ある日の日記 5回
五回
長い間、僕は真っ暗な……
生きる望みも、生き甲斐も、喜びも、楽しみもない真っ暗闇の中を……
人生に夢を馳せ、小鳥のように自由に空を飛び回り、さえずり、仲間と一緒になって人生の素晴らしさを語る喜びも知らず……
人生に生き甲斐を感じ、田を耕す農民のように大地を切り開き、種をまき、芽が出、茎が伸び、実がなってそれを刈り取る喜びも……
人生の生きる糧を求めて大海原に舟を出していく漁夫のように、己の生命の危険をかけて大荒波をかき分け、生きていることの喜びを捕獲する楽しさも知らず……
人生の芸術を掘り下げ、その神秘の偉大さに驚き、全精神をその道に没頭していった偉大なる芸術家の闘魂の尊大さも知らず……
人生の花ともゆうべき男女の恋愛ごっこの快感も味合わず……
僕は長いこと一人で真っ暗闇の中をトボトボと歩いてきました。
たまにそれらのいくばくかの幻影を眺められる窓口を見つけては、その窓から彼等の眩いばかりの人生の輝きを見せつけられても……
僕はまたトボトボと一人闇の中を歩いてきました。
所詮、俺にはとてもそのような世界に飛び出せやしないんだ。たとえ出られたとしても、すぐさま彼等の牙によって傷つけられいじめられ、挙げ句の果ては見世物小屋の天井に吊り下げられて皆の笑い者にされるだけだ。
そんな恥ずかしい目を受けるくらいなら、このままじっと闇の中をトボトボと歩いている方がましだ……
そのようにもうまったく人生を諦めきって生きていたこれまでの足跡を……
今は懐かしく振り返ることが出来るようになりました。
もうまったく僕がこの世界に入り込めないと諦めていた、その心の中に突然とてつもない雷雨の轟とともに、それへ通づる道が開かれたのです。あまりのショックに……
あまりの広々さに、今だに僕は呆然として、目の前に開けた新しい世界の入り口に、佇んでいます。
アァ〜、この世界はいつかどこかで見た世界と同じみたいだ……
そうだ、あの……
この真っ暗闇の迷路に迷い込む前まで、僕が住んでいた子供の頃に眺めていた世界と同じだ。
違いはしない。確かにこの世界だった。
その世界のことを語る前に、しばらく今までの暗闇の思い出を振り返り、浸っていたい……
もう僕には縁のない世界だから……
そして今後、二度と足を踏み入れることのない世界だから……
今の内に……
忘れない内に、しっかりと記憶の底に刻んでおきたい。
だからしばりく瞑想にひたっていたい。もうしばらく……
アァ〜、いつまで浸っていてもはじまらない。とにかくやはり、ついにまたあの頃の世界に出ることが出来たんだ。
この信仰にめぐり合ってから、とにかく人生に夢を抱き希望と生き甲斐に満ち満ちた境涯に出ることが出来たんだ。
とにかくボツボツとあの頃の思い出を振り返ってみましょうか




