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「そろそろ自立しなきゃって、思うんだ」


 ゆうはいつでも唐突だ。一切の素振りも見せずにいきなり自分の決意を語る、そんな所があった。

 今更それに驚きはしないが、さすがに自立という言葉には涙も驚きを隠せなかった。


「自立って、ここを出るって事?」

「うん」


 ゆうの頷きに迷いはなかった。そうと決めたら迷いなく直進する。決意の固さが嫌でも伝わってきた。

 その決意は喜ばしい事でもある。だが、それはあまりにも急な発言だった。


「でも……」


 正直な不安が声となったが、ゆうの態度はぶれなかった。


「もちろん分かってるよ。今すぐには無理な事だし、もうしばらく涙さんには迷惑かけると思う。でもそろそろ考えないとなって」


 その言葉に涙は少しほっとした。今すぐ出ていくなんて言われたらさすがに止めようと思ったが、ゆうはそんな愚かな子ではない。


「分かった。でもゆう君」

「何?」

「迷惑かけるなんて、そんな事気にしなくていいから。遠慮なんてしないで。出来る限りの事はしてあげるつもりだから」

「ありがとう」

 

 ゆうは涙に礼を言い、置いていた本を再び手に取り読み始めた。

 

 ――自立か。


 ゆうがここを出ていく。そんな日がいつか来る。そう思っていたが、いざゆうの口からそれを聞くとさすがに寂しさを感じた。でもそれはとてもいい事なのだ。それだけゆうが人間らしさを取り戻している証なのだ。

ゆうが涙の元で過ごすようになって、約3年が経過していた。

 すっかり背も伸び、顔つきもかなり大人びてきた。

 それでもまだまだ子供で、独り立ちさせるには不十分だと思っていた。だがそれは涙だけの勝手な思いだったのかもしれない。

 そしてこの頃から、ゆうは明確な未来に向けて歩き始めた。


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