表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/24

第二章 宇宙テロリストと、宇宙パトロール

◆ 登場人物 ◆


ダイチ(大地)

 オレ。中学二年生。 メガネをかけている。


ショウビ(薔薇)

 オレの妹。一つ年下。 血はつながっていない。

 日本刀のように美しい。


スイショウ(水晶)

 オレの幼馴染。同い年。 家がとなり。

 夜空に輝く小さな星のように可憐。



◆ これまでのあらすじ ◆


 中学二年生のオレは、様子がおかしい妹と幼馴染が偽物だと直感して、その二人を問い詰める。


 ところがその時、ドリルをいくつも付けた大きな機械が街に出現して家々を破壊、通学路を登校中の生徒たちが逃げまどう。


 さらにそんな状況で、偽物と思われる妹と幼馴染が、爆風でスカートがめくれた女子生徒たちのパンツに、水鉄砲で液体をかけ始める。


 一体なにが起きているのか……。




「ひゃぁ!」


 パンツに液体をかけられた女子生徒たちが驚く。


 それはそうだ。


 いきなり下半身に液体をかけられたらオレだって驚く。


 朝の通学路でそんな変態行為があれば、普通なら大騒ぎだろう。


 だが今はそれどころではない。


 ドリルをいくつも付けた大きな機械が、周りの家を次々と破壊しながら、爆発するトゲを四方八方にばら撒いているのだから。


 それで女子生徒たちも、パンツに液体をかけられた事に驚きながらも、ドリルの機械から逃げるのに必死だし、周りにいる男子生徒たちも、女子がそんな目に遭っているのに気が付いても、それを止める余裕はない。


 もちろんオレも、女子生徒たちのパンツに水鉄砲で液体をかけているのが、自分の妹(の偽物)と幼馴染(の偽物)でなければ、そんな変態行為は放っておいて、さっさと自分の身を守るために逃げていただろう。


 しかしオレはその二人から、本物の妹と幼馴染の居場所を聞き出さなければいけない。


 だから爆風のほこりで汚れたメガネを拭いたオレは、通りの先にいるその二人に向かって走る。


 するとドリルの機械が、クモのような長い脚をガチャガチャと動かしながら通りの方に近付いて来て、オレが向かっている先にある家の屋根や壁をバリバリと砕いていく。


 その屋根瓦の破片や木片が降り注ぐ下を、オレが頭をかばいながら走り抜けると、ギリギリ後ろをドリルの機械が通りすぎ、ブロック塀が崩れ、電柱が倒れる。


「うわっ!」


 足を止めずに後ろを見たオレは、もう少しで自分がそれらの下敷きになっていた事にゾっとしつつも、妹と幼馴染の偽物ところへ駆け寄って、二人の水鉄砲をつかむ。


「お前ら、こんな時に何をやっているんだ!」


「あっ、お兄たん、アタシたちの邪魔をしちゃ、ダメだよぉ!」


「そうニャ! 早く宇宙テロリストを見付けニャいと、また同じ事のくり直しになるニャ!」


 その二人の変な口調と意味不明な言葉で頭がクラクラしたオレは、手が緩んで幼馴染の偽物の水鉄砲を放してしまう。


「さらばニャ!」


「くそ! 待て、スイショウ! ……じゃない、偽スイショウ!」


 逃げそこねて、まだオレに水鉄砲をつかまれたままの妹の偽物が、それに反論する。


「アタシたちは本物だよぉ!」


「ウソをつくな! お前たちが本物なら、女子のパンツに液体なんて……」


 そう言っている途中で、ドリルの機械から撃ち出されたトゲの一つが通りに着弾して、停めてあった車が爆発でふっ飛び、オレはとっさに妹の偽物の身体に覆いかぶさる。


「くっ!」


 それに乗じて偽ショウビは、オレの腕の中で目をウルウルさせながら、


「お兄たん、信じてよぉ…………」


 と猫なで声を出すが、それが本物のショウビだったら、そんな表情をするはずがないし、甘えた声だって出す訳がない。


 それでオレが、メガネ越しに冷ややかな目を向けると、怒ったそいつはオレの身体をつき飛ばす。


「もおぉ! お兄たんのバカぁ!」


「こら、待て!」


 けれどそいつはオレから逃げながらも、周りの生徒の中に女子を見付けると、その近くでしゃがんで爆風でスカートがめくれるのを待って、パンツに水鉄砲の液体をかける。


 追い付いたオレが、もう一度その水鉄砲をつかんで、


「こんな訳の分からない事をするヤツが、オレの本物の妹のはずがないだろ! そもそも妹は、水鉄砲なんて持っていなかったし!」


 と叫ぶと、そいつもオレの腕を振りほどこうと、もがきながら大声を出す。


「ビキニ型宇宙人のテロリストが、この近くにいる女子生徒の誰かの、下半身に寄生しているんだよぉ! そいつが、あの宇宙兵器『ドリルっち』に命令しているのぉ!」


 オレはその声に負けないよう、もっと大声を出してそれを否定する。


「中学生にもなって、なに子供番組みたいな話をしているんだ! そんな事が現実にある訳がないだろ! 確かにあんな形をした機械を見るのは初めてだが、ビキニ型宇宙人なんて……」


「本当だよぉ! だから、この水鉄砲に入った『ビキニキラー液』で、その宇宙テロリストを抹殺しないといけないのぉ!」


「黙れ! とにかく今は、こんな事で言い争っている場合じゃない! 早く逃げないと…………」


 だがオレはそこで、遠くにいる女子生徒の一人に違和感を覚える。


 その生徒はこんな状況であるにも関わらず、落ち着いているように見えたからだ。


 妹の偽物が、そんなオレの様子に気が付いて尋ねる。


「? ? どうしたの、お兄たん?」


「…………いや……この状況で平然としている女子がいたんだ……」


 しかし偽ショウビが振り向いた時には、その女子生徒は通りを曲がって見えなくなっていた。


 それで顔を見合わせたオレたちが、その女子生徒がいた場所へ向かおうとすると、目の前にトゲが着弾する。


「!」


 その瞬間に、脊髄反射で妹の偽物を突き飛ばすオレ。


「お兄た……」


 そして自分が爆発に巻き込まれるのをスローモーションのように感じつつ、オレの意識はプツっと消える。


 …………という、ふざけた夢から覚めたオレは、スマホのアラームを止めて、ベッドで上半身を起こす。


 何でこんな夢を見たのか……。


 ビキニ型宇宙人のテロリストが、女子生徒の下半身に寄生しているなんて…………。


 でも夢で良かった……。


 現実だったら、オレは死んでいたのだ…………。


 そう思いながらオレは、メガネをかけてカーテンを開け、差し込む朝日の中で、今日の予定をスマホで確認する。


 けれど、そこに書かれている内容が何だかおかしい。


 一週間前に済ませたはずの事が、なぜかこれからやる予定として書かれていたからだ。


 その事に首をかしげつつ、オレは顔を洗おうと部屋着のまま廊下に出る。


 するとそこに妹のショウビが立っていた。


 彼女はオレよりも早く起きるから、すでに顔を洗い終わっているのはいつもの事だが、今日はもう制服にも着替えている。


 だがいつもなら、制服を着たショウビと会うのは、顔を洗って部屋に戻ったオレが制服に着替えた後なのだが、今日はどうしたのだろうか?


 そうオレが尋ねるより早く、彼女が口を開く。


「お兄たん! あの女子生徒の顔は、ちゃんと憶えてるぅ?」


 そのアニメキャラのようなしゃべり方にびっくりしたオレは、あわてて部屋に戻ってドアを閉める。


 …………これは……まだ夢なのか?


 こめかみを押さえながら、オレが考え込んでいると、コツコツとガラスをたたく音が響く。


 見ると窓の外のベランダに、幼馴染のスイショウが立っていた。


 それで、このおかしな現象について相談に乗ってもらえるかと思って、オレが窓のカギを外すと、部屋に入って来るなり、その少女はニっと笑う。


「どうニャ! 地球の時間を一週間だけ巻き戻したニャ! これであの宇宙テロリストが攻撃を始める前に、われわれが先手を打てるニャ!」


 その言葉にオレは呆然とする。


 あれは夢じゃなかった?


 という事は、あの時、オレは本当に死んだのか?


 衝撃の事実にオレが固まっていると、背後のドアが開いて偽ショウビが入って来る。


 そしてオレが青ざめているのなんか気にもせず、妹の偽物は微笑む。


「お兄たんが、宇宙テロリストに寄生された女子生徒を目撃してくれたからぁ、時間を巻き戻すのがムダにならなくて済んだよぉ! 誰が寄生されているか分からないとぉ、時間を何回巻き戻しても、同じ事のくり返しになるからぁ、本当に助かったよぉ、お兄たん!」


 それを聞いたオレは、震える手でメガネを外して部屋着のすそで拭きながら、ズキズキする頭で言葉をしぼり出す。


「…………そ……その話が本当だとして……お前たち、本当は何者なんだ? …………オレの本物の妹と幼馴染を……どこにやった?」


「だからぁ、この身体は、ちゃんと本物だってばぁ!」


「そうニャ! ただちょっと宇宙パトロールで借りているだけニャ!」


「……何…………だと?」


「つまりねぇ、お兄たん! 今、お兄たんと話しているのは、お兄たんの妹と幼馴染に寄生している、ビキニ型宇宙人のパトロール隊員なのぉ!」


「はあ?」


「でも心配はいらないニャ! 宇宙テロリストの全員を抹殺したニャら、われわれはちゃんとこの身体から離れるニャ!」


 それがどういう事なのかを理解してオレは怒る。


「ふざけるな! お前ら、なに勝手にオレの妹と幼馴染に寄生しているんだ! 今すぐ離れろ!」


 そう叫びながら、オレは二人を床に押し倒して、そのスカートをバっとめくる。


 しかし、すらりと伸びるなめらかで美しい脚の向こうにむき出しになった、妹の赤いビキニと、幼馴染の青いビキニを前にして、オレはそれに触れる事ができずに目をそらしてしまう。


「く…………くそ……。妹と幼馴染の下半身に寄生するなんて、反則だ…………」


 床にしゃがみ込んで、うなだれるオレの肩を、起き上がった二人の手がポンポンとたたく。


「じゃぁ、特例でぇ、宇宙テロリストに寄生された女子生徒を目撃した唯一の地球人であるお兄たんを、宇宙テロリストと戦う正義のヒーロー、ビキニハンターに任命するよぉ! これから、地球のみんなが宇宙テロリストに殺されずにすむように、がんばってねぇ、お兄たん!」


 笑顔で語るショウビの後を、スイショウが続ける。


「うわぁ、すごいニャ! 女の子のパンツに液体をかけるのが任務だニャんて、男の子の夢だニャ! だけど宇宙テロリストの事も、われわれ宇宙パトロールの事も、他の地球人には秘密ニャんだから、友達に自慢したらダメだニャ!」


 そう言われてオレはうめく。


「……………………ぐ…………こんな事、人に言えるか……」


 こうしてオレは、ただの成り行きで、宇宙テロリストと戦うビキニハンターになってしまった…………。


 夢なら早く覚めてほしい……………………。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ