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 度重なる悲劇はさすがに精神的にも堪え、いつも通り振舞う元気を出す事がどうしても出来なくなっていた。一体誰がなんて考えてみても自分は君塚のように刑事ではない。犯人なんて分かる訳もなかった。だからせめて、君塚が言っていたような人物がいないかと改めて記憶を巡らせていると、ポケットの中で携帯の振動を感じた。取り出すとディスプレイには【由香】と表示されていた。


「どした?」

「うわっ、暗っ! 先輩、ちゃんとご飯食べてます?」

「お前にそんな心配されるなんて、俺も終わりだな」

「何それひどい! ひどすぎる! 心配して大損した! きーっ!」

「きーってお前……今時ねえよそんなリアクション」

「ない事ない! ここにいる! きーっ!」

「あーもう分かった分かった、悪かったって。で、どうしたんだよ?」

「もういいですよーだ。最近元気なさそうだから、後輩である私がわざわざご飯でもおごってあげようかと思ったのに。残念」

「……」

「ちょ、ちょっと。急に黙らないで下さいよ」

「いや、驚いてな……」

「何がですか?」

「お前にそんな人の良心があったなんて」

「きーっ!」


 そこで電話はぶちりと切れた。思わずふっと笑いがこぼれた。

 もちろん本気で由香は怒っている訳じゃない。いつも通りのやり取りだった。だがそれが健二にとっては嬉しかった。おかげで少しだけ元気が出た。


「ありがとな」

 

 そう呟き、携帯を置いた。


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