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頭のおかしな魔法使い

早速俺のことは試技場全体で話題になった。当然のことである。堂々と大きすぎる爆炎をまき散らしたのだから危険人物としてマークされることは間違いないのだ。唯一、シルフィーだけは輝いた目で俺を見ていた。まさか本当に使えると思ってもいなかったからいちばん驚いているのはおそらく自分なのだが、さんな事を知らないシルフィーはききとして聞いてくる。「どこでそんなすごい魔法を覚えたの?」

どこでと聞かれるとラノベと答えるしかないのだが、それは少し恥ずかしかったので本に書いてあったということにしておこう。周りの者たちが騒然とした。このような魔法が書かれた本など実在するわけがないというどよめきであった。しかし、そんなこと言われても・・・。現実にあるのだからしょうがない。自分としては他の魔法も使えるのかどうか試してみたいところではあったが、今それをすると大問題になりそうなのでやめておこう。そもそもなんで爆裂魔法を使ってしまったんだろう。いや・・。まさかホントに出るとは思ってもいなかったのだが・・。もっと他にあっただろう。火球ファイヤーボールとか威力の弱そうな魔法を選べばよかった。後悔先に立たず。痛いほど実感していた。冷静になってみると周りの反応が面白くなってきた。ちょっといじってみるのもいいかもしれない。詠唱だけしてみよう。「「黒より黒く、闇より暗き漆黒に」」

そこまで唱えたところで、口をふさがれた。てっきり逃げ出すと思っていたため不意打ちを食らったようにあっけなく詠唱をやめさせられた。そのまま拘束され、猿ぐつわを咥えさせられ、組み伏せられた。こいつは危険だ。皆がそう叫ぶのをききながら少しずつ意識がなくなっていった。

 起きるとそこに見慣れた天井があった。なんてことはなく、見たことのないまるで地下のような天井だった。実際、地下だった。縛られたまま床に転がされている。本当に魔法のチョイスを誤ったようだ。まさか地下牢に幽閉されるとは・・。ロープを自力で解くと、とてつもない空腹と便意がこみ上げてきた。

「「誰かー!!助けてー!!」」

そうは叫んでみたものの助けが来るとは思わないし、抜け出そうと思えば抜け出せるだろう。ただこれ以上やっかいごとを抱え込むわけにはいかないので、人を呼ぶのが最良だろう。石の上を歩くコツンコツンという音が地下中に響く。まさか本当に来るとは・・。ほどいたロープを急いで手に取り、小声でつぶやく。

「「バインド」」

ロープにくるまれた間抜けな格好ができあがった。

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