プロローグ 後
俺達は王から村が魔族に襲撃されたと報告を聞き急いでそこへ向かっていた。
これで幾つ目だ!村が襲われるのは!
近年、平静を装っていた魔族が突然人間に危害を及ぼしてきた。次々と襲撃され消えていく村。街。魔族はまるで害虫を駆除するかのように人間をいとも簡単に殺していく。
この前、前線で戦っていた騎士副団長が魔族に倒されたらしい。もう息もしていないというのに何度も何度もその身体を切り刻み最後にその身体を火炙りにしたと聞いた時はなんと残虐な。と思わず身震いしてしまった。
「村まではまだか!」
「もうすぐに着くわ!誰か一人でも生存者がいればいいのだけれど…」
「間に合わなければ元も子もない!急ぐぞ!」
「「「了解!!」」」
俺は仲間に声を掛け全速力で森を駆けた。
すると目の前に光が現れ炎の燃える音、魔物の雄叫びが耳に届いた。
「間に合え!」
そう叫び森を駆け抜け見えたのは魔物に下半身を食われている少年の姿。
カッと目の前が赤くなった。
「その少年を、離せえええぇぇぇぇぇぇ!!!」
思いっきり剣を振りかぶり力に任せ魔物をぶった斬る。その瞬間、剣に炎を纏わせていたので致命傷は与えられ筈だ。
魔物は痛みのあまり少年を口から吐き出し痛みに暴れまくった。
俺を敵と認識したのだろう。魔物は我武者羅に魔法を撃つ。
しかし、その攻撃は俺に当たる事はなく仲間の魔法使いであるエリシアが魔法を放ち魔物は一瞬にして塵となった。
「少年!」
慌てて地に倒れ伏せる少年に駆け寄る。
少年は奇跡的に息をしていた。
「少年!死ぬな!頑張れ!」
俺のその叫びに少年は薄らと目を開いた。
聖女のリゼットが駆け寄り治癒をかける。
しかし、少年はそれを手で制した。
「何故!?」
「ゆ、しゃ、、ま」
何故少年が治癒を断ったのか分からず焦っていると少年に手を弱々しく掴まれた。
ゆっくりと口を開き声を出す少年。
「…なんだ」
「ぼ、くね、」
「あぁ」
「か、、さん、まもれ、なか…たの。ぼ、く、、もと、いきた、……ねが、、まお、う、、たお…….…がい」
「…任せろ!絶対に魔王を倒してみせる!そして、この世界を平和にしてみせよう!だから、少年、安心してくれ」
「あり………と」
少年は涙を一雫流し微笑みながら眠りに落ちた。
少年を含めた村人全員を埋蔵し俺達は重い足取りで王国へと歩いていた。
誰も、何も喋らなかった。
しかし、その胸の内は全員一致していた。
必ず、魔王を倒す。と。
それから数年後、勇者は魔王を倒し英雄となった。仲間という大切な人達を代償にして。
次から本編の始まりです。
誤字脱字よろしくお願いします。