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第15話 新人強化訓練偏Ⅶ

 チームによる訓練が本格的に始まった。

最初の1週間ほどの過酷さはなく、(それでもかなりきつい訓練ではあったが)格闘戦、武器道具の熟練、乗馬、集団行動などどちらかといえば技術修練と基礎能力の向上に重きを置いた訓練が多くを占めていた。

 どこから流出したか「一ヶ月後の早期卒業者は個人評価順でチームからは一人しか選ばれない」という噂が広まり、チーム内の確執は広がっていき、あまり過酷ではないにも関わらず開始から半月で284名まで減っていた。


 ルゥトたちのチームは毎回辛うじて課題をクリアするような状況で評価なら下から数えた方がいいレベルであったため、すでに早期卒業者などの噂は眼中になく、日々落とされないことに集中していなければならなかった。

 特にバーンドが足を引っ張ることが多く、ガイがいつもバーンドに突っかかっていた。ことあるごとに2人は言い争い、時には手が出ることもあった。だがある意味この2人の争いがバーンドの最後の一線を引き上げる形となりなんとか落第せずにここまでやってこれていた。

 長時間騎乗訓練の時、乗馬が不得手なガイに嫌味を言いつつ彼にコツをアドバイスして最後まで根気よく付き合ったのはバーンドだった。

 なんだかんだこの2人、相性がいいな、と言い争いながら並んで馬を走らせる2人をルゥトは後ろから見ていると、


「仲いいね。あの二人」


 珍しくサラが口を開くくらいだった。


 サラに関しては可もなく不可もなく、卒なくなんでもこなすと言う感じだった。いつもやる気なさげにぼけーっと課題をこなしているが問題なくできているといった感じだ。

チームの手助けはしないが頼めばやってくれるし足並みもそろえてくれている。

ただ会話はほとんどしなかった。

意外だったのはガイが彼女を気にかけて可愛がっていたことだった。

一度ああいうタイプが好みなのか?とルゥトが面白半分で問うてみると、ガイは目を逸らし照れながら


「ちげーよ。昔、あれくらいの妹がいたんだよ。今はもう嫁に行っちまったがな」


 そう言ってサラを見て懐かしそうな目をした。


「ふん、ロリコンなだけだろう」


 疲労で立ち上がれず、地べたに這いつくばったままバーンドがそう悪態をつく。それを踏みつけて


「けっ!!そういうことは立ち上がってからいいやがれっ!!」


ガイは貴族様を踏みつけているのにご満悦だった。


そうやってチーム行動が始まって半月が過ぎ、久々に夜中に緊急召集で起こされ、整列させられる。

鬼瓦の教官がいつも通り壇上に立ち、


「今より恒例の行軍訓練を行う。各班にそれぞれ行軍ルートを記した地図を渡す。地図の最終地点に旗がある。それを持ち帰れ。往復4日の行程だ。装備、持ち物は各班で揃えろ。武器の携帯を許可する。尚、これは班ごとに競ってもらう。

当然妨害もありだ。ルートは全チーム別、ルートのチェック地点に期日に必ず到着し目印を置くこと。早くても遅くてもダメだ。


 尚、旗は20本しか用意していない。旗を持ち帰れなかったチームにはペナルティがある。

そして旗を持ち帰った者にのみ評価点をくれてやる。

出発は今から1時間以内に4人揃って出発しろ。それまでに出発できなかったチームと4日以内に戻ってこれなかったチームはリタイアとなる。では、解散!!」


 全員が一斉に動き出す。ルゥトたちも目配せのみでそれぞれ必要なものを揃えに走る。

食料の確保はガイ、装備の準備にバーンドとサラが。武器の調達にルゥトがそれぞれ走る。40分後に各々がかき集めた道具を確認して必要な分配をしたり足りないものをもう一度揃えたりする。


 そして5分前に訓練所の門で出立のチェックをもらい出発する。

ルゥトは地図を確認する。


「このまま北へ移動して朝8時までに湖のほとりのチェックポイントへ。その後森に入るルートになっている」


 ガイは頭の中で近隣の地図を思い出す。


「結構な距離じゃねーか。急いで移動しようぜ」


 先頭を進むガイが足を速める。続けてサラ、バーンド。殿はルゥトだった。


「一応、襲撃に警戒をしておこう。旗の数がチーム数の半分もない。つまり途中で襲われることを想定しての訓練となるんだろう」


 ルゥトは警戒を促す。


「ちっ、急に実践的な訓練になってきたじゃねーか。おいバーンド遅れたり足手まといにはなんなよ。戦闘に期待はしてねーが脱落だけは避けやがれ!!」


 ガイがそうバーンドを挑発する。バーンドはむきになって


「ふん、君に言われなくともそれくらいはできるっ!!君こそ調子に乗って足元をすくわれないようにしてくれよっ!!」


 そんな2人のやり取りを呆れながら聞きつつルゥトはこの先のプランをフル回転で思考していた。

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