あいらふゆう
木野かなた様企画、【冬は好きですか?】参加作品。
むかしむかしある町に、親を亡くして二人だけで暮らすとても仲の良い兄妹がおりました。兄の名前はエシュリー、妹の名前はリシャ。二人はとても幼いながら手先はめっぽう器用でしたから、それによって得た少しのお金で平穏とはいかないまでもなんとか無事に平和に暮らしていました。
ですがこの日の朝、この町にもついに冬将軍が現れてしまったのです。
「寒いよ、エシュリーおにいちゃん」
「リシャ……」
町の中暴れ狂う冬将軍は寄り添い合う二人にも容赦なくその寒さで襲いかかってきます。妹のリシャは春の暖かい頃に産まれたからか寒さにはとても弱く、身体は知らぬうちどんどん冷えていってしまいます。エシュリーはそれが心配でなりませんでした。もしリシャが冬将軍の手にかかり命を落とすような事にでもなってしまったら。
「リシャ、聞いてくれ」
「どうしたのエシュリーおにいちゃん」
「僕は今から町を出て西の森に行ってくるよ」
「西の森に?どうして」
寒さで震えるリシャにエシュリーは微笑みます。
「あったか石さ」
「あったか石?」
「聞いたことあるだろ?この町の西の森にはいつでもずっと暖かい温もりをくれる奇跡の石があるんだって」
その不思議な石の話はこの町の誰もが知っている有名な話。西の森の奥深く、小さな泉のすぐそばにそれはあるのだと言われています。ですがそこに辿り着くには『一つだけの物』を森の番人に差し出さなくてはいけません。
「エシュリーおにいちゃん。誰も分からなかった一つだけの物が何か分かるの?」
「ああ分かるさ。だから安心して待っていろ、な?リシャ」
リシャはエシュリーのその言葉にぱっと顔を輝かせエシュリーに抱きつき元気に頷きました。そんなリシャをぎゅっと抱き締め、エシュリーは直ぐに森へ行く支度を始め、そうして西の森へと一人出掛けていったのでした。妹、リシャにすぐ戻ると約束して。
ですがその後、リシャがずっと待っていてもエシュリーが帰ってくる事はありませんでした。と同時に、冬将軍もまたこの日を境に一切その姿を見せることはしなくなったのです。
そうして数年の月日が経ち、大人になったリシャは町に見聞にやってきていた貴族の次男坊に見初められ結婚をし、男の子と二人の女の子を授かり幸せに暮らしていました。
「スエラ、ミエラ。話があるの」
「どうしたの、お母さま」
「どちたにょー」
「アシュリーン、貴方も」
「何だよ、改まって」
真剣な様子の母の声に、三人の子供達はリシャの周りにとことこと集まり始めます。スエラは一番小さな子ミエラを抱っこして座り、長男アシュリーンはそんなスエラの隣に胡座をかいて座ります。そうして集まった子供達にリシャは、寒さに弱かった自分のため西の森へと『あったか石』という奇跡の石を取りに行った兄、エシュリーの話をしました。
「エシュリー兄さんはきっとまだ西の森にいる。そんな気がしてならないの」
「……だから?まさか母さん」
聡いアシュリーンは母が何を言いたいのか直ぐに分かった様でした。そんなアシュリーンにリシャはゆっくりと首を縦に動かします。
「西の森に行ってくるわ」
「母さんっ!」
アシュリーンは叫びます。
「アシュリーン、静かにして。ミエラが怯えてしまうわ」
「っ、そのエシュリー伯父さんがいなくなってから一体今で何年経ってると思ってんだよ!西の森にまだいるだなんて普通に考えてあり得ないだろ!」
「そうね。普通に考えたらあり得ないけれど……だけどね、何となくだけれど分かるの。あの森で、エシュリー兄さんが私を呼んでいる。この町が冬将軍に今でも襲われないのはエシュリー兄さんがまだずっとあの西の森にいるからだって」
この町の気候はあの日からずっと何かに守られているかの様に暖かく、そして穏やかだ。冬将軍がこの町を襲うことはあの日からずっとない。きっとそれは未だにエシュリーがあの森の中でリシャを寒さから守ってくれているからなのだ。
「お母さま……」
「スエラ、そんな不安そうな顔をしないで」
リシャを見上げて不安げに瞳を揺らすスエラをリシャはミエラごとぎゅっと抱き締めます。
「スエラ、ミエラをお願いね。スエラはお姉ちゃんだもの。大丈夫よね?」
「…………」
「……ふ、えぇぇぇぇぅぅぅー」
きょろきょろと皆の顔を交互に見ているだけだった一番小さな子ミエラが、話がよくわからないなりにも何かを察したのか一人泣き始める。それにつられるようにしてスエラの顔もだんだんと歪んでいき、そうして堪えられなくなったのか声を出して泣き始めてしまいました。そんな二人の妹にアシュリーンの顔は歪みます。
「何で……何で今なんだよ……。今まで西の森にだなんて行ったこともなかったくせに!今更何で伯父さんを探しに行くだなんて言うんだよ!」
「アシュリーン……」
キッ、とアシュリーンはリシャを睨み付けます。
「行くなよ母さん!父さんだってそんなこと絶対に許さないぞ!」
「……アシュリーン、西の森の番人が欲するたった一つの物が何か、私にもようやく分かったの」
「たった一つの物?」
「あったか石があるのは西の森深く。小さな泉があるその場所に行くには森の番人にたった一つの物を差し出さなくてはならないの」
リシャはこれまでそのたった一つの物が何なのか、ずっとその答えが分からなかった。だが今この時、リシャにはそれが分かったというのです。
「たった一つの物って、何だよ……?」
リシャはそのアシュリーンの問いには答えず、小さく微笑みだけを返し、そうして三人の子供達の頭をそれぞれ優しく撫で上げキスをしました。
「行ってくるわ。……エシュリー兄さんと一緒に必ず帰ってくるから」
そうしてリシャは一人、西の森へと足を踏み入れました。必ず帰ると子供達に約束して。
けれどその日、夜が深く暗くなってもリシャが子供達の元に帰ってくる事はありませんでした。
「アシュリーンお兄ちゃん……」
「…………」
リシャが森に入り帰って来ない事を知った三人の子供達の父でありリシャの夫は捜索隊を組み西の森へと向かいましたが、森の奥深くにあるという泉にも、ましてや森の番人にも会う事は叶いませんでした。
「……きっと森の番人には、たった一つの物が何なのか分かった人しか会えないんだ」
「そんな!じゃあお母さまにはもう二度と会えないのっ?お母さま、もう戻って来ないのっ?そんなの、そんなの…………っ、やだぁぁぁぁぁぁーーーーっうわぁぁぁぁーん!!」
「スエラ……泣くなよ」
わんわん泣くスエラにアシュリーンの瞳にも涙が徐々に浮き上がって来ます。それをアシュリーンは慌てて手で拭い、そうして隣の部屋で一人寝ているもう一人の妹、ミエラに視線をやった後ぎゅっと拳を握りしめました。
「スエラ、ミエラを頼む」
「……っ!?や、やだっ!アシュリーンお兄ちゃんまで行っちゃやだ!絶対にいや!いや!いや!いやぁーーっ!!」
「スエラ……」
アシュリーンの腕をひしと掴むスエラの手は力強く、何とか腕を引き抜こうとアシュリーンが力を入れるも全くびくともしませんでした。どころかスエラのそれはどんどんと力を増し強くなっていきます。
「スエラ、ちょ、離し……、いっ、痛い痛いっ痛いからっ!!スエラっ!」
「いやっ!!」
「折れるっ、折れるからぁぁぁぁぁ!!」
「やだっ!!」
「……にちゃ、ねーちゃ?」
騒ぐ二人に眠っていたミエラが目を覚まし、こしこしと目をこすりながらこちらに歩いて来てしまいました。そんなミエラにスエラが落ち着きを取り戻したのかアシュリーンの腕を離します。
「アシュにいちゃ、スエねーちゃ、何処か行くの?」
ミエラのその純真無垢な二人を見上げる瞳にアシュリーン、そしてスエラは二人こくりと頷き合いました。そうして二人はミエラに言います。
「ミエラ、今からお出かけだよ」
「おでかけ?」
「うん。お母さまをお迎えに行くの」
スエラのその言葉にミエラはぱぁっと顔を輝かせ元気に頷きます。
「おむかえ、行くっ!」
嬉しそうなミエラのそれに、二人は笑いあいそして肩を落とし苦笑しました。
「俺、父さんに怒られるな」
「お母さまと一緒なら大丈夫だよ。お父さまはお母さまが大好きだから」
「すきぃぃー!!」
三人はそうしてすぐに森へと行く準備をし始めました。一番小さな子ミエラは小さなポシェットと母のリシャが作ってくれた友達のテディベア、シェリー。スエラは斜めに提げた鞄の中にリンゴやパンを詰め、そしてアシュリーンは父に貰った一振りの護身用の剣を握りしめ、三人は西の森へと向かいました。
「でもアシュリーンお兄ちゃん、森の番人に会うにはたった一つの物が何なのか分からないと会えないんじゃないの?」
初めての夜のお出かけにミエラは一人楽しそうに先人をきり、スエラとアシュリーンはその少し後ろを歩きます。
「……何となく、分かる。その『たった一つの物』がなんなのか」
「そうなの?それって何?」
アシュリーンはスエラの顔をじっと見つめ、そうしてその頭に手を乗せ優しく撫で上げました。
「何?」
「スエラ、冬は好きか?」
「冬?」
あの日から冬将軍が来なくなったこの町には冬はやっては来ません。ですが冬が何なのかはスエラもアシュリーンも、そして幼いミエラも知っています。
「母さんは冬が嫌いだって言ってた。きっとそれはエシュリー伯父さんの事があったからなんだ。だから母さんは冬が嫌いなんだよ」
「それが森の番人が望むたった一つの物と何か関係があるの?」
「ないよ」
少しの間の後、ないの?とスエラはアシュリーンの言葉に眉間に皺を寄せます。アシュリーンは笑み、そんなスエラの頭をもう一度撫で先人をきるミエラの傍まで走りよりました。
「ミエラ」
アシュリーンはミエラに手を伸ばし、ミエラはアシュリーンの手を取り握りしめます。
「スエラ」
アシュリーンの声に頷きスエラもまた、もう一方のミエラの手を取り握りしめました。
「二人とも、絶対に手を離すなよ」
もうそこは西の森。リシャがエシュリーを探しに行き未だに戻っては来ない場所。ですが、近くにはひとっこ一人見当たりません。母を探している筈の父達捜索隊は森の中のはずですが、そんな気配すら微塵もありません。
「スエねーちゃっ!」
不気味に静まり返る森に怯えミエラがアシュリーンの手を離しスエラに抱きつきます。スエラもまた不安げにアシュリーンを見ますが、アシュリーンは森に視線を向けたままです。
「アシュリーンお兄ちゃん……」
「スエラ、ミエラ、手を離すな。絶対に」
アシュリーンは剣を構え、もう片方の手を二人に伸ばします。スエラは泣きそうになりながらもそのアシュリーンの手を取り、そしてまたミエラの手もしっかりと握りしめ、三人は森の中足を踏み入れました。暫く進むとアシュリーンは足を止め息を吸い込み叫びます。
「森の番人さまっ!」
アシュリーンの声は森の中で反響する事なく溶けて消えて行きます。ですがアシュリーンは負けじと叫び呼び続けます。
「森の番人さまっ!」
『うるさいよ、アシュリーン』
何度目かのアシュリーンの呼びかけに森の中響く声が答えます。
「森の番人さま、ですか」
『そうだよアシュリーン』
「……どうしてアシュにいちゃのお名前知ってるの?」
何処までも響き渡る声、そして兄の名前を知る声にミエラが震える声でスエラに尋ねます。ですが、スエラがそれに答える前に森の番人は答えます。
『お前の名前も知っているよ。ミエラ、そしてスエラ。たった一つの物達よ』
恐怖に震えるミエラ、そしてスエラでしたがアシュリーンが握り締めたスエラの手に力を込めるとスエラもまたミエラの握り締めた手に力を込めました。三人は挑むかのように声の響く森に対峙します。そんな三人に楽しそうに声はさらに響き渡ります。
『何しに来たんだい、たった一つの物達よ』
「森の番人さま、俺達を母さんの所まで通して下さい」
「通して下さい」
「とおちてください」
『ならたった一つの物を差し出せ』
その言葉の後、ふわりと何処からか小さな風が吹き、かと思うと三人の目の前には薄紫色の長い髪と赤色の瞳を持つ子供の姿がありました。その子供はにやりと口元を歪め三人、主にアシュリーンにその赤い瞳を向け手を伸ばします。
『アシュリーン、お前のたったひとつの物を差し出せ。そうすれば母に会えるぞ』
「…………」
「アシュリーンお兄ちゃん」
アシュリーンはふるふると首を横に振ります。
「アシュにいちゃ?」
「森の番人さま、冬は好きですか?」
突然のアシュリーンのその問いに森の番人はきょとんとその赤い瞳を丸くします。そんな森の番人にアシュリーンはなおも問い続けます。
「森の番人さま、冬は好きですか?」
『……その質問に何の意味がある』
「ないです」
ないと答えたアシュリーンですが、それでもなおアシュリーンは冬は好きかと森の番人に問い続けます。そんなアシュリーンを森の番人はじっと見て、何かを察したのかやがてにやりと楽しそうに口角を釣り上げアシュリーンの頬を撫で上げます。
『アシュリーン。わたしを誑かすか』
「おれは冬が好きかと聞いているだけです。森の番人さま、冬は好きですか?」
『ふふ、好きだよ。お前の母が冬が嫌いなのと同じぐらいにはな』
その言葉の後、森の番人は頬笑みだけを残し森に溶けるように姿を消しました。そうして三人の前には小さな小さな泉と、そこに立つ母リシャの姿。
「お母さまっ!」
「しゃまっ!」
「スエラ、ミエラ!アシュリーン、どうしてここに」
三人の子供たちの姿にリシャは目を見開き驚き、走り抱きついて来たスエラとミエラを抱きとめます。
「母さん」
「アシュリーン……、どうやってここへ」
「きょうこうとっぱ」
にっと笑い言うアシュリーンにリシャは目をぱちくりさせ、アシュリーンが持つ剣にちらと視線を向けた後呆れたかの様に息を吐き頭に手をやりました。
「アシュリーン……」
「コレは使ってないぜ?森の番人さまが聡い方で助かった」
「アシュリーン」
「母さんが悪いんだぜ?」
語調を強め自身の名前を呼ぶリシャにアシュリーンは言います。
「さっさと帰って来ないから。で、伯父さんは?」
「……ここよ」
リシャは泉のすぐ傍、そこに佇む石像に近付きそっと触れました。その石像はアシュリーンぐらいの背丈ほどの石像で人の形をしています。
「エシュリー兄さん。貴方達の伯父さんよ」
「おじさん、石になっちゃったの?……あったかいね、この石」
スエラが石像に触れ、その温もりに驚きの声を上げます。それにミエラも同じようにして石像に触れ声を上げます。
「あたかいのー」
「あったか石?おじさんがあったか石なの?」
「そうね……きっとそうなんだと思う。エシュリー兄さんが私のために……自分自身を、あったか石に……どうしたら……」
「森の番人さま!!」
「アシュリーン?」
唐突に森の番人の名を呼ぶアシュリーンにリシャは首を傾げます。
「森の番人さまっ!!」
『おまえはまたわたしを誑かす気か、アシュリーン』
ふわりと小さな風と共に薄紫色と赤い瞳の森の番人は姿を現しアシュリーンの頬を、そして剣を撫で上げます。
『それとも今度はその刃でわたしに勝とうと、そういう事か?』
「エシュリー伯父さんは生きている。そういう事ですよね?」
『おまえは問いかけばかりだな。……おまえの言うとおりそういう事だ。エシュリーは生きているよ。リシャ、おまえのためにあったか石として、な』
「……エシュリー兄さん」
リシャは目を伏せ、そんな母にスエラとミエラは寄り添います。アシュリーンは石像、エシュリーに近付きそっと手で触れ口を開きます。生きているエシュリーだからこそ、きっと声は届くと信じて。
「エシュリー伯父さん、冬は好きですか?」
『ふふっ、アシュリーン、おまえはそればかりだな』
茶化す森の番人でしたがアシュリーンは構わず続けます。
「母さんは冬が嫌いです。一番嫌いです。それは伯父さん、あなたの事があるからです。だけど俺は母さんに冬を好きになって貰いたい」
「アシュリーン?」
「だって森の番人さまは冬が好きだから」
『げほっ……!』
咳き込む森の番人にスエラとミエラの二人がその背を優しくなでなでと撫で上げます。
『あ、アシュリーン、まさかここでわたしの名前を出すか……』
「だから冬じゃなきゃ駄目なんです。春でも夏でも秋でもない、冬が。母さんも本当は冬が好きになりたいんだ。ね、母さん」
「えっ、……えぇ、そうね」
リシャは頷き、あったか石となった兄をそっと抱きしめました。
「エシュリー兄さん、一緒に帰ろう?わたしはもう大丈夫。冬将軍が来て冬が来ても、わたしはもう負けないぐらいに強くなれたわ。私のたったひとつのもの、兄さんにもその目で見て触れて、感じて欲しい。だから……」
リシャがぎゅっと力を入れると石像がピシリと音を立ててぼろぼろと崩れ始めました。そうしてそこには微笑むあの頃の姿のままのエシュリーが。
リシャをその優しげな眼差しで見つめる、紛れもないエシュリー本人の姿がありました。
「エシュリー兄さん!」
「リシャ……」
一人成長してエシュリーより大きくなってしまった妹リシャの姿でしたが、構わずエシュリーはリシャを抱きしめ、そうして二人は何年ぶりかの兄妹の再会を果たしたのでした。
『めでたしめでたし、と言いたい所か?アシュリーン』
そんな二人をそっと見つめていたアシュリーンに森の番人は不敵な笑みを浮かべます。
『アシュリーン、おまえはわたしを誑かすだけでは飽き足らずコケにまでしたな』
「森の番人さま、冬は好きですか?」
『二度も通じる手と思うたか。アシュリーン、おまえの手腕もここまで……』
「俺は好きです。森の番人さまが好きな冬が、俺も好きです」
にこりと、アシュリーンは森の番人に頬笑みを浮かべそうしてその赤い瞳を真っ直ぐに見つめてもう一度言いました。
「好きです」
『…………っおまえは、……もういい』
ふいっ、とそっぽを向いた森の番人はアシュリーンのその頬を撫で、そうしてアシュリーンの耳元、囁くように一言だけを残しその場から溶けて消えてしまいました。アシュリーンはその森の番人の一言に驚くも、楽しそうに口元だけで笑いました。
森の外、あったか石の無くなったその町には暫くぶりかに冬がやって来ます。
「しぇりーがいないっ!」
「あれっ、パンとリンゴもない……」
ミエラの友達テデイベアのシェリー、そしてスエラの鞄に入れておいたリンゴやパンが無くなっていたのに気付いたのは森を出てしばらくでした。
「森の番人さまが取って行ったのね、きっと」
「森の番人さま、たったひとつの物を差し出さなかったから怒ってるの?」
「というか、それだって立派な『たった一つのもの』だろ?」
アシュリーンの言葉にスエラとミエラは首を傾げ、リシャとエシュリーはくすりと笑います。
「どういう意味?アシュリーンお兄ちゃん」
「スエラ、ミエラ。冬は好きか?」
「あっー!またそれだ!!分かんない!!何なのっ!」
怒るスエラにアシュリーンは意地悪くにやりと笑います。
「お兄ちゃんだけ分かってて嫌!!ズルイ!!それに、お兄ちゃんは森の番人さまに何も取られてない!!ズルイ!!ズルイ!!」
「じゅるいっ!」
「そういえばそうね。アシュリーン、貴方今度は何したの」
「母さんまで……。俺はずるくなんてねーよ。俺は取られるよりもっとマズイことになってんの。ヤバい事になったんだよ」
「森の番人さまに、たったひとつのものが出来た。だよね?」
エシュリーのその鋭い一言にアシュリーンの顔が引きつります。
『アシュリーン。おまえがわたしのたったひとつの物だ』
「……あー」
「あの森、冬はとっても寒いから気を付けてね」
「え、エシュリー伯父さーん」
訳のわからないスエラとミエラ、何となく状況を理解して痛む頭を支えるリシャ、そして分かっていて楽しそうにほほ笑むエシュリー。皆が帰る頃、町には本格的な冬が訪れ始めました。冬将軍の到来です。
起承転結もへったくれもない。何がしたかったんだ、オレは。短編は物凄く苦手。落ちがないとはこの事か!!
以下、(無断中の無断な)コピペのコピペ(申し訳ないっ☆)
木野様の企画、【冬は好きですか?】に参加させて頂きました。以下その概要
(コピーペーストすみません)
‥………
■「登場人物の誰かが、冬を好き・もしくは嫌いであること」■
もっと縛りをつけるなら、
①「冬は好き(嫌い)ですか?」
②「だから、冬が好き(嫌い)」
③「冬でなければならなかった」
のどれかを台詞、もしくは地の文に入れる