匂いが強い。

いたるところで海鮮が売られ魚を焼く匂いが漂っている。この辺は食料市場らしい。

道も広くたくさんの荷馬車や人が行きかっている。

経済がしっかりした街のようだ。


「僕の店はこっちだよ。小さいけどなかなか繁盛してるんだ。5日間とはいえ、しっかり働いてもらうよ」


 そうアーウィンさんはウィンクした。

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