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流星は願いを叶えるか  作者: 瓶s
2/9

懇親会

「そうねぇ…お魚は美味しいけれど、私達は食べないで欲しいわ?」

「契約者、ピスケスを食べちゃめーっ!だよ!」

「え、えぇ…って、そうじゃなくて!あんたらが、願いを叶えてくれる、星の神ってやつ?」


二人揃ってきょとんと目を丸くし、似た顔を見合わせてこちらへ向き直った。


「えっと…そうね、私達は星の神の1柱。ピスケスって名前なんだけれど、うお座って言った方がしっくりくるかしら。それで、願いを叶えるって話については、ごめんなさい。私達だけじゃできないの。」

「ピスケスをいれてー、12柱!全員が揃わないと、お願いなんてそう簡単に叶えさせられないのだーっ!」


そ、そうだったのか…。躍起になってた佐藤や志賀がもし召喚できてたとしても、どのみち何も出来なかったってわけだな。哀れ。


「そ、そんな顔させちゃってごめんなさいね。これでも、邪な願いを叶えさせない為の保険だから…」

「でも、俺があと11回儀式やったら揃うんじゃないの?」

「いいえ。契約は1対1なの。それに、貴方は私達と上手く適合したから召喚できたけれど、他の神とはそうでない可能性が高いわ。人間でいうところの親友みたいなものね。」

「そういうことー。ピスケス、契約者が一番すき!これからよろしくね!」


幼女の方のピスケスが俺に抱きついてきた。反射的にその白髪の頭を撫でる。えへへー!なんて嬉しそうな声出しやがって、可愛いやつめ。…あれ?これからよろしく、だと?


「ちょ、ちょっと待ってくれ。もしかして、ここに住むの?」

「一旦召喚されちゃった以上そうなるわね。あ、じゃあ、これを渡しておかないと。肌身離さず持っていてね。」


幼女を離して、母親から何かを受け取った。それは、xみたいな形をした金属のついたネックレスだった。シンプルなデザインだが、それがかえって美しさを引き立てている。地味に熱い。


「これは?」

「これは契約者の証。使うべき時が来れば、それは貴方に最も適した形に変形するわ。楽しみにしててね。」

「使うべき時って…え、俺は結局、何をすればいいんだ?」

「ひとまずは適合者を全員集めることが先決じゃないかしら。全員に集まって貰って、願いを叶えないと私達は消えないわけだし…」

「そ、そんな。それってめちゃくちゃ時間かかるよな!?そんなに俺ん家にいられても隠しきれる自信ないって言うか、困るっていうか…」

「それは大丈夫。私達は貴方の中にいますからね。現に今、あの子がいないでしょう?」


ハッとなって辺りを見回す。確かにどこにもいない。母親の方に視線を戻すと、幼女が母親の足元でむくれていた。


「契約者全然構ってくれないー」

「あらあら、拗ねちゃったの?ごめんなさいね、大事なお話だったのよ。」

「むー」


拗ねさせたのは俺が原因なんだし、何とかしなければ…ポケットの中を探る。あった。今日購買で買ったチョコレートだ。まだ少し残っている。


「これあげるから、許してくれないかな?」

「なぁにこれ?いい匂いがする!」

「紙を剥いて食べるんだよ」


いそいそと銀紙を剥いて口にチョコレートを放り込む幼女。瞬く間に花が咲いたような笑顔になる。はあ~~くっそかわいい。と、母親から向けられるムッとした視線に気付いて顔を引き締める。俺はロリコンじゃないです。


「コホン。とりあえずこれで目下困ることはないかしら?」

「あっはい。多分、ないと思う。」

「もし困ったことが出来たら、いつでも聞いて構わないからね?いつだって、私達は貴方の心にいるわ。」


心…?どういうことだろ

『こんな風に、ね。』

なるほど脳内DMですねわかります。


「……貴方には苦労をかけることになるわ。迷惑をかけて、本当にごめんなさい。」


迷惑?そりゃあちょっと騒がしくなるかもしれないし、学校でもやばい奴だって思われそうな質問しなきゃならないかもしれない。けど、それほど迷惑だとは思えなかった。


「そんな、全然迷惑じゃないよ。これからよろしく、ピスケス」

「……そうね。どうぞ、よろしくお願いします。」


彼女は会釈し、また幼女は手を振って消えていった。途端、部屋が暗くなる。そういえば今は真夜中なんだった。さっきのことが夢でないことは、手に残った熱を持つネックレスが証明している。忘れないうちに、首にかけておく。この上から制服を着ればまずバレないだろう。そこは安心だ。

眠気など皆無に等しいほどだったので、朝までは質問会をして過ごすことにした。本音を言えば出てきてもらって話したいが、いつ両親が起きるかわからないので、今はやめておいた。


『もしもし、聞こえる?』

『えぇ、聞こえていますよ。どうかした?』


なんか妙な感じがするが、意外とスッキリしている。奥の方で幼女が契約者ー契約者ーと喜ぶのさえわかるほどだ。


『あーその、せっかくだから懇親会?質問会したいなーと思って』

『まぁ、いいわね。色々教えてくださるのね?楽しみだわ~』

『ピスケスもーっ!ピスケスもやるーっ!』

『えっと、まずなんであの時すぐ出てこなかったんだ?』

『あの時…儀式かしら。覚醒まで力が足りなかったのよ。現界は大仕事ですから。』

『えぇ…そんな病原菌みたいな…』

『だから、他の人もそうかもしれないわよ?』

『…失敗したって言ってる奴は、失敗したわけじゃないかもしれないってことか』

『そういうことになるわね。けど、覚醒してない適合者は意外とわかりやすいわ。』

『と言うと?』

『そうねぇ…、私達の意思がまだ無いから、先に入った力だけ漏れて本体の人間が貴方のネックレスみたいになるわね』

『あっちっちだ~』

『え?これ仕様じゃないの?』

『貴方の本質が火だからそうなってるのよ~。こういうのは私達より貴方本人に影響されるから。』


そうじゃん。この人たちうお座じゃん。どう考えても水属性っぽいのに、ネックレスが熱い時点で妙だと思うべきだった。


『じゃあなんで、俺が適合者?』

『それは……』

『ピスケスの好みが』

『中身。性格ね。うお座らしいとかあるでしょう?そういうことよ。』

『な、なるほど~』

『納得したわね?はい。この話はおしまい。ほら、もういい時間だから準備しなきゃダメよ』


時計を見れば、もう6時過ぎである。トランス状態とかなんとか、そういうのに入ってたんだろうか。これからは時間に気をつけないと大変なことになりそうだ。とりあえず、まずは学校に行かなければ話が始まらない。準備を済ませ、いつもより随分早い時間に家を出た。


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