始まりの魔法
さあトウマ!魔法を使うのよ!―――――なにを望んでいるのだろうか?もちろん俺が魔法を使うことだろうが、俺は魔法に関する知識はライトノベルによるものとゲームで使っている魔法しかない。
そもそも魔力とか言う概念と一切関係の無い人生を送ってきた。もしここで魔法が使えなければ奴隷とか家畜に近い扱いを受けてしまうのだろうか。もう、帰りたい。心の底から願った。
事の発端は数時間前、やはり俺はシルフィーに引っ張られていた。そろそろ引っ張られることに慣れてきたから体を預け、目を閉じて軽く寝ているようなそぶりを見せていると、数分引きずれた後にほっぺたをぺしぺしされて起こされた。目の前には高い壁が反り立っていた。壁ではなく扉だったのだが。
そこは試技場と呼ばれ、魔法の練習に使う場所だそうだ。あらゆる状況が再現されており、日常魔法から軍事魔法までありとあらゆる魔法が研究されている。と、他にも何か係員の人が言っていたような気がするが、雄大な敷地に目を奪われ、ほとんど入ってこなかった。シルフィーはこっちこっちと手招きをしながら俺を誘導していく。どうやら目的地は砂漠地帯のようだ。その辺りには誰もいなかったことがせめてもの救いだろう。恥をかかなくてよかった。到着すると、さっそくシルフィーは話し始めた。日常魔法と軍事魔法、果てには魔法の起源まで話してくれた。全く分からなかったけどね。シルフィーが呼吸を整え、ぶつぶつと何かを唱え始めた。どうやら実演してくれるようだ。ちょろちょろという音と共にその魔法は効力をあらわにした。シルフィーの手からまるでホースでも握っているかのように水が飛び出していた。10リットルほど出したかと思うとぴたっと止まりまるで何事もなかったかのようにシルフィーがこちらを見ている。よっぽど驚いた顔をしていたのだろう、シルフィーがおそるおそる次に行っていいか?と尋ねる。大きく顔を縦に振ると、また何かを唱え始めた。今度は砂漠の砂が天高く舞い上がり、ドラゴンの形をとった。シルフィーが手を動かすとそれに合わせてドラゴンも動いていく。おそらくこれが軍事用魔法だろう。このドラゴンのせいで結構な人数が集まってしまった。
さて、魔法は使えと言われて使えるようになるものでは無いと思うのだが、らの武で呼んだ魔法でも唱えてみるとしよう。魔法と言えばこれだろう。「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」続きなんだっけ?まぁいいか。
「「「「「エクスプロージョン!」」」」」
爆炎と共に観客そして自分自身に驚愕の二文字が浮かぶ。完全にネタだったのにまさか本当に出るとは。しかもほとんどいい加減な詠唱だったにもかかわらずだ。
誰も一言の発さなかった。




