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第二十一章 宇宙パトロールが隠していた事

◆ 登場人物 ◆


ダイチ(大地)

 オレ。中学二年生。メガネをかけている。

 宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染して、一時的にチ〇コが猫になってしまい、それを妹やタイヨウに触られてしまった。


ショウビ(薔薇)

 オレの妹。一つ年下。血はつながっていない。

 どういう訳か、離れた場所にいてもオレのピンチを察知できるようなのだが…………。


スイショウ(水晶)

 オレの幼馴染。同い年。家がとなり。

 時間が巻き戻されたので、オレに赤ちゃんはどうやったらできるのか真顔で聞いてきた事や、オレと幼稚園以来のキスをした事もなかった事になってしまった。


P1(ピーワン)

 赤いビキニ型宇宙人のパトロール隊員。

 ショウビの下半身に寄生している。


P2(ピーツー)

 青いビキニ型宇宙人のパトロール隊員。

 スイショウの下半身に寄生している。


コハク(琥珀)

 オレの中学で生徒指導を担当する先生。

 実は痴女で、オレを性奴隷にしようと企んでいる。


タイヨウ(太陽)

 小学生の時にショウビの悪いうわさを流していて、オレが投げ飛ばしたヤツ。

 それなのに、宇宙テロリストの破壊活動に巻き込まれた時、オレを助けようとしてくれた。



◆ これまでのあらすじ ◆


 宇宙パトロールの二人が宇宙船に戻っている間、一人で宇宙テロリストを追っていたオレは、宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染してチ〇コが猫になってしまう。


 しかし、しばらくすると元に戻ったので、以前、宇宙テロリストが破壊活動をした時にオレを助けようとしてくれた、タイヨウの家に行くが、治ったと思った『ねこチ〇コ』がそこで再発して、それを彼に触られてしまう。


 あわてたオレは『ねこチ〇コ』がゲロを吐く前に、急いでタイヨウの家から出るが、妹からかかってきた電話で、彼女がオレのピンチに全く気が付いていなかった事を知る。


 いつもなら離れた場所にいてもオレのピンチを察知していた妹が、どうしてこの時はそれができなかったのか…………。




 宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染したせいで大変な目にあったオレは、翌朝、宇宙船から帰って来て、再び幼馴染のスイショウに寄生した宇宙パトロールのP2から、今後の方針を説明される。


「…………ニャので、六体目の宇宙テロリストが、宇宙兵器の活動中にその近くにいるのは間違いニャいから、これからはそいつが破壊活動をするようにわざと仕向けて、その中でそいつを抹殺するという作戦をひたすらくり返す事に、昨日の宇宙パトロールの会議で決まったのニャ!」


「マジか…………」


 オレはそれを聞いて、通学路を歩きながら、ため息を吐く。


 前回の破壊活動の時に、大勢の生徒が目の前で死んだのを思い出したからだ。


 あれを、また見るはめになるのか……。


 時間が巻き戻されれば、なかった事になるとはいえ、誰かが死ぬのを見るのはキツいんだが…………。


 そう思ったオレがメガネを直しながら、


「……宇宙兵器が動いている時、その近くに宇宙テロリストがいるというのは、絶対に間違いないのか?」


 と質問すると、妹のショウビに寄生したP1がうなずく。


「それは間違いないよ、お兄たん! 宇宙兵器は近くからしか操作できないようにしておかないと、アタシたちの宇宙船にハッキングされて、破壊活動ができなくなってしまうものぉ!」


 確かに、そういう事なら、六体目は宇宙兵器の破壊活動中に探すのが、最も確実だとは思うが…………。


「一応、もう一度だけ確認させてくれ…………ビキニ型宇宙人が寄生できるのは女だけで、学校の先生や職員や、近所の住民には寄生していない事も、すでに確認済みだと前に聞いたが、それが間違っているという可能性はないのか?」


「詳しい説明はできニャいけど、その可能性は絶対にないニャ! だから、女子生徒が座るイスの匂いを嗅いでも見付ける事ができず、女子トイレに隠しカメラを設置するのもダイチが反対するなら、もう他に作戦はないニャ!」


 そう言われてしまうと、他にいい考えがない以上、従うしかない。


 それでオレたちは宇宙パトロールの会議で決まった方針どおり、放課後になると、すでに身元が分かっている五体の宇宙テロリストを再び抹殺して、死体を回収する。


 すると振動とともに夕日で赤く染まった校舎の向こうに土煙が舞い上がり、巨大なハンマーを備えた宇宙兵器が姿を現す。


「行くよ、お兄たん!」


「ダイチ! 今度こそ、六体目を見付けるのニャ!」


「お、おう……」


 張り切る二人とは対照的に、オレは完全に腰が引けてしまっているが、それでも何とか『ビキニキラー液』が入った水鉄砲を構えて二人の後を追い、女子生徒のスカートの中に液体をかけようとする。


 だが宇宙兵器のそばまで行くと、どうしてもその破壊活動に巻き込まれる生徒の姿が目に入って、オレは怖気づく。


 宇宙テロリストが行なう破壊活動に遭遇するのはもう四度目だが、最初の頃は古いSF映画のような光景に目を奪われて、周りで死んでいく生徒たちには意識が行かなかったが、一度気になり出すと、もうそればかり見てしまうのだ。


「もおぉ、お兄たん! ボーっとしてないで、ちゃんと任務に専念してよぉ!」


「しっかりするのニャ、ダイチ! 六体目さえ抹殺できれば、この学校での戦闘が一区切りつくんだからニャ!」


 ああ、そうだ。


 ここで六体目の宇宙テロリストを見付けられれば、この学校での戦いに終止符が打たれて、生徒たちが死ぬ事もなくなるのだ。


 それでオレは頭を振って、意識をビキニハンターとしての任務に集中させる。


「すまない。もう大丈夫……」


 しかしオレがそう答えた瞬間に、P1が寄生している妹の身体にコンクリートの破片が当たって、彼女がふっ飛ぶ。


「P1!」


「ダイチ! 時間を巻き戻したら、いま起きている事はなかった事にニャるんだから、P1の事は放っておくのニャ!」


「うるさい!」


 いくら時間を巻き戻せばなかった事になるとしても、目の前で妹の身体が傷付いて倒れているのを、放っておく事なんてできない。


 けれど、そこへ向かおうとしたオレの身体も、機械の触手になぎ払われてふっ飛び、そのまま意識がフェードアウトする。


 ……そして五回目の巻き戻しによって迎えた、六回目の朝…………。


 ベッドから飛び起きたオレは、メガネもかけずに自分の部屋を出て、廊下にいたショウビを抱きしめ、


「あ、あの…………兄さん……?」


 と、戸惑う妹からすぐに手を放して謝る。


「ごめん。ちょっと怖い夢を見たんだ…………悪かった……」


「…………大丈夫ですか、兄さん?」


「ああ、もう大丈夫だ…………」


 だがその日の放課後も、六体目を見付ける事はできずにオレたちはみんな殺されてしまい、再び時間が巻き戻されて同じ朝に目覚めたオレは、目の前で死んだ妹が生きている姿を見て、思わずまた彼女を抱きしめてしまう。


 そして、そんな事がくり返されるうちに、オレの中で、ある衝動がどんどん大きくなっていく。


 それはショウビやスイショウや自分の死を何度もくり返しているうちに生まれた、彼女たちと自分の遺伝子を残さなければいけないという、生物の本能的な衝動だ。


 しかしその衝動は、ショウビやスイショウの気持ちなど全く考えていない機械的なものだから、絶対に実行する訳にはいかない。


 それなのにオレは、十回目の巻き戻しの後に目覚めると、その衝動を抑えられなくなって、廊下にいたショウビを自分の部屋に引っ張り込んで、ベッドの上に押し倒してしまう。


 オレの家は、父も母も仕事のために早朝に家を出るから、その行為を止められる者は誰もいない。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 叫んだオレは、すぐに妹を起こして廊下に出すと、そのまま階段を下りてバスルームに入り、ガスを点けずに水のままシャワーを浴びる。


 ヤバい。


 このまま、ショウビやスイショウや自分の死がくり返され続けたら、オレは彼女たちに何をするか分からない。


 何としてでも、早く六体目を見付けなければ…………。


 そう思いながらバスルームから出たオレは、妹に謝ると、どうにか気持ちを抑えて学校に行き、放課後になると再び五体の宇宙テロリストを抹殺して、その後で出現した宇宙兵器の周りで逃げまどう女子生徒たちのスカートの中に『ビキニキラー液』をかけてまわる。


 けれど、それをどれだけ続けても、なぜか六体目が見付からない。


 なぜそいつは、ずっとオレたちから逃げ続けられるのか…………。


 必死にそれを考えていたオレは、突然、ある事に気が付いて、宇宙パトロールの二人に向かって叫ぶ。


「……次で何回目だ?」


「ニャ?」


「地球の時間を巻き戻すのは、次で何回目だ?」


「えーと、確か、十一回目だよ、お兄たん!」


「違う!」


 オレが否定すると、その二人は走りながらキョトンとする。


「ニャにが違うんだニャ?」


 そうP2に聞かれたオレは、パラパラと降ってくる細かい破片を両手で防ぎつつ、さらに叫ぶ。


「一体目の宇宙テロリストを、オレが目撃してからの回数じゃない! お前たちが、この学校に来てからやった時間の巻き戻しが、トータルで何回目かと聞いているんだ!」


 すると二人は足を動かしたまま顔を見合わせて、ため息を吐く。


「…………とうとう気が付いたんだね、お兄たん……」


「……ダイチなら、いつか気が付くと思ったけど、予想より早かったニャ……」


「いいから、早く答えろ! P1、P2!」


 オレが再び叫ぶと、巨大なハンマーによって壊されていく校舎を背にしながら、P1がそれに答える。


「…………次でトータル百二十八回目だよ、お兄たん……」


 その回数のあまりの多さに呆然とするオレ。


「くそっ……オレの記憶がバックアップされる前に、すでに百回以上の巻き戻しが、この学校で行なわれていたんだな…………」


 舞い上がる土煙を吸い込まないように制服の袖で口を押さえて、オレはさらに尋ねる。


「それだけの回数の巻き戻しが行なわれていたんなら、やっぱりオレの前にも、ビキニハンターになったヤツがいたんだろう? そのビキニハンターたちは、どうなったんだ?」


 P2がオレの質問に目を伏せる。


「……みんニャ、失敗のくり返しが十回を超えたあたりで、精神的な苦痛に耐えられニャくて、任務を続けられニャくなったニャ…………それで時間を巻き戻した後で、バックアップしていた記憶を与えずに、普通の生活に戻したのニャ……」


「ぐぬぬぬ…………お前たちはそうやって、自分たちが任命したビキニハンターが使えなくなるたびに、別の生徒をビキニハンターにしていた訳か……」


 オレがうなるとP1がそれを弁解する。


「あのね、お兄たん……そう言われると、アタシたちが地球人を使い捨てにしているみたいだけど、そんな事はないんだよぉ! 時間を巻き戻した後で、ビキニハンターだった時の記憶さえ与えなければ、その生徒は精神的にも肉体的にも元の状態に戻るんだからぁ!」


「そうニャ、ダイチ! 実はダイチのクラスにも、以前ビキニハンターだった生徒がいるんだけど、その生徒はちゃんと元の生活に戻って、誰からも不審に思われていないニャ! だから、昔のビキニハンターたちの事は心配しなくていいニャ!」


「むぅ……それならいいんだが…………」


 そして、そう話しながらも、逃げまどう生徒の中に女子がいないか探しつつ、そのスカートの中に『ビキニキラー液』をかけていたオレは、そこで新たに疑問に思った事を口にする。


「……でも、そもそもお前たちは、何で地球人を、わざわざビキニハンターに任命したりするんだ? 失敗のくり返しに耐えられない、精神的に弱い地球人なんか仲間にしないで、自分たちだけで宇宙テロリストを追った方が、効率がいいだろう?」


 二人はそう聞かれて困った顔をする。


「お兄たん……アタシたちも、最初の頃はそうしていたんだよぉ…………でも、いくらやっても、六体目の宇宙テロリストが見つからなくてぇ……」


「ニャので、われわれとは違う考え方をする地球人を仲間に入れる事で、この流れを変えられニャいか試すようになったのニャ!」


「なるほど。そういう事か……オレをビキニハンターに任命したのも、一体目の宇宙テロリストを目撃したからじゃなくて、この状況を変えるためだったんだな…………そう言えば、今までずっとおかしいと思っていたけど、お前たちが宇宙テロリストを探すのに、効率の悪い方法から順に試していたのも、効率のいい方法を先に試してダメだと分かっていたからか……」


 オレがそう言うとP1がうなずく。


「そうなんだよ、お兄たん! この学校の教師や職員や、近所の住人が寄生されていない事も、最初の頃にやった作戦で分かったのぉ! あとお兄たんに、そういう事情をずっと隠していたのも、なるべく先入観を持たずに宇宙テロリストを探してほしかったからなんだよぉ!」


「そうか…………やっと、お前たちの考えている事が理解できたよ……」


 だがオレがそう言った瞬間に、宇宙兵器の脚が降りてきて、P1がそれに踏みつぶされる。


「P1!」


 そしてその直後に、オレもP2も崩れてきたガレキに飲み込まれてしまう。


 たとえ隠されていた事実が分かっても、六体目の宇宙テロリストが見付からないという、この状況は何も変わらないのだ。


 これまでトータルで百回以上の巻き戻しをしたのに見付からなかったのならば、普通なら絶対にやらないような特殊な方法を試さない限り、六体目の宇宙テロリストは見付けられないのだろう……。


 一体、どんな方法を使えば、そいつを見付けられるのか…………。

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