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さがしもの  作者: 八七味
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プロローグ

高校1年の夏から始めたバイトも、これで1年目になる。そして1年で稼いだ全額の60万。これで念願のロードバイクが買える。6月の給料を貰い、その足で50万のロードバイクを買いに行った。「ロードバイクとはなんぞや?」という人は、テレビ中継で

ロードレースでも見てくれ。

元々、親のお下がりのものを乗っていたのだが、それでは満足できず、物足りなさを感じていた。

「もっとスピードをだして風を感じたい」

この欲望のために必死に働いた。そして、念願のロードバイクを手に入れたのだ。

買ってすぐ、走りに行った。今までとは違い、足に羽が生えたかのようにペダルを速くこぐことができた。

無我夢中で走っていると、気がついたら夕日が差していた。

慌てて帰路に着き、家に帰った。

家に着く頃には日が沈んでおり、街灯の光りと月明かりだけが僕を照らしていた。

暗がりのなかで、少し面倒くさくなり、物置の中に入れておくので鍵を締めなかった。

これが、全ての始まりだということを、この時の僕が知るわけもなく、そのまま駆け足で家に入った。


翌日の朝、物置を開けてみたところ、ロードバイクはなくなっていた。

最初は父が弄っているのかと思った。しかし、父は何食わぬ顔で髭を剃っていた。

次に、母のイタズラかと思った。しかし、母はいつも通りの様子で洗濯物を干していた。

この時、ロードバイクが盗難にあったことを理解した。

最近、盗難事件が多発しているから気お付けるようにという話は聞いていたが、まさか自分が標的になるとは思ってもみなかった。

一応、警察に被害届を出したが、戻ってくる保証はない。

僕の足に生えた羽は抜け落ち、代わりに鎖と鉛玉がついた。

この日の学校は休んだ。もう、全てにおいてやる気がでない。1日寝込んだ。

次ぎの日、休日だったので1日バイトの予定だった。だが、今はバイト行く気力がない。休もうと思い、店長にメールを送ったら電話がかかってきた。

「ふざけたこと言ってねぇでこい!」

と、1言で電話は切れた。

仕方なく、布団から這い出てバイト先に向かった。

僕のバイト先はアウトドアショップだ。店長が趣味の延長線で作った店らしいが、品揃えが良く評判がいいためいつも客が絶えない。

店に入ると、今の僕とは正反対の世界が広がっていた。

いつもだと、とても心地のいい場所だが、今は傷口に塩を塗られている気分になる。

活気のある店の奥に店長がいた。目が合うと

「いきなり休むなんていい度胸だなぁ!、さっさと仕事しろ!」

「はい…...すみません......」

「ん、なんだか元気がねぇなぁ、なんかあったのか?」

「実は......」

昨日起きた出来事を店長に話した。

「そいつは災難だったな」

「すみません......」

人に話したことで気持ちが少し軽くなった。

「辛い時は山に行け」

「え?」

「辛い時は山に行け」

「いや、2回言われなくても」

「大切なことだから2回言った」

賑やかな店内に一瞬静寂が現れた。

「とにかくだ。必要な荷物はまとめてやるから夏休みになったら山に行け」

「は、はい......ちなみにどこの山に?」

「そうだなぁ、丹沢山に行け!」

「わ、わかりました......」

気がついたら山に行くことになっていた。


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