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第二十章 妹がオレのピンチを察知できる条件は何か

◆ 登場人物 ◆


ダイチ(大地)

 オレ。中学二年生。メガネをかけている。

 宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染して、一時的にチ〇コが猫になってしまい、それに触った妹に、そいつのゲロをかけてしまった。


ショウビ(薔薇)

 オレの妹。一つ年下。血はつながっていない。

 どういう訳か、離れた場所にいてもオレのピンチを察知できるようなのだが…………。


スイショウ(水晶)

 オレの幼馴染。同い年。家がとなり。

 時間が巻き戻されたので、オレに赤ちゃんはどうやったらできるのか真顔で聞いてきた事や、オレと幼稚園以来のキスをした事もなかった事になってしまった。


P1(ピーワン)

 赤いビキニ型宇宙人のパトロール隊員。

 ショウビの下半身に寄生している。


P2(ピーツー)

 青いビキニ型宇宙人のパトロール隊員。

 スイショウの下半身に寄生している。


コハク(琥珀)

 オレの中学で生徒指導を担当する先生。

 実は痴女で、オレを性奴隷にしようと企んでいる。


タイヨウ(太陽)

 小学生の時にショウビの悪いうわさを流していて、オレが投げ飛ばしたヤツ。

 それなのに、宇宙テロリストの破壊活動に巻き込まれた時、オレを助けようとしてくれた。



◆ これまでのあらすじ ◆


 ビキニ型宇宙人のテロリストに殺されたオレは、同じ宇宙人のパトロール隊員が地球の時間を巻き戻してくれたおかげで、生きていた頃に戻り、ビキニハンターに任命される。


 そしてオレは、宇宙パトロールとともに、宇宙テロリストの全員をまとめて抹殺する作戦を実行するが、事前の調査で見逃したヤツが一体いたせいで、みんな殺されて、地球の時間がまた巻き戻されてしまう。


 さらにその後、宇宙パトロールが宇宙船に戻っている間、一人で宇宙テロリストを追っていたオレは、宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染してチ〇コが一時的に猫になり、そのゲロを妹にかけてしまう。


 一体、どうやったら、この事態を収拾できるのか…………。




 取り壊される予定の旧校舎に隠れていたオレは、一時間ほど経って『ねこチ〇コ』が治ったのを確認すると、急いでズボンのファスナーを上げて、その建物の外に出る。


 もともとは、まだ特定できていない六体目の宇宙テロリストを探すために、そこに入ったのだが、さすがにもうその気力はない。


 とにかくこれ以上変な目に遭わないように、宇宙パトロールの二人がいない時は、ヤツらには近付かないでおこうと心に刻むと、当初の予定どおり学校の図書室で時間をつぶして、約束の時間になったところでタイヨウの家に行く。


 妹のショウビに『ねこチ〇コ』のゲロをかけた事や、幼馴染のスイショウにキスされた事も、もちろん早く何とかしなければいけないが、タイヨウが命すら危ない状況でオレを助けようとした事については、それよりも先に確かめておきたい。


 だがビキニハンターのオレとは違って、一般人である彼は、時間が巻き戻される前の記憶はないから、どう尋ねればいいか…………。


 しかし妙案はなくとも、会って話さない事には何も確かめられないので、オレはタイヨウの家に着くと、ためらわずに呼び鈴を押す。


 そして小学生の低学年の時以来の訪問に、ちょっと緊張したオレが、メガネを拭きながら待っていると、玄関のドアを開けて彼が出てくる。


「ちょうど家の用事が終わったところだ。入れ」


「……お邪魔します」


「お袋はさっき出かけて夜になるまで帰って来ないし、親父はお前のところと同じで深夜まで仕事だから、気を遣う相手はいない。楽にしてくれ」


 タイヨウの父親は、オレの父と同じく警察官僚だから、長時間の勤務は当たり前で、家に帰れない事も珍しくないのだ。


 それから久しぶりに入った彼の部屋は、自分が大きくなったせいで、机やベッドが縮んだように感じて、何だか不思議な気持ちになる。

「……ここに入るのは六年ぶりか…………」

 中学二年のオレたちにとって、それは気が遠くなるような昔の事だ。


 彼のベッドに腰かけたオレは、ベランダに面した窓から流れ込む春の風を感じながら、とりあえず今までずっと気になっていた事を尋ねる。


「ところで、タイヨウ……今ごろ聞くのも何だが…………何でお前は小学生の時に、ショウビの本当の父親が浮気相手と失踪した事を、学校で言いふらしたりしたんだ?」


 それを聞いて彼はため息を吐く。


「…………その話をする前に言っておくが、お前の妹を傷付ける事をしたのは、本当に悪かったと思っている。吐いた唾は飲み込めないから、今さら謝っても許してもらえないのは分かっているし、本人に直接謝らないといけないのも分かっているが、また彼女に近付いたら、もっと酷い事をしてしまいそうで、恐くて謝りに行けなかったんだ……」


 そこでちょっと間をあけてから、タイヨウはさらに続ける。


「……何しろそうなったら、お前との関係が本当に終ってしまうからな…………お前はあの妹の事になると普通じゃなくなるし……」


 その言葉にオレはキョトンとなる。


「おいおい、待てよ。妹を守ろうとするのは、兄として普通の事だろ」


「それは、もちろんそうだが…………お前とあの妹の関係は、いろいろと度を越しているじゃないか……お前とあの妹はそう思っていないみたいだが…………」


「……あのな、タイヨウ。兄と妹が特別な関係になるなんて、アニメの中だけだぞ……現実世界でそんな事ある訳ないだろ」


 すると彼が困った顔をして黙り込んだので、オレは話を戻す。


「……それより、タイヨウ。お前は何でショウビをそんなに嫌っているんだ? その理由を説明してくれよ」


 オレがそう言うと、彼は目をそらして言葉を詰まらせる。


「…………ちょっと言いにくいんだが……実は俺はお前の妹に嫉妬していたんだ…………彼女は後から来たくせに、お前に特別扱いされていたからな…………小学生の時はその感情がどういうものか、自分でもよく分からなかったんだが……」


「え? タイヨウ、お前、そんな理由でオレの妹を傷付けたのか! じゃあ、投げ飛ばして正解だったよ! そもそも、オレの妹が特別扱いされるのが気に入らなかったんなら、オレに直接そう言えばよかったのに! …………って、何でそんな、あきれた顔でオレを見るんだ?」


「……いや…………いま俺は、けっこう思い切って、自分の気持ちを話したんだが……まぁ、そういう鈍いところも含めて、お前の事が好きなんだが…………」


「オレだって、お前の事は別に嫌いじゃない。オレの妹を傷付けるような事さえしなければな! …………そう言えばお前は、妹がオレの家に来る前は、スイショウの事もよく泣かせていたよな。あれも彼女に対して何か気に入らない事があったのか?」


「……すまないが、もうこの話はやめにしないか…………で、お前がしたかった話というのは、それだけか?」


 そう言われても、こんな会話では、タイヨウが六年間も疎遠だったオレを、命がけで助けようとした理由が、さっぱり分からない。


 それでオレは、外で困っている人がいたら助けるのかとか、災害があったらどうするのかとか、いろいろ聞いてみるが、どうやら彼は誰にでも親切という訳でもないようで、オレが助けられたのはなぜか、ますます分からなくなってしまう。


 そしてタイヨウがトイレに立ち、これ以上なにをどう聞けばいいのかと、オレがメガネを直しながら悩んでいると、カバンの中の電源を切ってあるはずのスマホが振動し、あわててそれを出したら宇宙パトロールのP1の声が聞こえてくる。


「お兄たん! さっきP2から話を聞いたよぉ! 学校で、宇宙病原体『ねこチ〇コ』に感染したんだってぇ?」


「……あのな、P1。いくら宇宙パトロールでも、電源の切ってあるスマホをハッキングして、無理やり通話状態にするのはやめてほしいんだが……」


「そんな事より、お兄たん! 『ねこチ〇コ』は治ったように見えても、時間が経ってから、またぶり返す時があるんだよぉ! それは大丈夫なのぉ?」


「なんだと! ……うっ!」


 その瞬間、P1の言葉が引き金になったかのように、再び股間が痛み出す。


「くそっ…………そういう事は、もっと早く言ってくれよ!」


 オレは文句を言いながら、痛みに耐えかねて、ズボンのベルトを外してファスナーを下ろし、中に押し込められてギュウギュウになっていた『ねこチ〇コ』を外に出す。


「うう……この状態を手っ取り早く治す方法は何かないのか?」


「アタシたちがそばにいれば、即効性のワクチンを打ってあげるんだけど、明日の朝まで地球には帰れないし…………だからチ〇コが猫になった時は、元に戻るまでトイレにでもこもるしかないよぉ! ……でも普通の人間はその病原体に感染してもすぐ治るのに、お兄たんは、ずいぶん『ねこチ〇コ』と相性がいいんだねぇ!」


「こんなものと相性がよくても、うれしくなんかない!」


 そう言い返したオレは、とにかくタイヨウに見付かる前に、この家を出なければと思って、まだ通話状態のスマホをカバンに放り込み、股間から生えた猫とズボンを手でつかんで、急いで部屋を出ようとするが、ドアを開けたところで、タイヨウとぶつかってしまう。


「おっと……どうした、ダイチ。もう帰るのか…………って、その猫、ベランダから入ってきたのか?」


「あ、いや、ごめん……こいつはオレの家の近所に住んでいるヤツで、オレになついているから、入ってきてしまったんだ…………」


 と、適当な事を言いつつ、オレはそこを抜けようとするが、片手でその猫を支えて、もう片方の手でズボンをつかみながらでは、身体が大きいタイヨウをどかせない。


「へえ、ずいぶん大人しい猫だな」


「ちょ……ちょっと待て、タイヨウ…………この猫に触っちゃダメだ……」


「大丈夫だ。怒らせるような触り方はしない」


「くっ…………こ、こいつは……人間に触られるのが嫌いなんだ……」


「そんな事ないだろ、ものすごく気持ちよさそうだぞ」


「ぐぬぬぬ……オ、オレが…………男に触られて……き、気持ちよくなる訳がないだろ……」


「? 俺が言っているのは、この猫の事だが?」


「こ、こ、こういう時は……す、数学の問題を…………か、か、か、考えれば……」


「ダイチ、どうした? お前、何か変だぞ」


 タイヨウはそう言いつつも、オレの『ねこチ〇コ』を触るのをやめない。


 しかも、その触り方がめちゃくちゃ上手くて、オレの額から冷や汗が流れる。


 なぜこいつは、こんなに『ねこチ〇コ』を触るのが上手いのか…………。


 そう考えていてオレはふと気が付く。


 ひょっとしたら、オレたちくらいの年令では、チ○コを触った事がない女子よりも、自分のをいつも触っている男子の方が、それを触るのが上手いのかもしれない。


 ならば、このままでは絶対にヤバいと思ったオレは、身体ごとぶつかって強引にタイヨウを押し退けて玄関へと急ぐ。


「すまん……今日は帰らせてもらう……この猫は、オレの家の近所まで連れて行くから……」


 オレのそんな様子にキョトンとしながらも、彼は玄関まで送ってくれる。


「ん? そうか…………また話したい事があったら、いつでも来てくれ」


 そのまま大急ぎでその家を出たオレは、猫になったチ〇コが元に戻るまで自分の家には帰れないので、近くの公園に行ってトイレに飛び込む。


 そして、あとどのぐらい時間をつぶさなければいけないのだろうと思いながら、カバンからスマホを出して電源を入れると、すぐにショウビから電話がかかってくる。


「……あ、兄さん。大丈夫ですか? 心配で、何度も電話したのですよ……」


「ああ、ごめん。スマホの電源を切ったままだったんだ…………あと、タイヨウとの話は、さっき終わったけど、今回はあいつを投げ飛ばしたりしなかったから、もう心配はいらないぞ」


「そうですか……それなら良かったです」


 けれど妹のそのセリフを聞いて、オレはある事に違和感を覚える。


「…………ショウビ……ところでお前は、オレがタイヨウをケガさせないか、心配してくれていたんだよな?」


「ええ、そうです」


「それ以外の何かで、オレが困っているとは感じなかったか?」


「え? いえ……今回は特に、そういうのは感じませんでしたが…………」


「そうか……分かった」


 そう答えて通話を終えたオレは、いま話した事について考える。


 これまでショウビは、オレがピンチの時は、離れた場所にいても必ずそれを察知していたのに、『ねこチ〇コ』をタイヨウに触られて、もうちょっとで、そこからゲロを吐くところだった事については、なぜか察知できなかった訳だ……。


 これは一体、どういう事なのか…………。


 妹はこれまでに三回、離れた場所にいながらオレのピンチを察知した。


 一回目は、食品工場の冷凍室で、地球人は寒いと裸で抱き合うものだと思い込んでいたP2に、ほぼ全裸で抱き付かれた時。


 二回目は、学校での持ち物検査を厳しくして、生徒の肛門も検査しようと言い出したコハク先生に、生徒指導室で肛門を見せられそうになった時。


 三回目は、同じく生徒指導室で、ドーピング検査の段取りを確認するという名目で、コハク先生にチ〇コを出して見せろと言われた時。


 それらのピンチを、離れた場所にいながら、今まで全て察知できたショウビが、なぜ今回は察知できなかったのか…………。


 オレはそれを考えていて、妹がオレのピンチを察知できなかった事が、もう一つだけあったのを思い出す。


 それはP2といっしょに、旧校舎でダイナマイトの罠にかかった時の事だ。


 あの時はP2が、オレのアレを出して導火線の火を消そうとしたが、ショウビはそれを察知できず、彼女がオレを助けに来る事はなかった……。


 ひょっとして、あの時と今回の共通点さえ分かれば、妹がオレのピンチを察知できる条件も分かったりするのだろうか…………。

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