プロローグ 前
プロローグです。
「アルク!貴方だけでも逃げて!」
「嫌だよ!母さんを置いて行けないよ!」
「アルク!お願い、お願いだから、母の言うことを聞いて」
「母さ…」
「さぁ!行くのよ!はしりなさい!アルク!」
「母さ、ん、……ありがとう!大好き!」
僕はいつもの穏やかな母の笑みを見て泣きそうになりながらその場を駆け出した。
今の僕の力では何も出来ない。
母を助けてやる事なんて出来ない。
僕はただの村人なのだから。
もし、もしここに戦場に向かった父がいたなら、父がいたのなら何か変わったのかもしれない。
でも、ここに父はいない。
それが全てだ。
ふと、後ろを振り向く。
そして見えたのは母が魔物にかぶり付かれ血飛沫を上げる姿。
「あ、あ、あぁ、あああぁぁぁああああっっっ!!!!!!」
僕は怖くなって足元が震えその場に立っていられなくなった。膝から力が抜ける。地面にへたり座ると共に僕は恐怖のあまり失禁してしまった。
「か、母さん、母さん、母さん!」
僕は母が魔物に食べられる姿をずっと見ている事しか出来なかった。
魔物は母を跡形もなく全て食べ尽くすと僕に視線を向けた。そしてゆっくりとした足取りで僕の方へ近寄ってくる。
ドスン、ドスンと徐々にと大きくなる足音。
それは僕の死へのタイムリミットだった。
「かあ、さん…」
空を見上げ母を呼ぶと脳裏に母のあの笑みが浮かんだ。
「ごめん、ね」
そして僕の視界はブラックアウトした。
初心者ですので至らない所あると思いますがよろしくお願いします。