チューリップ
「こういうこと他の人ともしたことあるですか」
後輩くんの家のベッドの上で、私はもう上はブラジャーだけの姿で、今からやるぞって時に、後輩くんは変なことを聞いてきた。
「まぁ、初めてではないかな」
これまでそれなりの人数の方と付き合って別れてをしてきた。その中でそういう、身体の関係も経験した。もう22になるし、経験済みでも早すぎるということはない歳だと思う。
しかし男の人は相手は初めての方が嬉しいのかもしれない。というか、これからするぞって相手が他の人とも昔してたってあんまり聞きたくなかったことかもしれない。
「えっと、ごめん」
今更謝ったってどうしようもないことだけど。私に覆い被さるようにいるのに、俯いてしまって目を合わせてくれないため、少し不安になった。
「いやあの、謝ってくれなくて大丈夫です。気にしてないです」
そう言いながらも、目も合わせてくれなければブラジャーに手をかける気配もなかった。
彼は大学のサークルの後輩で、後輩の中でも1番仲良くしている後輩だ。そんな彼と付き合い始めたのは3ヶ月ほど前で、今日初めて家に誘われたので、いよいよかと覚悟はしていた。付き合っていてわかったが、彼は女の扱いがあまり得意でない。妹はいると言っていたが、彼女という女の人への接し方が下手だと思った。そのなかでもしかしてとは思っていたが、彼は私が初めて付き合った相手なのかもしれない。
「嫌だったら嘘ついてくれていいんだけど、私が初めて?」
「......初めてです。すみません」
やっと顔を上げて目を合わせてくれた彼の顔は赤くなっていた。これが私の裸を見て照れているのか、経験が無いことを私に知られてしまい恥ずかしがっているのかは私には分からなかった。
「AVとかでしかこういうの知らないので、その、うまくできないかもしれなくて」
この言葉を聞いて、あぁ恥ずかしいから赤くなっているのかとわかって、私はとても目の前の男性が愛おしくなった。この人は今私のことで頭がいっぱいだということがわかって嬉しいのかもしれない。
再び目を逸らしてしまった彼を私は腕を背中に回して抱き寄せた。彼の心臓が激しく動いていることが服越しでもわかった。
「そんな不安にならなくて大丈夫だよ。私は今、あなたのことが好きだよ」
私はできるだけ優しく彼に話しかけた。初めては誰もが経験することで、誰もが不安になるものだと思うから。
彼は腕を私の背中に回してきて、強く抱きしめてきた。心臓の鼓動がさらに激しくなった気がした。
「ありがとう。俺も好きです」
好きだと言われるのは単純に嬉しい。しかもそれが自分の好きな人から言われるのなら尚更だ。
私から顔を上げて目が合った彼は、男性の目をしていた。その目、何回見ても好きだ。もちろん今好きなのは彼だけだが。