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第14話 新人強化訓練偏Ⅵ

 鬼瓦の顔の教官は壇上に立ち


「ではチームの実力を知るためにも隣の班と格闘組手をやってもらう。それぞれ頭文字のaからeを一つのグループとして00から09のチームがあるはずだ。偶数チーム対機数チームで組手をして負けた人数が多い所はペナルティだ、ではすぐ組手をする順番をチームで決めろ。3分やる」


 そう言われてルゥト達は隣に並ぶ班と向き合う。

そして順番を決めるために一旦円陣を組み、ルゥトが切り出す。


「どうします?並び順でいいですか?」


 そう提案して確認を取る。


「俺はかまわねぇよ。どうせ誰と当たっても一緒だ」


 ガイはニヤニヤとやる気満々に拳を握り指の骨を鳴らす。


「ふん、揉めるのも面倒だ。それで構わない」


 そうバーンドも頷く。

最後の少女は……何も考えてなさそうにルゥトを見る。

了承と見ていいのだろう。


「では、ガイ、僕、バーンドさん、そして・・・」


 全員が少女を見る。


「…サーラシェリア。サラでいい」


 そう少女は無機質に名乗った。無表情で感情が読めない。


「僕はルゥト、大きい彼がガイ、この人はバーンドさんだ」


 ルゥトはサラにみんなを紹介する。


「チームメイトなのだ。バーンドでいい」


 そうバーンドは照れてそっぽを向きながら言った。

こうしてc02班の対戦順は決まった。


「では今より一番手の組手を行う。制限時間は5分。相手よりギブアップ、もしくはダウンを取った者の勝ちとする。怪我をした者はリタイアになるぞ。自分の身は自分で守れ。では一番手、前に出ろ」


 c02班の相手はc07班。ガイが前に出るとc07班からは元バーンドの従者、昨日ルゥトが顎に掌底をヒットさせて倒した男だった。

正面に立ったガイを見ずにその奥のルゥトをずっと睨んでいる。


「はじめっ!!」


その声と同時に笛が吹かれる。


ドカッ!!


 大きな音と共にガイの放ったストレートパンチが対戦相手にクリーンヒット!!

一撃で相手はノックダウンしてしまった。

ガイはつまらなそうに


「ふん、よそ見なんぞするからだ。俺を舐めるなよ」


 倒れている男にそう吐き捨てて最初の列に戻っていった。


「c02班勝利」


 各組手を見て回る審判の教官がそう告げる。倒れた元従者を他のメンバーが助け起こす。その後5分経つのを待つ。

5分経過してすべての試合に決着がつく。引き分けた組もあるようだった。


「2番手、前へ」


 大きな声で叫ばれる。

ルゥトが前に出る。対戦相手は細身の男で、格闘技に自信があるかのように肩を温めながら不敵な笑みを浮かべている。


「おい、俺とお前が勝っちまえばとりあえず負けはねぇ。頼んだぜ!!」


 そうガイが声援を送る。

ルゥトは身構える。


「はじめっ!!!」


 開始の合図の笛が鳴る。

対戦相手は素早く前に出て、けん制のパンチを放つ。

ルゥトはそのパンチに合わせて相手の腕を取りにいったがそのパンチは囮、相手はその手を取ったルゥトに体当たりをかましルゥトの手を逆に取り返して関節を極めた状態で投げに入る。

ルゥトは焦らずに身体全体でクルリと曲芸のように回り、腕が折れるのを防ぐ。

そのまま手を振りほどき一旦離れる。

そんな一進一退の攻防が続き

時間切れとなる。


「そこまでっ!!勝負がつかなかったものは引き分けとする」


 ルゥトと対戦相手は揉み合いの状態で睨み合っていたがお互い離れる。

チームに戻るとガイが怒っていた。


「おいおい。おめーほどの男がなにやってんだよ。しっかりしてくれよ……。後の面子がアレなんだぞ?」


 そういってバーンドを指さす。

指さされたバーンドはムッとして


「ふん、貴様はとことん失礼だな。我がミルセルク家に代々伝わる合戦術、とくと拝ませてやる」


やり返すようにガイを指さし、そう言いながら前に出る。


「けっ、見せてみやがれってんだ」


 そう言って嫌そうな顔をするガイ。よほど貴族が嫌いらしい。


「三番手、前へ」


 c07班は凡庸な顔をした男、身長が低くずんぐりしたイメージの男だった。


「はじめっ!! 」


 声と同時に笛が鳴る。

バーンドが変な構えをして突撃していく。

それがミルセルク家に伝わる合戦術なら見込みなしだな。とガイもルゥトも思った。

だが、恰好とは裏腹に意外と善戦をしていた。

相手は重い一撃を狙った古武道のような動き、逆にミルセルク家の合戦術は舞うように軽やかな動きで一撃一撃を回避していた。だが決め手には欠けるようで攻撃はするものの相手にダメージが与えられていない。

さらに無駄の多い動きのせいで時間が経つにつれ軽やかさに陰りがでてそのまま一撃を食らいダウンしてしまった。

そのまま勝敗は決した。


「c07班の勝利」


 これで1勝1敗1分

最後は……小柄な少女の出番だった。

ふらふらと前にでる。何を考えてるのか分からない。


「あいつ、大丈夫か?」


ガイは完全に不穏な空気となっている。どうもあの時に見た少女だと気づいていないようだ。


「ガイは気づいてなかったのですか?受付で我々の前を通った例の少女ですよ」


 ルゥトがそう言うとガイは??? になっていたがしばらく考え込んでいたが思い出したらしく


「あの時のかっ!!全然感じがちがうじゃねーかっ!!」


 サラを指さし大声で驚く。ルゥトも同じことを思ったが別人、ということはなさそうだった。雰囲気はある。


「では、最後の組手、はじめっ!」


 サラの相手はガイと同等クラスの巨漢だった。

まるで子供と大人の闘い。相手は下卑た笑みを浮かべている。少女を殴るのに躊躇がないというより嗜好としているような笑みだった。

男は思いっきり振りかぶった拳を力いっぱい振り下ろす。


グシャリ


 という音がする。

ルゥトもガイもバーンドすら驚き声がでなかった。



 少女は思いっきり殴られて吹っ飛ばされる。ドスン、と地面に叩きつけられる。全員が沈黙。


「お、おい、大丈夫か!!」


 意外にもガイが一番最初にサラに駆け寄った。

ルゥトとバーンドも急ぎ駆け寄る。

サラは鼻っ柱を赤くしていたが特に異常はないといった顔で空を見上げていた。


「勝負あり、c07班の勝利」


 そう各組手を回っていた審判代わりの教官が告げる。


「大丈夫ですか?」


 ルゥトがもう一度サラに声をかけるとぴょんと飛び起きてコクリと頷いた。


「……ほんとにこいつがあの時のおっかねー女の子なのか??」


 ガイが胡散臭そうにルゥトに問う。


「……だと思うのですが……」


 ルゥトも曖昧に答える。少女は特にダメージらしいダメージはなさそうだった。


「これで全員の組手が終わったな。では引き分けた班、負けた班はペナルティとして外周を3周。

勝った班は内周を5周して朝食とする。午前の訓練は08:00開始とし、それまでに整列しておけ。以上だ!!」


 外周とはこの施設の外側に用意されたトレーニング用のランニングコースで途中途中に障害物などがあり一周でも相当きついコースである。

内周は運動場を走るだけの簡単なランニングとなりあっという間に終わる。


 時間もかかる上にきついので外周組は急いで走らねば朝食にすらありつけない可能性がでてくる。ルゥトたちは急いで全力で走り始めた。

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